“完全0円”の格安SIM「みんギガ」が生まれたワケ 若年層のギガ難民を救えるかMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2024年07月02日 16時32分 公開
[石野純也ITmedia]

 「0円」を打ち出す通信サービスは注目を集めやすい反面、採算が取りづらく、継続性には難点もあった。1年強で1GB以下0円を終了させた楽天モバイルは、その代表例といえるかもしれない。過去にはNUROモバイルの「0 SIM」もあった。現状でサービスを継続しているのは、povo2.0ぐらいといっていいだろう。そんなpovo2.0も、6月末でau PAY方式のギガ活を終了する。

 このような状況の中、ユーザー対象をZ世代に絞って基本料0円を打ち出す新たなサービスが登場した。BAKERUが提供する「みんギガ」がそれだ。同社は、イベント企画や空間プロデュース、編集などを手がけるベンチャー企業で、通信サービスを提供してきた実績はない。そんなBAKERUがみんギガを提供できたのは、オプテージの運営するmineoの新規事業創出プログラム「DENPAto」を活用したからだ。みんギガは、DENPAtoから生まれた第一号のサービスになる。

みんギガ 月額0円でアンケートに答えると500MBのデータ容量が付与される「みんギガ」

 mineoはMVNEという位置付けでB2B2Cのサービスを展開する。一方のBAKERUは、ユーザーアンケートをリサーチに生かし、アンケートを依頼する企業から収益を得る仕組みだ。みんギガは、7月1日にβ版としてサービスを開始した。正式サービス化も視野に入れている。では、BAKERUはどのような目的でみんギガを始めたのか。mineoが同社を支援する狙いも聞いた。インタビューには、BAKERUの執行役員 正嵜亨氏と、オプテージで法人事業を担当するモバイル事業戦略部マネージャーの山下慶太氏が答えた。

若い人に“ギガ”を提供することは、お金を渡すことよりも価値がある

―― 最初に、みんギガのサービスを始めようと思った経緯を教えてください。

正嵜氏 オプテージさんのやっているDENPAto(でんぱと※モバイル通信を活用した新規事業創出プログラム)の中で、新しい通信サービスを作れないかとお声がけをいただきました。われわれとしても新しいものが作れるのではないかと思ったのが、最初のきっかけです。mineoの中で面白いと思ったのが、マイネ王でお客さま同士がコミュニケーションを取っていたり、知らない人にも「パケットギフト」という形でデータ容量を渡せたりするような“つながり”ができているところです。この部分は通信サービスとして特異なところで、面白いと感じました。そういったものを転換すれば、何かサービスが作れるのではないかと考えました。

 その中で誰をターゲットにすればいいのかを考え、話題性も含めてZ世代に区切ることにしました。弊社は店舗業もやっていて、アルバイトには若い子もたくさんいます。その子たちから話を聞くと、やはり月末になるとデータ通信が使えなくなっている。インスタライブがあるから、どこか(Wi-Fiのあるところ)に入らなければという話や、「BeReal」(若者の人気が上昇している、盛らないSNS)の通知が来たけど写真が上げられないといった話を耳にしました。推し活にもデータ通信は必要です。

 そういった人たちに対し、“ギガ”を提供していくことは、お金を渡すことよりも価値があるのではないか。それを踏まえて、Z世代に向けに何かを作っていこうと決めました。ビジネスモデルをどうするのかはありますが、無料にできるのが一番いい。そのため、当初は広告モデルを考えていました。一方で、最近はポイ活のような流行もあり、リサーチ業界からは「Z世代の声を取るのが難しい」という話を聞いていました。そこを合わせたものができれば、サービスとして成立するのではないかという思いでみんギガを開発しました。

みんギガ BAKERU 執行役員の正嵜(しょうざき)亨氏

―― 発表した後の引き合いはありますか。

正嵜氏 今、まさに動いているところです。一般の方向けにはまだまだ発信できていませんが、対象になるコミュニティーごとにアタックをかけていたり、Z世代の会員を抱えている団体にお話をしたりはしています。そういったところからは比較的反響があり、一定の需要はあるのではということも見えてきました。

―― 企業側は、どういったところが利用するとお考えでしょうか。

正嵜氏 どの会社がというのは分かりませんが、アンケートの目的は大きく2つあります。1つは、マーケット調査的な形で意見を取り、サービスに生かすもの。もう1つはプロモーションとしてアンケートを取るというもので、どちらかといえばPR的な使い方でこちらが中心になると思っています。

 というのも、MVNOを使う方のリテラシーは一般的かというと、そうではないからです。もちろんそういう方々をターゲットにしたものを開発するときにはマーケット調査として使えますが、一般消費財を作る時の「n」(サンプル)として偏ったものになってしまいます。それを踏まえると、基本的には情報発信向けに使っていくようになると思います。

みんギガ ユーザーがアンケートに答えるとデータ容量が提供される。アンケート提供元が利用料を支払うことで、ユーザーは無料でデータ容量を手に入れられる

―― BAKERUさんは、今まで通信サービスを手掛けたことはなかったと思います。なぜこの分野に参入しようと思ったのでしょうか。

正嵜氏 われわれは、自分たちのことを「社会実験推進ベンチャー」と呼んでいます。社内には大きな領域として、コンセプトの店舗を作る部署と、編集プロダクション的な部署があり、前者の店舗を作る部署が今世の中にないサービスを開発しています。ただし、もともと店舗という場所よりも、コミュニティーをどう作っていくかに主眼を置いていました。コミュニティーを作る中で、通信サービスを提供するのは会社としても面白い事業になるのではないか。そう考え、初めて通信事業をやることになりました。

―― mineoさんにも伺いたいのですが、DENPAtoは法人向けのプログラムで、発表されたときにはIoT関連が多いのかと思っていました。一方で、第1弾はいわゆるB2B2Cの形でコンシューマーに提供されます。このような形は、事前に想定していたのでしょうか。

山下氏 ドンズバでこれと想定していたわけではありませんが、ビジネスモデルやエコシステムを転換できるようなものが出てきたらいいなと思い、このプログラムをやっていました。普通に法人に対して回線を売るだけでなく、法人のお客さまがマネタイズをすることでコンシューマーがメリットを享受できるようなものが何か出てくるのではないか。みんギガは、ちょうどそれに当てはまる面白い仕組みになっていると思います。

みんギガ オプテージ モバイル事業戦略部マネージャーの山下慶太氏
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