性能を底上げし、耐久性も強化したAQUOS wish5に対し、AQUOS R10は、AQUOS R9のマイナーアップデートにも見える。プロセッサを「Snapdragon 7+ Gen 3」に据え置いたことは、こうした見方をする一因といえる。一方で、これは「お客さまがそんなに意識していない」(中江氏)からだという。特に10万円前後のミッドハイにカテゴライズされる端末では、「そこが勝負ではなくなっている」(同)という。
ユーザーが端末を購入する際、「今までAQUOSを使っていたユーザーは、まずAQUOSが選択肢になる」(同)。次に重視されるのは、「今だとカメラ」(同)だ。一定程度の性能になると、「100%の性能を使い続けられるシーンはほぼなく、プロセッサは抑え気味にしているほど」(同)になる。
そのため、AQUOS R10では、冷却を担う「ベイパーチャンバーに力を入れ、プロセッサを変えなくても性能が上がるようにした」(同)。マーケティング的な観点でプロセッサを刷新するのではなく、その性能を引き出せるようなアップデートを図ったというわけだ。
また、カメラもサイズこそ1/1.55型と変わっていないが、センサー自体は一新。AQUOS R9 proに搭載していた、周囲の光を測定する14chスペクトルセンサーを備え、より肉眼に近い色合いで撮れるようになった。また、このモデルも引き続きカメラはライカが監修しており、ミッドハイモデルながら、高い画質を実現している。
逆に、プロセッサだけでなく、あえて本体もAQUOS R9とサイズをそろえた。中江氏によると、「カメラ周りのサイズもそのままで、過去のカラーバリエーション用に出したケースを合わせて使えるようにして、(組み合わせを)より楽しめるようにした」という。
シャープ自身も海外進出はしているものの、上位のグローバルメーカーと比べると販売数は少ないため、ケースのバリエーションも乏しくなる。iPhoneと比べ、どうしても見劣りする部分だ。Androidでも、海外も含めた母数が多いと、海外にある豊富なケースを輸入すれば済むため、品ぞろえは有利になる。こうした弱点を補うため、シャープは2機種のサイズをそろえて母数を増やす手を打ったといえる。
先に挙げたように、AQUOS R9でのリニューアルは成功し、売れ行きも上向いた。この成功事例を踏襲するため、「社内外で評判がいい」(同)デザインをあえて残した側面もある。「デザインは一緒で、中身を進化させ、完成度を上げる方向にした」(同)というわけだ。
やや保守的な姿勢にも感じるが、こうした戦術を取れるのは、「社内的にワクワク枠と呼んでいる」(同)という「pro」モデルがあるからだろう。AQUOS R9 proではカメラに特化した端末に仕上げたが、カメラに限らず、「チャレンジ枠としてお客さまを驚かせるように作る」(同)ことをコンセプトにしているという。ラインアップの構成を見直したことで、冒険する端末と、堅実に進化さて確実に売る端末のメリハリがより強くなった。リニューアル2年目に登場するAQUOS R10は、その試金石になりうる1台といえそうだ。
「AQUOS R10」はAIで半歩先の体験を、「AQUOS wish5」は幅広い世代に訴求 “深化”したシャープのスマホ戦略
約10万円〜の新フラグシップ「AQUOS R10」発表 ピーク輝度3000ニトの明るいディスプレイ搭載、スピーカーも強化
約3万円のエントリースマホ「AQUOS wish5」発表 振動で鳴る「防犯アラート」搭載、80℃の熱湯にも耐える防水
「AQUOS R9 pro」と「らくらくスマートフォン」 真逆の新機種から見える、日本メーカーの“生き残り戦略”
「AQUOS R9」を3週間使って感じた真価 “生活に溶け込むスマートフォン”の理想形だCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.