―― MVNEとしてミークが支援したことも発表されています。やはり“ソニーつながり”もあったのでしょうか。
近藤氏 弊社の代表が元ソニーということもあり、そのつながりでつないでもらって、お話を聞かせていただきました。
梅川氏 他にもいくつか検討したうえで、最終的にミークに決めています。
―― 先ほど送金したいお昼休みに遅すぎて使えないというお話もありましたが、ミークをMVNEにすることでそういった部分は解決されているのでしょうか。
近藤氏 私どものサービスでも速度低下などは起こっているのが正直なところです。ただ、何時ぐらいに遅くなるというようなことはあらかじめお知らせして、困りごとがあった際には強みでもあるカスタマーサポートが即時お答えするようにしています。
梅川氏 MVNEを何社か検討する中で、ミークは通信品質にも定評がありました。料金や条件面などももろもろ加味した上で、一緒にしっかり展開できるということでミークを選ばせていただいています。
―― ターゲットが一般のMVNOと違うこともあって、料金プランが独特です。特に2枚のSIMカード(もしくは音声のみeSIM)がセットになるComboプランは特徴的です。なぜこのような料金プランになったのでしょうか。
近藤氏 料金プランは、音声プランが3GB、10GB、30GBで、データ通信のみのプランが50GB、100GBです。2つをセットで契約するComboプランも用意しています。弊社のお客さまには日本の来られて大変な思いをしながら、母国に送金されている方が多い。日本で稼げる金額もそこまで大きくない中で、その一部を送金に充てています。ですから、価格はなるべく抑えたかった。そこで、音声プランとデータプランの50GB、100GBをセットにしたものを提供し、この価格を実現しています。
用途としては、2枚のSIMカードを別々のデバイスに入れるというのが1つです。例えばiOSの端末とモバイルWi-Fiルーターという形です。サービスの設計上、iOSだと2つのSIMを1つのデバイスに入れるのが難しいのですが、Androidだと1台に2つのSIMを入れ、音声通話を使いながら大容量の“ギガ”を安くできます。
梅川氏 背景として、自宅の環境があります。日本人だと自宅にWi-Fi環境がある方がほとんどだと思いますが、外国人の場合、そこにも契約の課題があります。そのため、自宅にWi-Fi環境がない方が一定数いらっしゃる。そういう方は、主にモバイルWi-Fiルーターを持っています。また、ルームシェアをしている方は、1台のWi-Fiルーターを共有して使っていることもあります。そういった方々には大容量のニーズがあります。50GB、100GBのSIMを用意したのはそのためです。
―― なるほど。ユーザー層に合わせてのラインアップだったんですね。ちなみに、音声プランとデータプランは回線が別々なのでしょうか。
近藤氏 はい。音声はミークで、ドコモ回線を卸してもらっていますが、データ通信はソフトバンク回線です。Comboプランの場合、お客さまはその2回線を同時に契約する形になります。
梅川氏 ソフトバンク回線側は大容量で安いのですが、時間帯によって帯域制限がかかる仕様です。若干の制約つきではありますが、その分、かなり安く用意することができました。
―― 「音声はミーク」とおっしゃっていましたが、逆にいえば、データプラン側のソフトバンク回線はミーク経由ではないということでしょうか。
梅川氏 はい。ミーク、ソフトバンクとは別々に契約をしています。
―― なんと。つまり、御社がMVNOとして2つの回線を束ねて1つの料金プランとして提供しているということですね。
梅川氏 そうなります。1つのプランとして販売しているので、実は内部的には結構複雑なことをしています。社内で最初にやろうと言われたときには「マジかよ……」と思いましたが(笑)、何とかサービスにこぎつけました。確かに弊社側のオペレーションや管理はかなり大変になるのですが、その分、お客さまには大容量を低価格で提供できます。昼と夜間には6Mbpsという制限がかかり、4K動画を見るような用途には使えませんが、普通の利用方法であれば問題なく使えると思います。
―― 利用者が多いのもやはりComboプランでしょうか。
近藤氏 そちらがかなり多いですね。また、データ通信のみでもお安くしている、かつ需要も高いのでその割合も高いです。逆に音声プランのみは、高年齢層でそこまでギガが必要ないという人に3GBが選ばれています。
梅川氏 最初はもっとプランを絞って展開することを考えていたのですが、結局オプションを含めて日本人向けのMVNOと比べてもそん色ない形になりました。年配で電話を使うことが多い方は、安いプランにかけ放題を付けるケースもあります。
―― 外国人の困りごとのお話で、クレジットカードがないから端末も割賦で買えないという事例を挙げられていましたが、今後、Smiles Connectとして端末を販売していくご予定はありますか。
梅川氏 検討はしています。スマホまで扱うとなるとなかなか難しいかもしれませんが、先ほど話に挙がったWi-Fiルーターもニーズは高い。そういった端末を売ってないのかという声もいただいています。在庫の問題もあるので、実際にやるかどうかは検討が必要ですが、将来的には扱いたいと思っています。
―― まだサービスを開始して2カ月たっていない中で恐縮ですが、契約者数の目標はありますか。
近藤氏 将来的には、100万回線までいきたいと考えています。
梅川氏 目標は高くです。そこまでいくと、MVNOのトップ3に入ってしまいますが(笑)。ただ、外国人の方が困っていることが多いので、ニーズはあります。現状でも日本に300万人の外国人が住んでいるといわれていますし、労働力が足りない中、政策として割合や人数が増えていく方向でもあります。そういった方々に向けたサービスとして、一定のシェアを獲得したいと思っています。
大手キャリアの手掛けるサービスを見ても分かるように、金融と通信は相性がいい。特にSmiles Connectの場合、ターゲットは銀行口座やクレジットカードの契約がしづらい外国人のため、その相乗効果は一般的なキャリアよりも高いといえそうだ。自社の強みを生かしつつ、大手キャリアが攻め込めていない領域を狙うという意味では、MVNOのお手本のようなサービスだと感じた。
ターゲット層が明確なこともあり、料金プランも非常に面白い。小容量の音声プランと大容量のデータプランを別個に調達し、1つにまとめて提供しているのは自社で直接大手キャリアと接続していないMVNOならでは。2カ所から調達したSIMを1つにまとめて提供するのは苦労も多そうだが、その成果として独自性も出せている。日本人向けのサービスと比べ、市場規模は限られているものの、そこに深く刺さればシェアを伸ばすことができそうだ。
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