Appleは、5月15日にフルモデルチェンジを果たした「iPad Pro(M4)」と、画面サイズを2つから選べるようになった「iPad Air(M2)」を発売した。第3世代でプロセッサが初めてMシリーズになったiPad Proを利用していた筆者は、iPad Airと悩みつつも11型iPad Pro(M4)を購入した。有機ELを2枚重ねた「タンデムOLED」で大幅にコントラスト比が上がり、映像が美しくなった他、薄型・軽量化されている点やApple Pencil Proへの対応が魅力だったからだ。
実際、購入から約2週間たっているが、動作の軽快さはもちろん、ディスプレイの美しさや軽さには満足している。「Magic Keyboard」が刷新されたことで、若干ながら入力のしやすさも向上した印象だ。一方で、13型のiPad Pro(M4)と比べると、そのインパクトはやや薄れてしまうようにも見えた。既に13型のiPad Pro(M4)と11型のiPad Air(M2)のレビューは掲載されているため、ここではそれらとの比較を交えつつ、11型iPad Pro(M4)の実力を解説していきたい。
ディスプレイをバックライト不要の有機ELにしたことで、薄型化・軽量化されている点は11型iPad Proも同じだ。前世代にあたるiPad Pro(第4世代)との比較だと、厚さが0.6mm、重さがWi-Fi+Cellularモデルで22g削減されている。より持ち運びやすくなっているのは、サイズを問わず、iPad Pro(M4)のメリットといっていいだろう。
一方で、13型iPad Pro(M4)との比較だと、先代からの薄型・軽量化の効果がやや限定的で、手に取ったときの第一印象としては、やや違いが分かりづらいのも事実だ。重量はiPad Pro(第4世代)から5%弱軽くなっていることもあり、さすがに持ち比べると分かる一方で、厚みの違いは少々認識しづらい。13型iPad Pro(M4)のような、「薄っ!」という驚きには欠けている印象だ。
これには理由もある。もともと、12.9型のiPad Proは、第5世代からディスプレイに「ミニLED」を採用していた。ミニLEDは画質の大幅な向上が図れる一方で、厚さや重さが増しやすい。第6世代の12.9型iPad Proは、厚さが6.4mm、重量もWi-Fi+Cellularモデルで684gもあった。有機ELを採用した結果として、この部分を大きく削減できたというわけだ。
対する11型iPad Proは、もともとISPディスプレイを採用しており、12.9型版ほどの厚さや重さはなかった。これだとディスプレイを有機EL化したメリットが限定的になってくる。もちろん、映像の表現力という部分では大幅に性能が向上しているが、厚さや重さで前モデルから大きく進化させるのは難しかったといえる。その意味では、手に取ったときの驚きは小さい。
また、ディスプレイが13型版と比べて小さいため、当然ながら映像の美しさを体感しづらくなる。確かに見比べると黒がしっかり締まった映像は見応えがあるものの、少し離れてしまうと画面が小さいため、ISPディスプレイだった前世代までのモデルでも十分なクオリティーだと思えてくる。新しく採用された技術の恩恵を最大限受けたいのであれば、11型より13型を選ぶべきだと感じた。
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