シャープの「AQUOS R10」「AQUOS wish5」で“進化の方向性”が違う理由 iPhoneからのユーザー獲得にも意欲石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2025年06月07日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

AQUOS wish5は、若年層の攻略や海外への拡大を狙う役割も

 フルモデルチェンジの結果として、AQUOS R9はその前の「AQUOS R8」と比べて「3倍売れた」(中江氏)という。シャープは、AQUOS R9の投入にあたって、Snapdragon 8シリーズの採用をやめ、ハイエンドからミッドハイにカテゴリーを変更することで価格を落としているため、純粋な比較は難しいが、「pro」まで含めた場合でも「1.4倍ぐらいだった」(同)といい、販売数の増加に貢献した。

 数だけでなく、ユーザーの中身も少しずつ変わっているようだ。中江氏は、「デザイン単体での評価はなかなか難しい」と前置きしつつも、「分かりやすいところでは、女性比率が少し上がった」と話す。男女比だけでなく、「若干だけ若い、30代のユーザーが取れるようになっている」(同)という変化もあった。

AQUOS wish5 2モデルとも、前作からデザインを一新。売れ行きが向上しただけでなく、購入するユーザー層にも変化の兆しがあるという

 一方で、「僕らの『若い』の定義は少し違う」ともいう。これは、「20代がほとんどiPhone」だからだ。「思っているよりもコミュニティーが狭く、なかなかそこにアプローチするのが難しい」(同)という。実際、学生の間ではiPhoneのシェアが突出して高いというデータもあり、シャープもこの世代の攻略には苦戦している。

 対策としてAndroid陣営のメーカーが取り組んでいるのが、「そこより下の層を狙いにいくこと」(川井氏)。最初のスマホとして親に買ってもらい、「そっち(iPhone)に切り替わらないようにする」(同)という地道な戦略だ。より下の年代に普及させることで、時間の経過とともにiPhoneのシェアを崩そうとしているといえる。AQUOS wish5に、ファーストスマホとしての機能を盛り込んできたのは、そのためだ。

AQUOS wish5 調査会社MMD研究所が24年10月に発表した、24年9月の年代別OSシェア。10代、20代は突出してiOSの比率が高いことが分かる

 もう1つの市場としてAQUOS wishシリーズで重視しているのが、海外だ。AQUOS wish4でディスプレイを6.6型まで大型化したのは、海外市場の動向を踏まえてのこと。海外では、「大きい画面の方がいい」(パーソナル通信事業部 商品企画部 清水寛幸氏)傾向があるからだ。実際、AQUOS wish4を6.6型にしたことで、「グローバルで受け入れられている」(同)という。

AQUOS wish5 AQUOS R10、wish5ともに、海外での販売も行う。wish5は、ディスプレイの大型化が海外市場で評価されたという

 リフレッシュレートの向上など、ディスプレイの強化を図った背景にはこうした市場で優位性を保つ狙いもあるといえる。また、AQUOS wish5とAQUOS R10は、内蔵されるフォントを刷新。日本語に、モリサワの「UD学参丸ゴシック」を採用しているだけでなく、中国語の繁体字フォントも「文鼎UD晶熙黒體」に変えている。ここにも、ファーストスマホや海外への拡大を狙うシャープの意図が込められている。

AQUOS wish5 日本語だけでなく、繁体字の中国語フォントも刷新した。台湾などの繁体字を使うマーケットを強く意識していることが分かる

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