実際、auは「スマホトクするプログラム」で、MNP利用時の価格を2年実質47円に設定。ドコモも、MNPで契約した際に、上限に近い4万2900円の割引を出し、「いつでもカエドキプログラム」と合わせることで実質価格を1210円まで抑えた。ソフトバンクは当初、MNPで2万4960円をつけていたが、予約開始直後に価格を改定し、新規契約やMNPで「新トクするサポート(スタンダード)」を利用した際の実質価格を24円まで引き下げた。
とはいえ、端末の下取りを前提にした実質価格で見ていくと、ノーマルモデルのiPhone 16も十分手に取りやすい価格で販売されている。例えば、ソフトバンクのiPhone 16は新規契約/MNPの場合、24回目までの月額代金が652円に抑えられており、総額でも1万5648円だ。この程度の差であれば、より性能が高く、カラーバリエーションにも富んだiPhone 16を選ぶ人も少なくないはずだ。iPhone 16の取り扱いがないUQ mobile、Y!mobileでは武器になるものの、メインブランドで主力になるかというと、そこには疑問符も付く。
もう1つの不安要素が、LTEのBand 11/21(いずれも1.5GHz帯)に非対応なこと。Appleは、iPhone 16eからモデムを自社製の「Apple C1」に切り替えたのと同時に、展開国ごとに分けていたモデル数の数を減らしている。iPhone 16シリーズだと、日本で販売されるモデルはカナダや米領グアムやサウジアラビア、カタールなどと同一型番で、欧州や東南アジアなどで展開されるモデルとは分かれていた。これに対し、iPhone 16eでは、日本が欧州や東南アジアなどと同一のモデル数にまとめられている。
結果として、日本向けのモデルが対応していたBand 11/21が非対応になってしまった。新しいモデムが原因なのか、コストカットのためにモデル構成を見直したことが原因なのかは定かではないものの、結果として、都市部でトラフィックをさばくために使う周波数の1つが使えないことになった。特に影響を受けそうなのが、ドコモだ。同社のBand 3(1.7GHz帯)は東名阪でしか利用できず、それ以外の地方都市はBand 21に頼ることが多い。Band 3が利用可能な東名阪でも、トラフィックを分散させるため、この周波数帯が活用されている。基地局数は、2024年3月時点で3万を超える。
総務省の有識者会議で明らかになったように、ドコモがメーカーに求める対応周波数は、「必須」「推奨」「任意」の3つに分かれており、他の端末の対応状況からは、Band 21は推奨に分類されることが推測できる。そのため、価格の安いエントリーモデルでは、Band 21の導入が見送られることもある。とはいえ、10万円近いハイエンドモデルが非対応なのは異例だ。
特に同社は都市部でのネットワーク品質低下に苦しんでおり、トラフィックが特定の周波数に偏ることはなるべく避けたいはずだ。その端末の通信がしづらくなるだけでなく、逼迫(ひっぱく)した周波数を使う他の端末にも影響を与える可能性もある。キャリアによって温度差はありそうだが、Band 11/21が欠けているのは、キャリアが“推し端末”にしづらい要素になりかねない。
また、iPhone SEはコンパクトさや押すだけでホーム画面に戻れるホームボタンやTouch IDが売りの1つだったが、iPhone 16eからは、こうした特徴がなくなっている。外観的にはより標準モデルに近づいた半面、こうした美点を評価していたユーザーが買い替えに走るかが読めない。大胆にコンセプトを変更し、機能だけなく外観まで刷新したiPhone 16eだが、iPhone SE並みのヒットにつながるかは未知数といえそうだ。
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