では、なぜ春商戦は盛り上がりに欠けたのだろうか。店員の考えを聞いてみよう。
(端末が)全く売れなかったわけではないので、「売れなかった理由」と言われてもちょっと難しいような気がします。ただ、総じて「今はスマートフォンを買うタイミングではない」と考えているお客さまが多かったように感じました。
今年(2025年)はPCの案内を手伝ったり、それに併せてインターネット回線の案内を行うことが多かったです。これは、うちの店だけじゃないと思います。
そういう場合も『スマホも買い替えちゃいましょう!」って提案はするんですけど、PCで約20万円、スマホにも10万円みたいな支出は、いくら分割払いでも厳しいと言われたことが何度もありました。
物価高の時代ということもあって、やはりお客さまは「安く安く」の考えになっている感じはします。最新機種では、(事実上の)レンタルとはいえ、支払いが増える事実に変わりはないですし。
春商戦の時期というのは、スマホだけでなく他に“入り用”な時期でもあります。今使っているスマホに不満がないなら「1円でも節約したい」みたいなお客さまが多かったのかなと。
おおむね2〜3年前の機種を使っているお客さまは買い替え時を迎えていると思って、機種変更の案内をしています。しかし、実は買ったのは1〜2年前だと言われることも多かったです。
考えて見ると、その機種はここ1〜2年で「月々1円」キャンペーンでかなりの台数を売ったものでした。今買い替えたとしても分割払いが残っているわけで、そうなると「今買い替えるのは難しい」と言われることにも納得はできます。
1円「レンタル」の仕組みは、利益の先売りというか(端末が)売れなくなったからどうにか売るための秘策だったんですよ。2年契約のような回線契約における縛りはなくなったものの、お客さまに負担をほとんどかけないとはいえ、分割払い契約と購入プログラムによって「2年で縛る」ようになったので。
昔とは違う意味での「実質」「縛り」は残っていることがいいか悪いかはさておいて、それを超えるような“何か”が今は用意できません。現状を覆すような販売施策がないと売れないですよね。」
店員の話をまとめると、「物価高でスマホの購入優先順位が下がっている」「安く売るための施策が、かえって将来の販売を阻害している」といった状況が伺い知ることができる。
NTTドコモの「いつでもカエドキプログラム」(画像)やau/UQ mobile(KDDIと沖縄セルラー電話)の「スマホトクするプログラム」など、残価設定型の分割払いを併用する購入プログラムは端末の初期導入コストを抑制するまた、以下のような話もあった。
やっぱり、お客さまからは「学割らしい学割がない」という指摘は受けますよね。「上の子のときは学割があったけど、今はそういうのないんだね」なんて感じで。
キャリア(通信事業者)にもよりますが、以前の学割に相当する割安感のある料金プランは「ネット申込のみ」なんてこともありますし、お客さまもそういうプランを認知しているにも関わらず「今なら店舗でも学割の安いプランがあるのでは?」と期待して来店するケースもあります。
その期待に応えられないとなると、お客さまも「じゃあいいや」となってしまいます。
ITmedia Mobileの記事を追いかけると分かると思うが、学生向けキャンペーンの露出は、年々弱くなっている。筆者も去年(2024年)、中学生になった娘にスマホを購入したのだが、春商戦ではない時期に「身分や年齢の条件を満たせば“いつでも”加入できるプラン」で新規契約した。春商戦ではない時期でも、お得なプランはあるのだ。
総括すると、「春商戦期にお客さまが期待するもの」が欠けていることが、春商戦の盛り上がりが欠けるという結果につながった――これが、2025年春の販売現場の実情といったところだろう。
今回の話は、春商戦にスポットを当てた。携帯電話ショップにおける商戦期としては「新型iPhone発売」もあるのだが、どちらの商戦期も年々盛り上がりに欠けつつある。
スマホはもちろん、通信サービスもある意味で“成熟”している。そこに物価高や通信事業者が打ち出す施策の変化も相まって、しばらくは「繁忙期」あるいは「商戦期」は訪れないのかもしれない。
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