PixelやGalaxyをはじめ、2023年〜2024年にかけて、生成AIを活用した機能をスマートフォンに搭載するケースが増えている。シャープも生成AIの活用には注力しており、AQUOS R9に、生成AIが留守番電話の内容を書き起こして要約する機能を採用した。
そもそも昨今、スマートフォンで電話を利用する人は多いのか、という疑問はあるが、「調査をしたら、電話をする人が意外と多い」と小林氏。「通話無料のオプションをキャリアさんが準備しています。また、LINE通話だと相手のデータも消費するので、LINE通話をやめてほしいと思う人もいます。そうした状況を踏まえて決めました」(同氏)
LINE通話は友人や知人同士で利用するものだが、知らない人から掛かってくるのは音声通話だ。「『これ、何の番号?』ということで怖くて出られないこともあります。その心理的負担をなくす狙いもあります」(清水氏)
一方、留守番電話の要約機能は、現時点ではAQUOS R9のみで利用でき、同時に発表された「AQUOS wish4」では利用できない。これは「NPUの性能に依存する」ことから、ミッドレンジの端末では難しいようだ。ただ、ミッドレンジ機にも生成AIを使った機能を搭載するかどうかは「まさに社内でも議論が出ている」と小林氏。「クラウドのAIを使ってやっていくような要素かもしれません。ハイエンドスマホだからこそ通話を使うとは限りませんから」
生成AIを使った代表的な機能として、写真編集での画像生成もある。この点は、「Googleの機能が無償で使える」(小林氏)ことから、積極的に搭載していくことは考えていないようだ。「Googleと競うようなことをしても仕方がないですよね。ハードウェアと密着した部分で頑張れる部分もあります」(小林氏)
AQUOS R9ではOSバージョンアップは最大3回、セキュリティアップデートは最大5年にわたって提供される。他方、GoogleのPixelではOSバージョンアップもセキュリティアップデートも最大7年と長い。この点について小林氏は「今やっていることが答え」と話す。「そこの数字を競っても仕方がなく、カメラの画素数などのスペックの話とは違います」
EUでは2025年6月以降、スマートフォンの保守パーツは7年間、ソフトウェアアップデートは販売終了から最低5年間提供するよう定められている。こうした背景もあり、サポート期間を延ばさないといけない環境にグローバルメーカーが置かれていることは小林氏も理解を示す。ただ、「修理できることとOSサポートをすることは違う」と同氏。ハードウェアとして使用できても、OSバージョンアップが打ち切られてしまっては意味がない。ハードとソフトの足並みをそろえることが必要といえる。
今期、「AQUOS R9 Pro」を投入しないことに対して、落胆したユーザーもいただろうが、ハイエンドスマートフォンを、より多くのユーザーに届けたいという強い意思があることが分かった。10万円前後という価格も絶妙だ。2023年〜2024年にかけて、ミッドレンジスマホが細分化され、5万円〜7万円台のミッドハイモデルが増えているが、その次のハイエンドが12万〜15万円。AQUOS R9は、ミッドハイとハイエンドの隙間を埋める唯一無二の存在ともいえる。
ちなみに、「今期、Proは出ない」の「今期」が2024年度のことを指すのか、はたまた2024年度上半期を指すのかなど、具体的なスパンは教えてもらえなかった。時間差で2024年の秋〜冬にAQUOS R9 Proがサプライズで登場する可能性もゼロではないか。ともあれ、“絶妙なハイエンドスマホ”であるAQUOS R9が、どこまで市場に受け入れられるのか、注目したい。
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