松田氏は「通信という仕事にも夢中だった」とも振り返り、これまでの30年間、いかにして高い通信品質を実現するかに力を注いできたと語る。その通信品質については、「多くの人が『基地局の数で決まり、つながりやすさはどの通信会社(キャリア)も大きく変わらないだろう』と考えるが、実際には各社のテクノロジーによって品質は大きく異なる」と指摘する。
KDDIは、世界的な通信評価機関である英Opensignalから“つながる体感”で世界一の評価を獲得しているが、松田氏は「まだまだ」とし、今後も「ずっともっと、つなぐぞ」を合言葉とし、品質改善への努力を怠らずに継続していく姿勢を見せた。
ただし、KDDIが重視する「つなぐチカラ」は、単なる通信インフラの品質では終わらない。松田氏は「命を、暮らしを、心をつなぐ」ことこそが本質であり、それによって人々の思いを実現する社会を作ることが、2030年に向けたKDDIグループのありたい姿「KDDI VISION 2030」だと説明。
そのカギを握るのがAIだという。とりわけ「通信とAIの融合により、通信は次のステージへと進化」し、KDDIにとってAIは単なる流行語やツールではなく、「通信によって生まれる膨大なデジタルデータとAIをつなぎ、そこから価値を生み出していく」(松田氏)ためのものと位置付けている。
会見の6日前となる4日、KDDIはAIデータセンターの構築に向けて、シャープとシャープ堺工場(大阪府堺市)の土地や建物などを取得することについて売買契約を締結したと発表していた。生成AIの開発に加え、その他のAI関連事業などに活用し、「AI普及のための土台を強化」(松田氏)していくとしている。
さらに、このAIデータセンターには、「Googleのマルチモーダル生成AIモデルである『Gemini』を組み込み」、Google Cloudとの連携を深める方針で、AIをより身近で使いやすいものへと進化させたい狙いがある。その先に実現することとしては、AIによる着回し提案の「クローゼット」や、音楽・テキスト生成などのサービスがあるそうだ。
KDDIは2024年4月19日に、経済安全保障推進法にもとづく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画について、経済産業省から認定を受け、生成AI開発のための大規模計算基盤の整備を開始し、今後4年間で1000億円規模の投資を行うと発表していた。松田氏は、投資のスタンスは「(発表当時から)変わらない」としつつも、「さらなる投資のタイミングがあれば、しっかりと反応していきたい」と述べた。
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