KDDIが“エリアの穴”をふさぐのに「Starlink」を採用したワケ スマホの直接通信には課題も石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2022年12月03日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

展開できる場所には限界も、スマートフォンとの直接通信にも期待

 ただし、Starlink基地局も万能ではない。あくまで光ファイバーが引けないエリアへの展開にとどめるのも、そのためだ。キャパシティーの問題は、その1つだろう。バックホールに活用するといっても、Starlinkの通信速度は、下り最大350Mbps。スマートフォン1台でそれだけの速度が出れば十分なスピードではあるが、基地局には複数台の端末がつながる。多数の人が集まって同時に通信すると、十分な速度が出なくなってしまう恐れもある。

Starlink 通信速度は350Mbps。静止衛星よりは高速かつ大容量だが、基地局に大量の端末がつながると、スループットが低下する恐れもある

 また、衛星通信は天候の影響を受けやすい。サービス開始時の初島は曇りで、問題なく通信できていたが、「豪雨のようなときには影響を受けると思っている」(泉川氏)。高い周波数ほど天候に左右されやすくなるからだ。衛星と地上局の間は、「より周波数が高く、影響を受けやすい」こともあり、「天候の影響が大きいときには別の地上局で通信するような仕組みも入っている」(同)というが、基地局側のスループットが低下するなど、何らかの問題が起こるケースはありそうだ。

 同様に、降雪に関しても「Starlinkのターミナルに融雪機能があり、ある程度の雪は溶けるようになっている」(同)が、豪雪地帯での運用は難しいかもしれない。とはいえ、KDDIは「現状でも静止衛星を使って(基地局展開を)やっているので、その知見を含めて、どういったところに付けられるかは検討していく」(同)。Starlink基地局の目標である1200カ所の一部も、静止衛星をバックホールにした基地局の置き換えになるという。

 今現在サービスを提供できているという意味で、Starlink基地局は現実解ではあるが、基地局の設置には用地選定や工事などの時間もかかる。ごくまれにしか人が足を踏み入れない場所などにも展開はしづらい。将来的には、やはり衛星とスマートフォンの直接通信も必要になりそうだ。高橋氏も、「衛星経由の緊急SOS」が利用できるようになったiPhone 14や、同じSpaceXとスマートフォンの直接通信を計画する米T-Mobileの例を挙げつつ、次のように語る。

 「米国(北米)では、AppleがGlobalstarの衛星を使って、iPhone 14とダイレクトにつながってメッセージなどの通信をできるサービスが始まっている。StarlinkとT-Mobileも動いている。今回、Starlinkとはいい関係ができたので、その延長線上で(衛星とスマートフォンの直接通信を)実現できればいいと思っている」

Starlink 高橋氏は、課題があるとしつつも、Starlinkとスマートフォンの直接通信に期待をのぞかせた

 スマートフォンとの直接通信には、アンテナなどの技術改良に加え、制度面での対応も必要になる。また、実現できたとしても、今のスマートフォンだとStarlink基地局のような速度を出すのは難しい。特に、スマートフォンから電波を発射する上りの通信がネックになる。一方で、国土全体をカバーしていれば、いざというときにSMSなどのテキストメッセージを送ることはできる。キャリアが主導すれば、iPhoneの衛星経由の緊急SOSとは異なり、端末を選ばず利用できるようになる可能性もある。KDDIとStarlinkの今後の取り組みにも期待したい。

Starlink 北米でサービスを開始したiPhoneの衛星経由の緊急SOS。こちらは、Globalstarの低軌道衛星を活用している
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年02月28日 更新
  1. 「iPhoneのシェアの高いスマホ市場」に異変!? ショップ店員に聞く「Androidスマホ人気」の実情 (2026年02月27日)
  2. モバイルSuicaがいつの間にか“ゴールデン”に そして忘れられる“車窓” (2026年02月27日)
  3. 3キャリアに聞く「Galaxy S26」戦略 「月1円」のソフトバンク、3年ぶり参戦の楽天、16周年のドコモ (2026年02月27日)
  4. 5G通信とMagSafeをサポート! 片手でも持ちやすい「iPhone 12 mini(128GB)」のAmazon整備品が約3万円から (2026年02月26日)
  5. 楽天モバイル回線のMVNOサービス「ゼロネオモバイル」登場 月額6248円でデータ無制限、60回払いで端末実質0円 (2026年02月25日)
  6. ポケモンとYahoo! JAPANが30周年コラボ LINEも特別デザインに 検索画面に“赤・緑の3匹”が登場する演出も (2026年02月27日)
  7. 「eSIM」は人類にとって早すぎる? 携帯電話ショップ店員に聞いたら意外な答えが (2025年11月28日)
  8. 「Galaxy S26/S26+」発表、日本では5年ぶり「+」モデルも 新チップ搭載でカメラやAIの処理性能が向上 (2026年02月26日)
  9. 「Pixel 10a」は何が進化した? 「Pixel 9a」「Pixel 10」とスペックを比較 “aシリーズ初”の機能も (2026年02月19日)
  10. 最上位モデル「Galaxy S26 Ultra」発表 のぞき見防止ディスプレイや明るいカメラ搭載 実機を写真で解説 (2026年02月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年