ソフトバンクがChatGPT対抗の“和製ChatGPT”開発表明 宮川社長「生成AIに死ぬほどポジティブ」

» 2023年05月10日 18時58分 公開
[石井徹ITmedia]

 ソフトバンクの宮川潤一社長は、5月10日に開催された決算説明会の中で、「生成AI」を開発するための子会社を設立したことを明らかにした。

 生成AIでは、米OpenAIの対話サービス「ChatGPT」が急速に利用を広げている。OpenAIに出資するマイクロソフトが製品群に全面的に採用する方針を示しているほか、Googleも対抗サービスを発表するなど、注目を集めている。

 5月10日に実施された2022年度決算説明会では、宮川社長は画像生成AI「MidJourney」で作成した画像を用いて次期中期経営計画の概要を紹介した。

ソフトバンク ソフトバンクの2022年度通期決算説明会にて、画像生成AI「MidJourney」で作成した画像を用いてプレゼンテーションを行う宮川社長

 質疑応答では、生成AIの活用に宮内社長は「ソフトバンクは実は生成AIに死ぬほどポジティブだ」と回答。生成AIの活用について熱弁した。生成AIに関しては、ソフトバンクグループ幹部が集まる議題の大部分を占めている状況にあるという。

 宮川社長は、ソフトバンク社員宛に生成AIを試してみるよう促したという。孫正義ソフトバンクグループCEOも活用に積極的で、孫氏主導で社内でChatGPT活用コンテストを開催したとしている。

 ソフトバンクグループではこれまで、LINEが自然言語AIの開発を主導してきた。その中でも、コールセンターの音声通話の文字起こしを自動化するサービス「LINE AiCall」では、ChatGPTの共通の基盤技術である「GPT」シリーズの大規模言語モデルを用いている。

 宮川社長は、「和製GPT」を開発する方針を表明。3月には生成AIによる事業活動を推進するための事業会社として、グループ内で子会社も設立したことこと明らかにした。生成AI関連では将来的に、1000〜5000人規模のエンジニアが関わる組織を設立するとしている。宮川氏は日本発の大規模言語モデルの開発について「やらなければ今後の参加権がなくなる」と意欲を示し、「GPT祭り」として取り組んでいく方針を示した。

 質疑応答の内容は以下の通り。

――(記者) ソフトバンクの生成AIの活用の現状について質問したい。また、ソフトバンクグループではLINEが生成AI開発を開発しているが、その期待や狙いについても合わせて説明いただきたい。

宮川社長 ChatGPTについて、当社はけっこうネガティブじゃないかと報道されていたが、実は死ぬほどポジティブです。とうとう来たかという感覚でいます。

 もちろん、法令順守、機密情報の共有はするなということは付け加えていますが、社員全員に「使うように」という一斉メールを送っていますし、孫さんの名前を借りて送ったメールもあります。

 特に「社内でコンテストをこれから毎日やるぞ」といって、ちょうど昨日(5月9日)、ここに孫さんがプレゼンしていたんですね。ChatGPTの活用法を、いろんなパターンを、うちのエンジニアを全員集めてやっていたんです。

 ChatGPTをどう使うかというのも、これだけ深層学習が進んでくると、人間が想像しなかった答えも出し始めるだろうと感じてはいますけれども、スタートラインに立たない選択肢はわれわれにはないということで、確実にやっていきたいと思っています。

 少し踏み込んで、生成AIへのスタンスについてお話しします。もともとLINE AIでは、GPT3〜GPT3.5をベースとした「LINE AIコール」というコールセンターを自動化するソリューションを開発しております。社内のコールセンターでも使っておりますし、社外のお客さまとの実証実験も2022年から行っております。

 今、LINEとソフトバンクの連合体で、どんな人間が何をやるとOpen AIに追い付けるのだろうかと、ガリガリやっております。恐らくGPTの基礎ベースを持っている会社というと日本では我が社しかいないと思いますから、これはやらざるを得ない環境にあると思います。勝てる勝てないという問題ではなく、やらなければ今後の参加権がなくなると感じていますから、ある程度踏み込んだ投資をし、活動もしております。

 1日の会議の半分くらいはGPT周りの議題となっておりまして、我が社においてもGPT祭りが始まっている状況です。

 今後、LINEの中のAIコールのテクノロジーベースで和製のGPTを立ち上げるべきではないかということで組織を発足して、今始まったところでございます。精いっぱい頑張っていきたいなというところでございます。

ソフトバンク 宮川社長

―― いつ頃組織を立ち上げて、どのくらい投資をしているのか。

宮川社長 次期は3月頃ですすね。実はもう会社も立ち上げてはいます。ジョイントベンチャーという形でグループ内で活用できる会社を立ち上げて、それを本来は使うつもりですが、この1カ月間でもまたさらに状況が代わってきていますので、どう仕上げていくかという会議を経営陣集まって、かんかんがくがくとやっている状況でございます。

 それから人員としては、具体的にはグループの中でAIを触れる人材を1000人ピックアップしておりまして、新会社への異動がいいのか、兼務がいいのかを人事が検討しているところです。

 少なくとも1000〜5000人くらいの規模感でGPT祭りをやらなければ、日本の中でのGPTの立ち上がりはないと感じていますから、それくらいの本気度を持って、グループ全体で鋭意立ち上げていきたいなと思っております。

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