AQUOS R9ではデザインも大きく変わった。特に変化したのはカメラの台座だ。カメラを過度に目立たせるのではなく、円形の台座の中に自然とたたずんでいるように感じる。ネットではカメラレンズが「コダマのようだ」という意見も目にする。カメラの台座は、従来は黒系統の異なるカラーにしていたが、AQUOS R9では本体と同色にそろえているのも特徴だ。
ただ、小林氏は「最初に提案を受けたときに、めちゃくちゃ違和感がありました」と率直に話す。「しっくり来ていなかったのですが、2カ月くらい持って、めっちゃいいなと。第一印象と、日々使ったときの印象がだいぶ違う」と話す。「賛否両論があるとは認識していた」が、「海外のお客さんは、めちゃくちゃいいと絶賛した」そうだ。
これまでのAQUOS Rシリーズはガジェット然としたデザインが多かったが、AQUOS R9では「生活用品に違いイメージ」(清水氏)を意識したという。
miyake designを起用した経緯について、「いろいろなデザインを検討するうちの1人でした」と中江氏は振り返る。
「デザイナーさんにひも付くデザインのやり方やコンセプトを通す人もいらっしゃいますが、三宅さんは、グローバルに通用する日本のデザインは何かを考えたときに、共感できるものを提案いただけました。私たちは具体的な絵は描けないですが、言葉では『こういう感じ』と説明していました。その有象無象の言葉の中から、『こういうことですよね?』と解釈いただけたのがよかったのです」
あくまで筆者の主観だが、AQUOS R9のデザインは、senseやwishであれば違和感ないものの、ハイエンドのAQUOS R9だとミスマッチしているように感じた。ただ、そこには先入観があるのも確かだ。
「僕たちは、senseシリーズはこう、Rシリーズはこうという、AQUOSの中で分ける考え方が強かったのですが、グローバルにも展開していくことを考えると、『AQUOSって何?』ということが強く求められてきています。(シャープの)中でも差別化、というのは脇に置いて、AQUOSはこうです、ということを伝えていかないと、AQUOS自体の存在感がなくなってしまいます」(清水氏)
なお、AQUOS R9では従来搭載していたイヤフォンジャックが見送られた。「賛否両論あった」(小林氏)が、イヤフォンジャックを入れることで本体の厚さが増し、バッテリー容量が減ってしまうことから、外す決断を下した。
AQUOS R9をグローバルモデルとして展開するにあたり、世界で受け入れられるデザインを模索した。AQUOSは以前から台湾やインドネシアなどでも販売していたが、AQUOS R9からグローバル展開を本格化する。
AQUOSを海外展開するにあたり、AQUOSのよさを再認識することが多いという。
例えば防水性能をチェックする際、シャープは1機種ずつ確認しているが、これを聞いた海外のキャリア関係者が驚いたという。海外では通常、ランダムで抜き取った個体だけ防水性能をチェックしているためだ。「そういう信頼性は、海外のキャリアさんから見るとビックリされます。僕らもランダムで抜いてチェックすればいいかもしれませんが、そこは譲れない線があります。日本の物作りを支持される人がいらっしゃるのです」(小林氏)
「映像体験のAQUOS、防水や耐衝撃性などは、僕ら独自のよさであると気付いて、それを、日本のお客さまにも届けていくというブランド定義のきっかけになりました。日本が厳しいから外に出て行くのではなくて、日本でももっといい体験を届けるために、外で磨かれていく活動だと認識しています」(清水氏)
AQUOS R9は台湾、インドネシア、シンガポールで展開する予定だが、その他の国については検討しているのだろうか。小林氏は「米国や欧州も否定はしませんが、より5Gが広がっていく国はチャンスだと捉えています」と答える。ただし米国については「巨大な日本のような市場。キャリアの要求が非常に高い」ことから、簡単にはいかないようだ。ちなみに米国では、ソフトバンクとSprintの共同開発だった「AQUOS CRYSTAL」をSprintに提供していたことはある。
先代のAQUOS R8シリーズは、「AQUOS R8s/R8s Pro」という製品名で台湾とインドネシアで展開していた。商品名に「s」が付くのは、ライカ監修のカメラを搭載していないことが関係しているようだ。「AQUOS R9も(海外では)一部でsが付くかもしれません」と小林氏。ちなみに海外ではこれまで、「AQUOS sense8」が最も売れているそうだ。
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