ドンキの格安SIM「マジモバ」誕生の舞台裏 3GB・770円でも収益性は問題なし、レジに並んでいる人に声かけ営業もMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2024年11月15日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 ホワイトレーベル戦略の下、黒子に徹してコラボレーション先のインフルエンサーや企業のブランドでサービスを提供しているエックスモバイル。起業家の堀江貴文氏と手掛けた「HORIE MOBILE」や、出版社の幻冬舎と展開する「幻冬舎MOBILE」などは、大きな話題を集めた。そんなエックスモバイルが、新たにタッグを組んだのがドン・キホーテやユニーを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)だ。

 新ブランドの名称は「マジモバ」。ドン・キホーテのブランドやPPIHグループの電子マネー「majica」を生かし、毎月商品を“おごってもらえる”クーポンを配布するのが特徴だ。料金も、3GBの「驚安プラン」は月額770円(税込み、以下同)と、他のMVNOと同水準かそれ以下に抑えている。現状では店舗限定だが、ドン・キホーテの店内にエックスモバイルのスタッフを配置し、そのまま回線契約できるのもマジモバならではの強みだ。

マジモバ PPIHグループがエックスモバイルと提携して提供する通信サービス「マジモバ」

 一方で、現状では店舗契約できるのはMEGAドン・キホーテ三郷店とMEGAドン・キホーテ成増店、MEGA ドン・キホーテ福重店の3店舗に限定されるなど、まだポテンシャルを引き出し切れていない印象も受ける。また、10月にはドコモのオンライン専用ブランドahamoが、データ容量を20GBに上げたことで、マジモバの「最驚プラン」のお得感がやや薄れてしまったのも事実だ。こうした課題を、マジモバはどのように解決していくのか。MEGAドン・キホーテ三郷店で接客していた、エックスモバイルの代表取締役社長、木野将徳氏を直撃した。

マジモバ MEGAドン・キホーテ三郷店で展開しているマジモバのカウンター

最初にパッと印象に浮かんだパートナーがドン・キホーテだった

マジモバ エックスモバイルの木野将徳社長

―― 最初に、なぜドン・キホーテのPPIHとタッグを組んだのかを改めて教えてください。

木野氏 僕がエックスモバイルを作ったとき、最初にパッと印象に浮かんだパートナーがドン・キホーテでした。激安、驚安の印象が強かったからです。「安い×モバイル」ということで、ドンキと組めたらいいなと勝手に思っていました。実際、1回アプローチしていますが、そのときは形になりませんでした。2年前に再度提案し、現在に至っています。

―― 2年前というと、HORIME MOBILEを始める前ぐらいでしょうか。

木野氏 ちょうどHORIE MOBILEが始まるか、始まらないかというときです。HORIE MOBILEは初めてから1年半ぐらいたっていますが、その準備をしていたタイミングでした。

 PPIHの吉田(直樹)社長に再提案した際には、興味を持っていただけました。「そもそも、エックスモバイルって生きていたんだ」という感じ(笑)。格安スマホ業界は買収でなくなったり、再編があったりした中で、エックスモバイルはちゃんとサバイブしているとおっしゃっていただけました。

―― 再提案で採用に至ったのは、MVNOを取り巻く環境が変わったこともあったのでしょうか。

木野氏 あったと思います。10年前だと、そもそも「SIMって何?」というような状況で、格安スマホも今ほど存在感がありませんでした。イメージがわかなかったのかもしれません。この10年で業界も大きく変わりました。

―― 10年前というと創業直後だと思いますが、そこでいきなりドン・キホーテに提案するのはなかなかチャレンジャーですね。当たって砕けろ、のような精神だったのでしょうか。

木野氏 常に砕けるつもりはなかったのですが(笑)。

―― 料金プランは3GBの驚安プランと、中容量が3本立てになっている最驚プランに分かれています。こうなった理由を教えてください。

木野氏 PPIH側からのリクエストとしてあったのは、PPIHが出す以上、業界最安級のプランを用意したいということです。発表会では森谷(健史)常務がかんかんがくがく考えたとおっしゃっていましたが、まさに何度もやり直してあの料金体系になっています。

マジモバ 驚安プランには#今月のおごりは付かないが、3GBで月額770円という安さにこだわった

ユーザーとコミュニケーションを取りながら要望を反映させることも

―― それにしても、3GBで770円は安いですね。収益性は大丈夫なのでしょうか。

木野氏 もちろん大丈夫です。ギガは少ない(ので同条件で比較できない)ですが、日本通信にはもっと安いプランがあるぐらいですから。楽天モバイルを意識して、そのぐらいの単価にしたいという思いはありました。安くして数を売るのも大事ですからね。ただし、それはやろうと思えばいつでもできることで、うちは高ARPUでしっかり価値を届けたいと考えています。そこで、他のMVNOとの差別化もしていきたい。幻冬舎MOBILEには2万円を超えるコースもありますからね。

―― 2万円超えですか。大手キャリア以上ですね。

木野氏 はい。幻冬舎MOBILEの「見城徹コース」は約2万円ですが、それなりに数も出ています。確かに携帯電話料金が2万円というと高いですが、付加価値が価格に見合っていると思ってくださる方がいるということです。もしくは、これでも安いと思っているかもしれません。

―― ということは、マジモバでもやはり最驚プランを主力にしていきたいというお考えでしょうか。

木野氏 ビジネス的に高いARPUを狙いたいというのはありますが、そこはアジャイル的にやってみて、反応を見ながらですね。売り方や営業方法は、そこに合わせて変えていくしかない。手探り状態でいろいろなことをやっています。例えば、僕のSNSでいろいろなキャンペーンを打ち、ドンキやユニーのアカウントに拡散してもらうというようなこともしています。ユーザーともコミュニケーションを取りながら、要望を反映させることもあります。ギガの繰り越しをしたいというコメントがあったので、既にそれも入れています。

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