では、ドコモはどのようなネットワーク対策を実施したのか。同社の執行役員ネットワーク本部長を務める引馬章裕氏によると、「主催者から人流情報をいただき、ピンポイントで対策ができた」という。この場所に、可搬型の5G基地局を設置。帯域幅が広く、多くのユーザーを収容できる5Gは、「コミケ(コミックマーケット105)と同じように重点的に入れていった」(同)。
この中で特に人が集まりやすい場所には、Massive MIMO対応の可搬型基地局を導入した。さらに、「重要なイベントなのでリアルタイムに設備保守を行い、トラフィックやSNSでつながりづらい声がないかどうかを設備側で監視している」(同)という。故障が起きる可能性も見越し、「会期中はしっかり対策を取っている」という。
東京ドームのようなスタジアムは「野球の開催に合わせた設備対策はやり終えている」一方で、「グラウンドを開放してやるコンサートや今回のようなイベントは難しい」(同)。野球の試合中、グラウンドにいるのは選手のみ。しかもスマホは使わないため、LAPOSTAのようなライブイベントとは人流が大きく変わってくる。「普段の感覚で1万人を下(グラウンド)に入れると、かなり厳しい」(同)のが実情だ。
そこで、LAPOSTAでは、ステージ脇に可搬型基地局を2台設置。アリーナ前方のユーザーの通信品質が上がるよう、フルスペックで周波数を活用した。引馬氏によると、「野球でいう観客席のところに設備を置かせてもらった。アリーナとの距離がかなり近いので、バチっと(ユーザーがいる場所を)狙える」メリットがあるという。これができたのは、ドコモがトップパートナーだったからこそ。「最後の最後でここに置いていいという許可をいただけた」(同)。
LAPOSTAは1月27日から実施中だが、引馬氏によると、講演終了後の一番混み合う時間帯でも、5Gに接続していれば200Mbps程度の速度が出るという。5Gに接続するユーザーが増えることで4G側にも余裕ができ、「LTEでも快適なスループットが出ている」という。また、今回も引馬氏が挙げたコミケの時と同様、可搬型基地局に5G SA(スタンドアロン)を導入した。
5G SAはNSA(ノン・スタンドアロン)方式とは異なり、接続する際に4Gをいったんつかむ必要がなくなる。万が一4Gが混み合っていても、5G SAを有効にしていればその影響を回避でき、直接空いている5Gに接続可能。コミケのネットワーク対策で導入され、その有効性が証明できた。引馬氏は、「(5G側は)帯域も広く取っていて、増強もしている。設定できるお客さまはぜひ設定してほしい」と語る。
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