Appleは、2月20日未明に「iPhone 16」シリーズの廉価モデルとなる「iPhone 16e」を発表した。命名規則は異なるが、事実上、「iPhone SE(第3世代)」の後継機になるとみられる。プロセッサを最新モデルに合わせて処理能力を維持しながら、過去に販売されたモデルを部分的に組み合わせて価格を落としている特徴が、これまで投入してきたiPhone SEとの共通点だ。
一方で、機能性が高まったこともあり、ドル建てでの価格はやや上がっている。ここに円安ドル高の為替相場が直撃し、日本での価格は9万9800円(税込み)まで上がっている。割賦の審査を簡易化できる10万円は下回ったものの、廉価モデルとしては、過去最高の価格設定だ。処理能力との対比では依然として高コストパフォーマンスながら、価格以外にも不安要素はある。大ヒットしたiPhone SE(第3世代)に続く1台になるのか、その行方を占っていく。
iPhone SEと同じ廉価モデルとして販売されるiPhone 16eだが、Appleは、その路線を軌道修正していることが分かる。従来のiPhone SEは、コンパクトでかつリーズナブルな価格設定を特徴としており、ナンバリングモデルでは「iPhone 8/8 Plus」で打ち止めになっていたホームボタンを継続搭載していた。これに対し、iPhone 16eのサイズは、iPhone 16に近く、コンパクトさでの差別化は図られていない。
名称がiPhone 16eになったことから、より、現行モデルの廉価版という色合いが濃くなった。命名規則は、数字の後に「a」を付けているPixelに近いといえる。iPhone SEは数年にわたって継続販売していくモデルだったが、発売年とひも付けられやすいナンバリングを使ったことで、モデルチェンジの頻度が上げていく可能性もありそうだ。
コンパクトさやホームボタンという特徴は失われた一方で、商品企画の観点では、iPhone SEとの共通性もある。1つ目は、過去に販売されたiPhoneを“魔改造”的に踏襲していること。例えば、ディスプレイは有機ELだが、iPhone 15シリーズで標準仕様になった「Dynamic Island」を搭載しておらず、形状は2世代前の「iPhone 14」に近い。ただし、カメラは48メガピクセルの単眼で、筐体はデュアルカメラを搭載していたiPhone 14とも異なる。こうしたモノ作りの仕方は、iPhone SE的ともいえる。
筐体はiPhone 14に近いと書いたが、「アクションボタン」を採用しているところは、iPhone 16寄りだ。iPhone 16シリーズに共通採用された「カメラコントロール」は搭載されていないが、アクションボタンをカスタマイズすることで、カメラの起動やシャッターとして利用できる。また、Apple Intelligenceのビジュアルインテリジェンス(カメラで写したものや風景を検索する機能)も、iPhone 16eでは、アクションボタンに割り当てられる。
これらに加え、最新モデルにプロセッサをそろえ、処理能力をそろえているのが、iPhone SEから受け継いだコンセプトだ。iPhone 16eに搭載されたのは、「iPhone 16/16 Plus」と同じ「A18」で、ベースとなるCPUの性能は近い。GPUは「iPhone 16 Pro/Pro Max」に搭載された「A18 Pro」より1コア分少ないが、それでもハイエンドモデルと呼べるほどパフォーマンスは高い。実際、iPhone 16eの発表とほぼ同時に公開された製品発表動画では、ゲームが滑らかに動く様子がアピールされていた。
結果として、廉価モデルながら、iPhone 16シリーズや「iPhone 15 Pro」シリーズと同じく、Apple Intelligenceにも対応できている。シングルカメラのため、他のiPhone 16シリーズほど画角にこだわった撮影はできないものの、手ごろな価格で手に入るiPhoneでApple Intelligenceを使ってみたいというユーザーには、うってつけの端末といえそうだ。現時点ではメモリ容量は非公開だが、オンデバイスのAIを駆動させるため、この部分もiPhone 16/16 Plusとそろえている可能性がある。
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