古いiPhoneで撮影した写真が“エモい”と評価されるワケ 「iPhone 3GS」で試してみた(2/2 ページ)

» 2024年07月14日 10時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]
前のページへ 1|2       

古い機種なら「エモく」撮れるのか。iPhone 3GSで試す

 さて、仮にもスマートフォンで「エモい」写真を撮れるといったらどのような機種だろうか。ここでいうノスタルジーといった懐かしさを感じるには古いスマートフォンが選択肢に浮かぶ。

 物理的な古さを感じるなら、それこそiPhone 3GS世代だろうか。今のスマホには当たり前に備わる機能がない機種であれば、現代では撮影が難しい「性能不足による表現」ができる。トイカメラ的なエモさを出せるはずだ。

 iPhone 3GSは2009年に発売された。300万画素のカメラに初のオートフォーカスを備えるなど、同社のスマートフォンとしてはカメラ周りは大きな進化を遂げた機種として注目された。筆者も小学生の頃に触れた最初のiPhoneなので、思い入れのある機種だ。

 余談ながら、2024年に中学生へ進学した子にこのスマホを見せたら「まだ生まれてない」「SNSで見た平成レトロっぽい」と言われたときは思わず変な声が出てしまった。

iPhone写真 2009年に発売されたiPhone 3GS。実に15年前の機種だ
iPhone写真
iPhone写真
iPhone写真
iPhone写真

 何枚か撮ってみる。昼間の作例はそれなりに映るが、全体的に暗い印象を受ける。あの時はこんな感じだったとノスタルジーに浸れるが、今となってはきれいにはみえない。

iPhone写真
iPhone写真
iPhone写真

 夜間はさすがに厳しい印象だ。HDR撮影もできない世代のため、ノイズも多く手振れもしやすい。

 何枚か撮影したが、やはり時代相応の写りだと感じた。懐かしいという感覚にはなるが、筆者的にはエモーショナルな要素はあまり感じない。ただ、このような技術的な未熟さゆえの写りの悪さをノスタルジックと評するのであれば、トイカメラなどと同じ領域と考えたい。懐かしさを「エモい」と評価するのであれば、スマホでも十分に撮影はできそうだ。

高騰する「中古レトロカメラ」手に届きやすいところに「古いiPhone」

 中古のコンデジとはいえ、10年落ちでも2万円前後となれば安価ではない。また、データの取り込みに別途カードリーダーが必要になるなどの手間やコストもかかる。Wi-Fi機能を備えるSDカードを用いればカードリーダー等は必要なくなるが、古い機種では相性の問題などもある。

 チェキといったインスタントカメラにはプリント用紙、フィルムカメラはフィルムのほかに現像が必要になるなど、趣味を楽しむとしても意外とお金がかかるのだ。

 そこで注目されたのが「古いiPhone」だ。10年ほど前のiPhone 4や5世代は昔使っていたり、保護者のおさがりで手元にあったりする例もある。加えて、iPhone 5Sでも中古相場は5000円前後とお求めやすく、球数が多いことから入手性も高い。高騰するレトロカメラの代わりに選択されるのだ。

 ギリギリZ世代の筆者が高校生の頃に使っていたiPhoneが5や5Sだったことを考えれば、「昔使っていた」や「保護者や兄弟のおさがりで持っている」という意見が出る点も納得だ。

iPhone写真 iPhone 5Sは中古価格もかなり安価だ

 これに加えて旧式のiPhoneもiOS11以降では、操作性も現行のiPhoneと大きく変わらない。iOS12が利用できるiPhone 5S世代であれば各種SNSアプリも旧バージョンで動作するなど、スマホとしての使いやすさを有している。

 古いiPhoneはデジカメに比べてコスト面の優位性のみならず「操作方法を別途覚える必要がない」「作例をSNSで共有しやすい」という強みが生まれる。このような意味で古いiPhoneに注目がいく点は納得だ。

 確かに2015年以前の機種であれば、AIカメラや複数カメラを用いた要素も下火の時代だ。今回筆者が試したiPhone 3GSとまではいかなくても、昨今のAIカメラ搭載スマホでは撮れない自然である意味「エモい写真」を簡単に残せるのだ。

 現行のAI補正が大きく入るスマートフォンとは異なる写りの機種は使ってきた世代にはどこか懐かしく、より若い世代には新鮮に映る要素を備えている。古いiPhoneで撮影した写真は新鮮な意味で「エモい」と評価されることも納得できた。

 思い返せばスマートフォンのカメラも年を追うごとに幾多の進化を遂げ、写メールが利用できるカメラ付き携帯電話から数えれば四半世紀近い歴史を重ねてきた。筆者よりも下の世代は写メールのサービスが開始されて以降に生まれた人が大半だ。

 若い世代に「子供のころに触れたカメラは?」と聞けば、任天堂のゲーム機「ニンテンドーDSi」や「ニンテンドー3DS」と答える方が少なくない。これらの機種を与えたという保護者の方もいることだろう。この世代では最初に触れたカメラがデジカメではなく、携帯電話やゲーム機といったデバイスだった方も多いのだ。

iPhone写真 2008年に発売されたニンテンドーDSi。カメラを搭載した携帯型ゲーム機で、小中学生を中心に人気を集めた。筆者を含めた当時の学生はカメラ代わりにも重宝していた

 読者の中には今は使っていない古いスマートフォンが机の引き出しに眠っている方もいることだろう。機会があれば起動してみて、若い世代が「エモい」と感じる「あの時の思い出」に浸ってみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー