“完全0円”の格安SIM「みんギガ」が生まれたワケ 若年層のギガ難民を救えるかMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2024年07月02日 16時32分 公開
[石野純也ITmedia]
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β版は3カ月ほど運用する予定 課題を洗い出してから本サービスへ

―― BAKERUさんはアンケートを11万円で提供する予定ですが、調査費用としてはちょっと安くないでしょうか。

正嵜氏 リサーチに関しては、クライアントに調査票を作っていただき、それを流すだけにしています。こちらの手間をなるべくなくして、安いサービスにしていきたい。ユーザーさんが多くなるとアンケート数も増やさなければいけないので、なるべく多く、安く回していきたいと考えています。

 ちなみに、いわゆる大手の調査会社の場合だと、ちゃんと営業がついて調査票を作ってとやっていくので数十万円の金額がかかりますが、セルフ型だと11万円は相場に近いと思います。一方で、そういった調査はコミュニケーションがメールになることが一般的で、Z世代だと受け取らないという方も多い。われわれはLINEを使って連絡するようにしているので、そこは他の調査会社と比べたときの優位性になりうると考えています。

―― β版の後に取れて正式サービスに移行すると思います。βはどの程度続けていくのでしょうか。

正嵜氏 いったん3カ月程度グルっと回してみて、オペレーションをどうしたらいいかなどを洗い出してから本サービスを構築していきます。

―― その段階で、アンケートの対価を300MBにするといったスペック変更もあるのでしょうか。

正嵜氏 可能性としてはあると思っています。件数との兼ね合いで、調整していくことになります。

―― すごく細かなところですが、マイページのようなものも用意されているのでしょうか。

正嵜氏 それがまだありません。速度が遅くなったら気付くという(笑)。問い合わせをいただければお答えしますが、本サービスまでに作らなければいけないとは考えています。

―― 容量切れのSMSも飛んでこないのでしょうか。

山下氏 もともと、SMSがないデータSIMなので。

―― あ、そうでした(笑)。容量を使い切ったら、速度は128kbpsになるのでしょうか。

山下氏 256kbpsで、ここは法人向けのサービスに準拠しています。もちろん、絞ることはできましたが、128kbpsだと使えないサービスも増えてしまうので……。

DENPAtoは実験の場 “アイドルSIM”の構想も?

―― 最後にDENPAtoについて、もう少し伺いたいのですが、みんギガの他はやはりIoT的なサービスが多いのでしょうか。

山下氏 というわけでもなく、DENPAtoは実験の場だと思っています。確かにイメージとしてはIoTデバイスにSIMを挿して使うのは法人ビジネスとして分かりやすいですが、エコシステムやビジネスモデル型のものはワクワクして面白いものが多い。スキーム自体の横展開も考えられます。みんギガを皮切りに、いろいろなものが出てくればいいなと思っています。

みんギガ オプテージはDENPAtoを通じて、パートナー企業とさまざまな通信サービスを実験的に開発している

―― 他にどんなものを検討しているのでしょうか。

山下氏 分かりやすいIoT型のものでいうと、通信できるランタンがあります。想定しているのは災害時で、1キャリアだと使えなくなってしまうことがあるので、3キャリアのSIMを挿しておくことができ、Wi-Fiルーターになるというものです。これはコンシューマーに販売していくというより、自治体向けですが、デバイスのモックもできているのでニーズを調べていくところです。

 まだ実現していないサービスですが、「アイドルSIM」というようなものもあります。こちらはまだアイデア段階ですが、ビジネスモデルはみんギガと一緒です。アイドルは、地下アイドルまで含めると1万人ぐらいいるといわれていますが、その方たちが所属するプロダクションがアイドルにSIMを渡すことを想定しています。アイドルの行動はアパレルなどのグッズ開発をしているようなところが欲しがるからです。

 ただ、どんなサイトを見て、どこに行っているかというような情報は個人情報の観点で出せない。では、アンケートのような形にすべきかといったことを、壁打ちしながら考えています。頓挫しそうなものもありますが、7件ぐらいのPOCが進行しています。

―― やはりMVNOの法人ビジネスは、個人向けに比べると今後の成長余地が大きいのでしょうか。

山下氏 MVNOの業界は、常に新しいサービスが出てきています。mineoも解約率は低減しているものの、やはりユーザーの移り変わりは激しい。その意味で、みんギガは新規で使っていただける仕組みとして画期的です。今はZ世代に絞っていますが、クラスタの分け方やインセンティブ次第で、違う層にアプローチできると考えています。

―― DENPAtoは一風変わった法人向けサービスというようなイメージですが、いわゆる普通の法人向けサービスもやっていますよね。

山下氏 そこはもちろんやっています(笑)。メインの注力領域はIoTなどです。ただ、その領域はIIJさんが圧倒的に強く、営業や技術領域も含めて走っています。一方で、プラットフォーム型だとやはりソラコムさんが強い。どうやってうちの色を付けていくかを考えましたが、mineoはウェットでいろいろなチャレンジをしている。営業も関西色が強く、お客さまに近いところにしっかり入り込んでいます。そういった活動をしながら、長い目で見て回線が伸びてくればと考えています。

取材を終えて:データ容量とリサーチ案件をどうバランスさせるか

 DENPAtoが発表されたときは、「お硬めなIoTサービスが出てくるんだろうなぁ」と感じていた筆者だが、みんギガを見て、その考えが大きく間違っていたことに気付いた。新規事業共創プログラムにゴーグルをかけたハトのキャラクターを使っている時点で、察するべきだったのかもしれないが……(笑)。いわゆるB2Bだけでなく、B2B2の形でmineoの枠に収まらない新たなサービスを作っていくのが、同プログラムの狙いだ。その意味で、みんギガはDENPAtoの実施目的を示す格好の実例ともいえる。

 無料で通信サービスを提供するMNOやMVNOは過去にもあったが、リサーチと組み合わせたビジネスモデルを採用している点がみんギガの独自性だ。ターゲットを絞り、2回線目に特化しているところも、これまでの0円回線との違いになる。一方で、ユーザー数や付与するデータ容量とリサーチ案件の数をどうバランスさせていくのかが、今後の課題になりそうだと感じた。ユーザー数が拡大しすぎると、かじ取りも難しくなる可能性がある。ここをどう解決していくかは、今後も注目していきたい。

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