一方で、5G SAは別途契約が必要。申し込みを済ませ、かつ対応端末を持っていなければならず、ややハードルが高い。コミケとはユーザー層も異なる。「コミケには“お詳しい方”がいるが、こちらは若年層が中心」(同)のため、まずはSA、NSA問わずに5Gで通信することが有効だと訴求していくという。引馬氏は、「一番いいのは5Gをオンにすることで、詳しい方がいればSAまでやっていただければ」と語る。
ドコモは、5G導入期にエリアの端で通信がしづらくなる事象が発生したため、ユーザーに設定変更で5Gをオフにするよう呼び掛けていた。その後の基地局チューニングや5Gエリアの拡大によって、かつてのようにエリアの端に起因するパケ詰まりは起こりづらくなったが、このノウハウはネットでも広がっており、現在でもその有効性がまことしやかに語られている。5Gを切ったままだと、広い帯域幅を利用できないデメリットの方が際立つようになってきたというわけだ。
コミケやLAPOSTAなどで導入されている臨時のネットワーク対策も、中心は5Gになりつつある。かつてのアナウンスがどこまで尾を引いているかは「加入者ごとに個別の情報まで見ていかないと分からないので把握はできないが、ユーザーのお声としてあることは認識している」(同)。そこで、ドコモは、LAPOSTAの来場者に対し、5Gをオンにすることを謎解きのリーフレットやX(旧Twitter)のドコモ公式アカウントで呼びかけているという。
今回のネットワーク対策で注目したいのは、ネットワーク部門だけでなく、エンタメ部門ともしっかり連携し、可搬型の基地局を増設したところにある。引馬氏は、「ケーブルの準備や免許もあるので準備に半年はかかるが、ここまで櫻井と一緒にやることで、早くから情報をいただけた」とその成果を強調する。
実際、先に挙げた東京ドーム内の対策も、「ライブを見ているときより、帰るときの方が大変と櫻井に言われた。終わった後の混雑する時間にご不便をかける」(同)というアドバイスを受け、ネットワーク設計に反映させた。先に挙げたように、人流情報を主催者から事前に入手できたり、東京ドーム内の観客席に可搬型基地局を置けたりといった点も、エンタメ部門との協力があってできたことといえる。
5G SAをイベント対応に活用し始めたドコモだが、海外ではスタジアムにネットワークスライシングを導入し、決済端末に専用スライスを割り当てて通信が止まらないような工夫を施しているキャリアもある。LAPOSTAでは通常のトラフィック対策が中心だったが、ドコモ自身が運営に関わることになった国立競技場や愛知IGアリーナ、ジーライオンアリーナ神戸などでは、より進んだ取り組みも期待できるかもしれない。こうした施設に適用できるノウハウを積み上げていく上で、LAPOSTAのように部門をまたがった連携の重要性が高まっているといえそうだ。
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