サービス面で面白いのは、単なるメッセージサービスに限定せず、Geminiを絡めてきたところだ。Googleは、RCSに対応したGoogleメッセージのRCSを使って、Geminiが自動で返答するサービスを提供している。au Starlink Directで通信可能な対象にも、このGeminiが含まれる。アプリやブラウザでGeminiにアクセスできずとも、メッセージサービスさえ使えればGeminiとやりとりすることが可能になる。
メッセージだけだとコミュニケーションで終わってしまい、相手も必要になるが、Geminiであれば、すぐに応答してくれる。検索サービスではないため、最新情報を得るには限界がある一方で、学習で得た豊富な知識があるため、一般的な情報であれば引き出すことが可能だ。ブラウジングやアプリが使えない通信的な制約を、RCSと生成AIのGeminiで乗り越えたというわけだ。
アプリやWebサービスがある中、わざわざRCSを介してGeminiが使える重要性は低いように思えたが、このような制限がある中でこそ真価を発揮できる。KDDIは、AndroidにGoogleメッセージを標準採用するとともに、iOSのRCS対応も進めてきたが、これらはau Starlink Directに向けた準備の意味合いもあった。ネットワークと端末の両面を見ているキャリアだからこそ、2つのタイミングを合わせて実現できたサービスといえそうだ。
au Starlink Directにつながっていれば、Geminiに気になったことを質問できる。また、iPhone用にはKDDIがSMSを使った「シンプルAIチャット」を用意。「#3333」にメッセージを送ると、返信を受けられる松田氏は、社長就任にあたって「夢中に挑戦できる会社」を掲げ、その1つ目の挑戦として、「未来をつくる仲間とつながる」を挙げていた。SpaceXとの提携だけでなく、通信の上にGoogleのGeminiやAppleのRCSを乗せてきたところは、その方針とも合致する。松田氏も、「共有したい、不安を解消したい、調べ物がしたいというお客さまの気持ちに寄り添うサービスができたと思っている」と自信をのぞかせた。
ただし、au Starlink Directがメッセージサービス限定なのは、当初数カ月だけの話。2025年夏には、通常のデータ通信にも対応する予定だ。“通常の”と表現したのは、RCSやSMSも、厳密にいえばデータ通信網を通って送受信されているため。現状では、ネットワーク容量などに鑑み、通信できるアプリを制限している形になる。逆にいえば、夏ごろには衛星の数も増え、データ通信に必要なキャパシティーが確保できることになる。
一方で、音声通話は「今の時点ですぐにという計画はない。もう少し先かなと(SpaceXとは)話をしている」(松田氏)と言うように、現状での予定は明かされていない。キャリアの提供する音声通話サービスとなると、品質確保や緊急通報など、乗り越えなければいけないハードルも高まる。とはいえ、LINEなどのアプリを使えば通話自体は可能になる。その意味では、データ通信の開始でよりサービスが本格化し、価値が高まるといえそうだ。
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