米Appleは、6月9日(現地時間)に開発者向け会議WWDCの基調講演を開催した。例年通り、ここでは各デバイスに搭載される最新OSが発表されている。それぞれのバージョンが年号で統一され、次期iOSは「iOS 26」になる。同日から、デベロッパー用のβ版が配布されており、7月にはパブリックβも登場する見込みだ。正式版は、秋に登場する。
iOS 26は、他のOSと統一したデザインの「Liquid Glass」を採用しているのが特徴だ。単純なデザイン変更ではなく、iPhoneならではの強みを生かしたユーザーインタフェースになっており、Android陣営との差別化も図りやすい点は強みになる。その一方で、発表直後からAIの出遅れ感を指摘する声も相次いでいる。
確かに、一部の機能はAndroidの後追いになっている他、AIモデル自体の大幅なアップデートも発表されていない。Open AIやGoogleが次々と新しいAIモデルを投入しているのとは、対照的だ。ただ、AppleのビジネスモデルやApple Intelligenceを投入した目的を考えると、こうした指摘はやや的が外れているような印章も受ける。その理由を解説していきたい。
Appleは、それぞれのデバイスに搭載されるOSのナンバリングを、「26」に統一した。バージョンがバラバラになっていたのを刷新したことで、いつ登場したOSかが判断しやすくなった。この背景には、初めて全てのOSでデザインを統一したことがある。「Liquid Glass」と呼ばれるUI(ユーザーインタフェース)がそれだ。iOS 26も、このLiquid Glassを元にデザインされている。
Glassという名の通り、ボタンやメニューなどのパーツが半透明になり、背景にあるコンテンツが見えるようになった。そのUIが、操作に合わせて変形していく。Glassの前に、液体を意味するLiquidとついている理由だ。このデザインによって、コンテンツがより際立つようになった他、操作も直感的になっている。ユーザーのやりたいことを妨げないUIといえそうだ。
単純なデザイン変更と思われがちだが、筆者には、Liquid GlassにAppleの立ち位置が色濃く反映されているように見えた。半透明で背景が見えるといっても、本物のガラスではないため、プロセッサが常時、背景に合わせて見え方を演算して映像を作り出している。しかも、それが動くと、瞬時に再計算が必要になる。端末のパワーが必要になるというわけだ。
これができるのは、iPhoneがハイエンド端末だけしかないからだ。2025年2月に登場した「iPhone 16e」は、その価格からミッドレンジに分類されることもあるが、プロセッサは他のiPhone 16と同じ「A18チップ」。処理能力は非常に高く、スマホの中ではトップクラスの性能を誇る。価格のバリエーションはあるものの、iPhoneにはエントリーモデルやミッドレンジモデルはない。
そのため、Liquid Glassのように負荷がかかりそうなユーザーインタフェースを採用しやすい。これがAndroidだと、プロセッサのバリエーションは多岐にわたる。Qualcommだけでも、Snapdragonは4シリーズから8シリーズまである。Snapdragon 8シリーズではしっかり動いても、Snapdragon 4シリーズだとカクカクしてしまうというのでは、OS共通のデザインとして採用するのが難しい。
言い換えるなら、自社でプロセッサの設計を手掛け、それを自社の端末に搭載し、かつプレミアム帯の端末にだけに限定されているAppleならではのデザインになっているということ。iOSのUIは模倣されやすいが、Liquid Glassのような仕掛けは単純にキャッチアップするのが難しい。Android陣営との差別化になるといえる。
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