スコープリーがポケモンGOを手に入れたかった理由 「私たちの目標は、何かを変えることではない」(1/2 ページ)

» 2025年06月06日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 Nianticがスマートフォン向けに提供しているゲーム「Pokemon GO(ポケモンGO)」「ピクミンブルーム」「モンスターハンターNow」の事業を、米国のモバイルゲーム会社、Scopely(以下、スコープリー)が35億ドルで買収する。取引完了は2025年を予定しており、スコープリーに移管後も、これらのゲームやアプリの提供は継続する。

 このスコープリーとは、どんな会社なのか。また、買収したゲーム事業をどのように展開していくのか。2025年5月下旬に、スコープリーの共同創業者 兼 共同CEOのウォルター・ドライバー氏、共同CEO 兼 取締役のハビエル・フェレイラ氏、最高収益責任者(CRO) 兼 取締役のティム・オブライエン氏が来日。短時間ながらグループインタビューという形でお話をうかがうことができた。

スコープリー 左から、スコープリー共同創業者 兼 共同CEOのウォルター・ドライバー氏、最高収益責任者(CRO) 兼 取締役のティム・オブライエン氏、共同CEO 兼 取締役のハビエル・フェレイラ氏

 スコープリーは、2011年に米ロサンゼルスで設立されたゲーム会社。スマートフォン、Web、PC、コンソールに向けたゲームを、世界15カ国以上で提供している。代表作の「MONOPOLY GO!」は、モバイルゲームでは史上最速という50億ドルの収益を達成し、1000万人以上のデーリーアクティブユーザーと1億5000万回以上のダウンロードを記録した。この他、「Star Trek Fleet Command」「MARVEL Strike Force」「Stumble Guys」など、スコープリーのゲームは累計150億時間以上プレイされているという。

スコープリー 「毎日に遊び心を」をミッションに掲げている
スコープリー 人気IPのゲーム展開やコミュニティーの形成にも重きを置いている

日本は「世界有数のマーケット」、強いIPにも着目

 今回のNianticに限らず、スコープリーは世界有力のゲームスタジオや企業を買収することで、ゲームのポートフォリオを強化してきた。例えば2020年には、ディズニーからMARVEL Strike Forceのスタジオを、2021年にはソニー・ピクチャーズエンタテインメント傘下のGSN Gamesを買収した。今回のNianticの3タイトル買収も、そうした事業拡大の一環だと捉えられる。

 2023年には、サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)傘下で、ゲームとeスポーツ事業を展開するSavvy Games Group(サビー・ゲームズ・グループ)が、49億ドルでスコープリーを買収した。これにより、スコープリーは潤沢な資金を得て、ゲーム事業をさらに成長させていく基盤が整った。

 日本市場についてウォルター氏は「世界でも有数のマーケット」「イノベーションで最前線を行っている市場」だと評価する。中でも注目しているのがIP(Intellectual Property:知的財産)だ。「日本には、世界中に羽ばたいている強いIPがあるので、世界中のゲーマーに届けたい」とウォルター氏は意気込む。Nianticから買収した3タイトルも、「ポケモン」「ピクミン」「モンスターハンター」という強いIPを持っており、これらのIPがスコープリーのゲーム事業をさらに拡大させると考えたようだ。

「私たちの目標は、何かを変えることではない」

 スコープリーの買収の発表があった直後は、Nianticのゲームはサービス終了するのか、といった臆測がネットで見られたが、スコープリーのビジネス拡大の戦略や、IPをゲーム事業の武器にしたいという買収の意図を考えると、サービス終了はあり得ないことが分かる。一方、これまでのゲーム体験が維持されるのかは気になるところ。例えば、課金要素や広告が増えることがあれば、ゲーム体験は大きく損なわれる。

 この点についてハビエル氏は、「私たちは、Niatnicが持っているビジョンに共鳴した。そういう意味で、私たちの目標は、何かを変えることではなく、逆にエンパワーをしたい」と話す。例えばポケモンGOについては、開発チームは一切変わらず、今後もポケモンGOのチームが主導権を持って開発を進めていく。スコープリーの買収によってゲームの体験が変わることはなく、継続していくことを、ハビエル氏は強調する。

エド・ウー ポケモンGOのチームリーダー、エド・ウー氏

 ポケモンGOのチームリーダー、エド・ウー氏に、Pokemon GO Fest 2025の会場でお話をうかがったところ、スコープリーが現在の開発チームを尊重していることを強調する。「スコープリーは全面的にNianticのチームを信頼している。そこに自分たち(スコープリーのスタッフ)が加わって一緒にやろうというわけではない」というエド氏の言葉からも、開発体制にプラスの影響はあれど、マイナスの影響はないことが分かる。

 「私はNianticのゲームに10年関わっているが、今の姿になったのは、これまで関わってくれたチームのおかげであり、同じチームを進化させ続けることで、今までのようにすてきなものができると信じている」(エド氏)

 スコープリーの買収によって、運営元や開発元、ましてや開発チームが変わるわけでもない。あくまで「オーナーが変わる」という関係性であることを、Nianticの広報担当者も強調する。この点は誤解されやすいそうで、Niantic側もユーザーに対して丁寧に説明していく必要がありそうだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月25日 更新
  1. 3COINSで1万1000円の「プロジェクター」を試す 自動台形補正、HDMI入力、Android OS搭載で満足度は高め (2025年12月24日)
  2. “やまぬ転売”に終止符か 楽天ラクマが出品ルール改定予告、「健全な取引」推進 (2025年12月23日)
  3. iPhoneのロック画面で「カメラが起動しちゃった」を防げるようになった! その設定方法は? (2025年12月24日)
  4. 関東地方で5G通信が速いキャリアは? ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルでICT総研が比較(2025年12月) (2025年12月24日)
  5. 「楽天カード」は2枚持てる? 2枚持ちのメリットや注意点を解説、持てない組み合わせもあり (2025年12月23日)
  6. 「HUAWEI WATCH GT 6」レビュー:驚異のスタミナと見やすいディスプレイ、今買うべきスマートウォッチの有力候補だ (2025年12月24日)
  7. 若いiPhoneユーザーの間で「クリアケース」に人気が集まっている理由 すべては“推し”のために (2025年12月25日)
  8. mineo料金プラン改定の真相 最安狙わず「データ増量+低速使い放題」で“ちょうどいい”を追求 (2025年12月25日)
  9. CarPlay/Android Auto対応「OttoAibox P3 Pro」発売 従来機から操作性向上、2画面表示も可能 (2025年12月23日)
  10. メルカリで詐欺に遭った話 不誠実な事務局の対応、ユーザーが「絶対にやってはいけない」こと (2025年04月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー