連載
» 2022年12月03日 10時00分 公開

KDDIが“エリアの穴”をふさぐのに「Starlink」を採用したワケ スマホの直接通信には課題も石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

KDDIは、低軌道衛星通信の「Starlink」を基地局のバックホールに活用する。12月1日には、その第1号となる基地局が静岡県熱海市の離島である初島で開局した。離島や山間部ではバックホールに光ファイバーを敷設できないため、Starlink基地局が活躍する。

[石野純也ITmedia]

 KDDIは、低軌道衛星通信の「Starlink」を基地局のバックホールに活用する。12月1日には、その第1号となる基地局が静岡県熱海市の離島である初島で開局した。同日には、代表取締役社長の高橋誠氏や、米Space Exploration Technologies(SpaceX)でバイスプレジデントを務めるジョナサン・ホフェラー氏が集い、オープニングイベントを開催した。KDDIは、このStarlink基地局を早期に1200カ所へと展開していく計画だ。

 4Gで99.9%の人口カバー率を誇るKDDIだが、この指標は、あくまで人が住んでいることを前提としたもの。国勢調査に用いられる500m区画を50%超カバーしているメッシュの人口を、全人口で割って算出される。逆に、人が居住していない離島や山間部などは、指標に表れず、エリアの“穴”になっていることがある。こうした場所での切り札になるのが、Starlink基地局だ。ここでは、その仕組みとともに、SpaceXと提携したKDDIの狙いを解説していきたい。

Starlink KDDIが、バックホールにStarlink回線を使う基地局を初島に開設した。12月1日には、そのオープニングセレモニーや報道陣を集めた説明会を開催した

低軌道衛星をバックホールに使うStarlink基地局とは? そのメリットを解説

 Starlinkは、SpaceXが運用する低軌道衛星通信。端末は上空約550?を飛ぶ衛星と直接つながり、衛星から通信は地上局を介してインターネットにつながる。ただ、低軌道衛星は地球に近い分、1台1台のカバー範囲が狭く、常に移動している。常時接続を提供するためには数が必要だ。SpaceXの通信が実用的なのは、「Falcon 9」と呼ばれるロケットに搭載した衛星を、既に3000機以上打ち上げているためだ。

Starlink 端末は衛星と通信を行う。衛星は、地上局を介してインターネットにつながる。SpaceXは、この衛星を既に3000機以上打ち上げている

 このStarlinkを日本で展開にするにあたり、技術面と制度面で協力したのがKDDIだ。Starlinkの衛星をインターネットにつなぐための地上局は同社が運用している他、電波法など、法規制とのすり合わせも必要になるため、総務省との技術検証にも協力してきた。こうした経緯もあり、KDDIはSpaceXの「認定Starlinkインテグレーター」に選定されており、法人や自治体向けの「Starlink Business」を開始する。

Starlink KDDIは、SpaceXのStarlink認定インテグレーターにも選ばれており、法人向けにはStarlink Businessを展開する

 Starlink Businessは、ある意味KDDIが代理店のような形でStarlink回線を販売し、その上で同社のサービスを提供するもの。これに対し、Starlink基地局は、KDDI自身の基地局にStarlinkを取りつけ、離島や山間部などをエリア化するための取り組みだ。基地局は、バックホールと呼ばれる回線を通じてコアネットワークなどの設備に接続する。通常、ここに用いられるのは光ファイバーだ。この光ファイバーを、Starlinkによる衛星通信に置き換えたのが初島で披露した基地局だ。

Starlink Starlinkのアンテナのやや下に取りつけられているのが、KDDIの電波を吹くためのアンテナだ

 キャリア側のメリットは、設置のしやすさに集約される。KDDIの高橋氏は「光ファイバーなしでも基地局を設置でき、電力もソーラーパネルで供給すれば、まったく何もないところに基地局を持っていける」と語る。Starlinkで直接通信するのとは異なり、基地局を介してKDDIのコアネットワークにつながるため、特別な設定などは必要なく、ユーザー側は普段と同じように電話やデータ通信をそのまま使うことが可能。Wi-Fiで中継するより、エリアも広い。

Starlink 「何もないところにも基地局を持っていける」と自信をのぞかせたKDDIの高橋氏
Starlink Starlinkを直接提供するStarlink Businessとは異なり、基地局のバックホールに活用することで、KDDIのユーザーは衛星経由であることを意識せずに通信を利用できる

 KDDIの事業創造本部 LX基盤推進部の泉川晴紀氏は「(山間部などの)開発現場に行っても、普段と同じ090や080、070の番号が使えるようにしたいという声を多くいただいている」と言うが、Starlink基地局であれば、こうしたニーズにも応えることができる。エリア展開が容易なStarlinkの特徴を生かしつつ、普段使いの携帯電話をそのまま利用できるようにしたのがStarlink基地局を展開するメリットといえる。

Starlink 電話番号をそのまま利用でき、エリアも広い

 高橋氏によると、こうした基地局は早期に1200局を展開していくという。1200局は、KDDIが必要だと判断したところに設置する。一方で、「法人のお客さまからぜひここにという場所に対しては、ご要望に応じて建てていく」(泉川氏)という。法人や自治体に特化しているStarlink Businessとは異なり、Starlink基地局は、コンシューマーと法人の双方に展開していくというわけだ。サービスを開始した初島も、どちらかといえばコンシューマー向けという色合いが濃い。

Starlink KDDIは、Starlink基地局を早期に1200局まで広げていく構えだ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2023年11月10日 更新
  1. 「NTTの考えは詭弁」「楽天モバイルにバックホールを貸す議論をしてもいい」 ソフトバンク宮川社長が熱弁 (2023年11月09日)
  2. NTT島田社長、他社の“NTT法廃止反対”について「誤解がある」と反論 「世界では20年前に終わっている議論」 (2023年11月07日)
  3. ソフトバンクの新プラン「ペイトク」はPayPayをいくら使えばお得になる? 「メリハリ無制限+」と比較 (2023年11月08日)
  4. 楽天モバイル、2024年末までに800万回線突破で黒字化を目指す SPUは「多くの方々にはアップグレードになる」と三木谷氏 (2023年11月09日)
  5. ドコモは「irumo」が解約抑止に貢献、端末値引き上限4万円は「納得感がある」と井伊社長 (2023年11月07日)
  6. NTTで「USBメモリの使用を禁止する」 島田明社長が明言 Xでは「マウス使えない?」などのデマも (2023年11月08日)
  7. Appleが「iOS 17.1.1」「iPadOS 17.1.1」を配信 不具合を解消 (2023年11月08日)
  8. ドコモのPixel 8、実質負担額を約1.8万円に軽減 「いつでもカエドキプログラム」利用で11月10日以降 (2023年11月08日)
  9. 「改悪」と話題の楽天SPU どんなユーザーがお得になるのか試算した (2023年11月06日)
  10. 楽天モバイル三木谷会長、他キャリアとの“協調”について「可能性をいろいろと検討していく」 (2023年11月09日)

過去記事カレンダー