―― J:COM MOBILEは今、シェアも伸びています。(2024年)12月に発表されたMM総研の調査では、独自サービス型SIMの事業者でシェア4位になっていました。
山部氏 ここ数年が強かったですね。2年ぐらい前に始めた「データ盛」でパケットをプレゼントし、1GBの料金で5GBまで、5GBの料金で10GBまで使えるようにしてから、定着率が上がっていきました。たまたまなのか、それが効いているのかまでは何ともいえないところですが、事実として、そこを境に定着率がよくなり、結果的に長く使っていただけるようになりました。サービス開始時点から、過去に契約した人にも適用するようにしましたが、それもよかったと思います。
【更新:2025年1月24日18時50分 データ盛の適用時期について「ある時期」→「サービス開始時点」に変更しました。】
MVNOはどの会社も、長く定着するユーザーが少ないところに苦労していると推測しています。われわれも同じような悩みを抱えていましたが、それをうまく解決できました。まだまだ数は微々たるものといえるかもしれませんが、そういったところはきちんと(ユーザーに)刺さっています。
田中氏 最近各社がデータ容量を増量していますが、その走りになったのではないでしょうか。
山部氏 料金プランを変えるのは結構ハードルが高いので、ある程度作っていたプランに追加する形にしました。J:COM MOBILEの場合、他のサービスを併用している方が90%を超えているので、適用されやすかったと思います。
―― モバイル単体で使っている人はほとんどいないんですね。
山部氏 いないですね。単体の料金だと他社と劇的な差がないですから。われわれは、J:COMを利用している方に向けてサービスをしていくというところからスタートしています。先ほどのAiraloとの話にも通じますが、モバイルに閉じずJ:COM利用者全体に、というのはそういったことも理由です。
―― ユーザーのデータ利用量は年々増えていて、大手キャリアもオンライン専用プラン/ブランドを30GBにしました。そういった大容量化の影響はないでしょうか。
山部氏 あまりないですね。もともと30GBに増量されても2728円でやっていたことは(影響として)あると思います。5Gでつながらないという声もあまり聞かないですし、ネットワーク品質が安定しているところも乗り換えの衝動が起きない1つの理由になっています。
―― データ使用量の増加で、ARPUが上がっているようなことはありますか。
山部氏 そういう意味だと、徐々に上がっています。ただ、MVNOを利用される方はまだそこまでデータ使用量が多くありません。5GBに収まっている方が多いのは事実です。もう少し使い方のブレークスルーが起きれば、1つ上のプランにしようという発想になってくる気がしています。大容量プランはデータ盛で30GBまでしかありませんが、使い方が変わってくれば、その上を用意しなければいけないと考えています。
―― その意味だと、J:COMには映像サービスがあるので環境は作りやすいような気もします。
山部氏 J:COMは映像が得意ですし、組んでいる会社もたくさんあります。そういうところが、次の話になってくるのだと思います。データ使用量を増やすには、どうしても動画がないといけない。SNSだけでデータ使用量が増えることはまずありません。使っていただきやすい環境を用意することが事業者側の義務なので、ここは使いやすくしていきたいですね。
―― 契約数ですが、6月に70万回線を突破したという発表がありました。現状はどの程度でしょうか。
山部氏 11月末で77万になっています。今年度(2024年度)中には80万には行きたいな、と。ただ、数だけを追うのではなく、品質もよくしていきたいですね。MVNOは遅いといわれることがありますが、J:COM MOBILEはそこまで速度が絞られません。
田中氏 その部分はかなり頑張っています。
―― グループとしてはKDDI傘下になりますが、送客のようなことはあったりするのでしょうか。
山部氏 まったくないです(笑)。むしろもう少し考えてほしい(笑)。ただ、J:COM MOBILEは、J:COMのお客さまに合った形でサービスを変えてきています。データ盛などのサービスも、J:COMのお客さまのためという発想でできたもので、独自路線は確立できました。
―― 自社のサービスや顧客基盤を生かすという点では、ある意味MVNOの王道のようにも聞こえました。
山部氏 逆に他のMVNOからは異質に見られているかもしれませんし、うちを参考にしようとしても、参考にならないかもしれない。お互いにいいところを出していくのは、あるべき形だと思っています。
Airaloとの提携は、データローミングの代替という側面に加え、eSIMの普及を促進する狙いがあった。サービスがシンプルなことや、日本語でのサポート体制が整えられていることも、導入の決め手になったようだ。一部のユーザーに知られているAiraloだが、一般層にまで広く普及しているかといえば、そうではない。日本のユーザーを増やしたいAiraloにとっても、メリットが大きそうな提携といえそうだ。
一方で、Airaloはドル建てでサービスが提供されているため、日本円で価格がいくらになるのか、直感的に分かりづらい側面もある。為替レートの影響も直撃するため、渡航のたびにコストが変わってしまうところも少々使いづらいと感じている。J:COMを介したサービスでも、この部分は変わっていない。サポートに加え、こうしたローカライズをいかに徹底できるかが日本での成否を左右することになるかもしれない。
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