フルモデルチェンジの結果として、AQUOS R9はその前の「AQUOS R8」と比べて「3倍売れた」(中江氏)という。シャープは、AQUOS R9の投入にあたって、Snapdragon 8シリーズの採用をやめ、ハイエンドからミッドハイにカテゴリーを変更することで価格を落としているため、純粋な比較は難しいが、「pro」まで含めた場合でも「1.4倍ぐらいだった」(同)といい、販売数の増加に貢献した。
数だけでなく、ユーザーの中身も少しずつ変わっているようだ。中江氏は、「デザイン単体での評価はなかなか難しい」と前置きしつつも、「分かりやすいところでは、女性比率が少し上がった」と話す。男女比だけでなく、「若干だけ若い、30代のユーザーが取れるようになっている」(同)という変化もあった。
一方で、「僕らの『若い』の定義は少し違う」ともいう。これは、「20代がほとんどiPhone」だからだ。「思っているよりもコミュニティーが狭く、なかなかそこにアプローチするのが難しい」(同)という。実際、学生の間ではiPhoneのシェアが突出して高いというデータもあり、シャープもこの世代の攻略には苦戦している。
対策としてAndroid陣営のメーカーが取り組んでいるのが、「そこより下の層を狙いにいくこと」(川井氏)。最初のスマホとして親に買ってもらい、「そっち(iPhone)に切り替わらないようにする」(同)という地道な戦略だ。より下の年代に普及させることで、時間の経過とともにiPhoneのシェアを崩そうとしているといえる。AQUOS wish5に、ファーストスマホとしての機能を盛り込んできたのは、そのためだ。
もう1つの市場としてAQUOS wishシリーズで重視しているのが、海外だ。AQUOS wish4でディスプレイを6.6型まで大型化したのは、海外市場の動向を踏まえてのこと。海外では、「大きい画面の方がいい」(パーソナル通信事業部 商品企画部 清水寛幸氏)傾向があるからだ。実際、AQUOS wish4を6.6型にしたことで、「グローバルで受け入れられている」(同)という。
リフレッシュレートの向上など、ディスプレイの強化を図った背景にはこうした市場で優位性を保つ狙いもあるといえる。また、AQUOS wish5とAQUOS R10は、内蔵されるフォントを刷新。日本語に、モリサワの「UD学参丸ゴシック」を採用しているだけでなく、中国語の繁体字フォントも「文鼎UD晶熙黒體」に変えている。ここにも、ファーストスマホや海外への拡大を狙うシャープの意図が込められている。
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