iPhone 16eとPixel 9aはどちらも最新のAI機能を豊富に搭載しており、スマートフォンの使い勝手を大きく向上させている。詳しく見ていこう。
iPhone 16eのAI機能の中核をなすのが「Apple Intelligence」だ。iOS 18.4から日本語対応した。プライバシーを重視した設計とされており、処理はデバイス内とAppleの専用サーバ(プライベートクラウドコンピューティング)の組み合わせで行われる。個人情報が第三者に漏れることがないよう配慮されているのだ。
作文ツールはApple Intelligenceの目玉機能だ。メール、メモ、メッセージなど文章を入力するほぼ全ての場面で利用でき、文章の校正・書き直し・要約が簡単にできる。特に実用的なのが形式変換機能で、箇条書きのテキストを表形式に変換したり、カジュアルな文章をビジネス調に書き換えたりできる。
SiriはChatGPTとの連携により大幅に賢くなった。「コピ・ルアクとはどんなコーヒー?」といった専門的な質問にも詳しく答えられるようになり、ChatGPTアプリに遷移して追加で質問ができるようになっている。
通知管理も強化され、重要な通知だけを選別して表示する機能が追加された。メールアプリでは受信トレイの一覧表示で各メールの内容を1行で要約表示するため、開かなくても概要を把握できる。
画像生成機能「Image Playground」では、テキストプロンプトから画像を生成できる。アニメ調、スケッチ調、イラスト調から選択可能だが、人物の生成には制限があり、「日本アニメ風」などの指定にも対応していない。
「ジェン文字」はメッセージやメモアプリでオリジナルの絵文字を作れる機能だが、Apple純正アプリでのみ使用可能という制約がある。
写真編集では「クリーンアップ」を備えている。これは写真に写り込んだ人物やモノを消す機能で、Pixelの「消しゴムマジック」に相当する。
Pixel 9aのAI機能の中心となるのは「Gemini」だ。基本的なタスクはデバイス内の「Gemini Nano」で処理し、複雑な処理はクラウド上のモデルで行う構成になっている。
特に「Gemini Live」というAIアシスタントが優秀だ、自然な会話ができるAIアシスタントで、Google One AIプレミアム(月額2900円)に加入すると、カメラで見ている物体について質問したり、画面を共有しながら会話したりできる。
Google マップやカレンダーなどのサービスとも連携し、タスクを効率化できる。Google マップの駅構内案内を文章で説明したり、新幹線の予約ページのスクリーンショットを渡してGoogleカレンダーの登録リンクを作成したりといったこともできる。
カメラAI機能がPixelの強みだ。「一緒に写る」機能では2回撮影を行い、撮影者も含めた全員が写った1枚を生成できる。「ベストテイク」機能は複数の写真から各人の最適な表情を組み合わせ、理想的な集合写真を作成できる。
「編集マジック」を使えば、写真の不要な部分を消したり、空の色を変えたりできる。「音声消しゴムマジック」では、録画した動画の音声を「人の声」「自然の音」「風の音」に分類し、それぞれの音量を調整可能だ。
検索機能も充実しており、「かこって検索」では画面上の気になるものを指で囲むだけで関連情報を検索できる。Googleレンズとの連携で、カメラに映るものをリアルタイムで認識し情報を表示することも可能だ。
文書作成支援ではiPhone 16eの「作文ツール」が秀逸で、特に表形式への変換や文体変更の多様さが光る。メールの要約機能も日常の情報処理を効率化してくれる。
写真編集ではPixel 9aが優位に立っており、「一緒に写る」や「ベストテイク」など撮影から編集まで一貫したAIサポートが魅力だ。特に集合写真を撮る機会が多い人には重宝するだろう。
アシスタント機能では一長一短だ。Siriは日本語対応が進んでおり、ChatGPTとの連携で専門的な質問にも対応できる。一方Geminiは検索との連携が強みで、情報収集に優れている。
上位モデルと比べると、妥協点もある。価格が高い分、iPhone 16eはApple Intelligenceのフル機能を利用できる。ただし「カメラコントロールボタン」がないため、ビジュアルインテリジェンスを起動するためには、アクションボタンやロック画面をカスタマイズするか、コントロールセンターに割り当てる必要がある。
Pixel 9aについては、メモリ容量の制約により、「Pixelスクリーンショット」や「通話メモ」といった一部機能が利用できない点は、上位モデルとの差別化要素となっている。
両機種を比較検討した結果、それぞれに明確な特徴が見えてきた。iPhone 16eはシンプルで洗練されたデザインと安定した性能、Apple独自のエコシステムの利便性が魅力だ。一方のPixel 9aはカメラ機能と画面表示のクオリティー、バッテリー持続時間、そして多彩なAI機能での優位性が目立つ。
既存の使用環境との親和性を考慮すると、現在Apple製品を多く使っているユーザーにはiPhone 16eが、Googleサービスを日常的に活用している人にはPixel 9aが自然な選択となるだろう。
価格面ではPixel 9aが2万円ほど安く、コストパフォーマンスを重視するなら明らかに有利だ。しかし、iPhoneならではの高い品質感やApple製品特有の洗練されたUXを求めるユーザーにとっては、iPhone 16eの価格プレミアムも許容範囲といえるかもしれない。
最終的には個人の使用スタイルによって最適な選択は異なる。写真撮影が多く、画面の大きさや滑らかさを重視するなら断然Pixel 9a。Apple製品との連携やシンプルな操作性を重視するならiPhone 16eが妥当だろう。どちらも現時点で入手できる最も先進的なミッドレンジスマートフォンであることは間違いない。
(製品協力:アップルジャパン、グーグル)
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