大々的にスタートしたau Starlink Directだが、当面はauユーザーに対し、無料で提供される。オプションを契約する必要もなく、端末のアップデートさえ済んでいれば、今すぐにでも利用することは可能だ。とはいえ、au Starlink Directの提供にも、コストはかかる。自前で建てた基地局とは異なり、オペレーションコストがかさむことも考えられる。
無料の前に“当面”とついているのは、どこかでコストを回収するフェーズになる可能性があることを示唆している。一方で、松田氏は「まずは広く使っていただきたいという思いを込めて、当面無料にした」としながら、「これ単体でサービス収支を取ろうとは考えていない」と断言する。そのため、オプションとして通信料に上乗せするような形でサービスを提供することになる可能性は低そうだ。
現時点では、au Starlink Directを「auブランドの魅力化」の武器と考えていることもうかがえる。実際、その名の通り、au Starlink Directはau限定のサービス。メインブランドのauのみが対応しており、同じネットワークを使うUQ mobileやpovo1.0、2.0では提供されていない。松田氏も、「auのメインブランドの価値の1つと捉えていただければ」と語る。
仮にユーザーがこのサービスに魅力を感じ、UQ mobileやpovoからauに移れば、料金が高い分、ARPU(1利用者からの平均収入)は上がることになる。他社からMNPでユーザーを獲得する際にも、auに直接、移ってもらえる可能性は高まる。直接的に料金を徴収するのではなく、幅広いユーザーに使ってもらい、auへの乗り換えを増やすことで間接的に収入を拡大する戦略といえる。
一方で、松田氏は、「“本日時点で”お使いいただけるのはauのお客さまのみ」と述べていたように、どこかのタイミングでUQ mobileやpovoへの拡大も視野に入れていることがうかがえた。ただし、この2ブランドはもと料金が安いため、auと同様、無料で提供されるかどうかは未知数だ。通常の料金に含めるのはメインブランドのauにとどめ、オプションという形で対価を求める可能性もある。
中でも、オンラインで簡単にトッピングを追加できるpovo2.0とは、相性がよさそうだ。1日いくらという形で提供し、コンテンツバンドルのように、必要なときだけau Starlink Directを購入してもらうビジネスモデルは十分考えられる。実際に使うかどうかは分からなくても、山や海を訪れるユーザーが“保険”として購入することもあり得るだろう。povo2.0は、サブ回線として他社のユーザーにも訴求もしているため、間接的にau Starlink Directを他社に開放することにもつながる。
海外では、同様にStarlinkを活用したD2Cを提供しているキャリアが、他社に有料でサービスを開放する動きもある。米国のT-Mobileは、一部料金プランにStarlinkのD2Cを無料でバンドルした上で、それ以外はオプションとして展開。他社ユーザー向けにも、月額20ドル(約2874円)でサービスを提供する。同じStarlinkを活用するキャリアの“仲間”なだけに、KDDIがこうした料金プランを参考にする可能性は十分ありそうだ。
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