「Xiaomi Buds 5 Pro」レビュー:これぞ新次元のサウンド、Xiaomi 15/15 Ultraユーザーは“マストバイ”な理由(1/2 ページ)

» 2025年07月13日 10時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]

 立て続けにスマートフォンを日本でも投入し、この1年で一気に存在感を示したXiaomi。実はワイヤレスイヤフォンも主力製品だ。

 日本向けに1000円台の製品から2万円クラスの製品まで、幅広く10機種以上を展開している。今回は2025年3月に発売された同社の最上位イヤフォン「Xiaomi Buds 5 Pro」を発売日から3カ月使ってみたのでレビューしたい。

高音質を実現する3ドライバー構成 大容量のデータ伝送も可能

 Xiaomi Buds 5 ProはXiaomiが展開するワイヤレスイヤフォン。音や機能面にも妥協のない最上位モデルであり、価格(税込み)は通常版で2万4980円、Wi-Fi版で2万7980円と2万円台に設定されている。1万円以下の機種が中心のXiaomiのイヤフォンの中では群を抜いて高価だが、3万円を超えるAppleの「AirPods Pro」よりは安い。

Xiaomi Buds 5 Pro レビュー
Xiaomi Buds 5 Pro レビュー 今回レビューするものはWi-Fi版。専用カラーのトランスルーセントブラックだ

 Xiaomi Buds 5 Proは、高音質を提供するために妥協のない構成に仕上げた。音響部はそれぞれ独立したアンプシステムを備える3ドライバー構成を採用している。端的にいえば、片耳あたり3つのスピーカーが入っている豪華な仕様だ。

 低域は11mmのダイナミックドライバー、中高音域は滑らかなサウンドを得意とする平面ドライバー、超高音域の再生に優れる6mm径のPTZ(ピエゾドライバー)がそれぞれ担当する。得意な音域ごとに異なる仕組みのスピーカーを割り当てるトリッキーな構成だが、これによって幅広い帯域を再現できるとしている。

 サウンドチューニングは、Harman Golden Ear Teamによるマスターチューニングを採用。深い低音とより満足感の高い音楽の表現を可能にし、真に高品質なサウンドを実現するという。

 そんなXiaomi Buds 5 Proの真骨頂は最新の伝送技術にある。本機種の対応コーデックはSBCとAACに加え、最大2.1Mbpsで伝送できるaptX Adaptiveに対応する。

 ここで「最大2.1Mbpsで伝送可能なaptX Adaptive」に引っ掛かる。従来のBluetoothの伝送容量は上限2Mbpsで、帯域の全てを音声に割り当てることはできない。実際、現在主流のaptX Adaptive(Losslessモード)の上限は1.2Mbpsだ。

 それでは、なぜ2Mbpsを超える情報量を伝送できるのか。Xiaomi Buds 5 Proの場合、通常のaptX Adaptiveに加え、次世代規格のLE AudioをベースとしたaptX Adaptive LEにも対応している。

 LE Audioとは、現在のBluetoothオーディオに代わる次世代の音声規格。従来に比べて伝送容量が増加しており、低遅延、低消費電力なことも特徴。aptX Adaptive LEは、そんな次世代のBluetoothオーディオに準拠した「新しいaptX Adaptive」となる。従来よりも高音質なコーデックという認識でよい。

 そして最上位のXiaomi Buds 5 Proは「Wi-Fi版」となる。言われてみれば、Bluetoothのイヤフォンなのに「Wi-Fi」の表記とは何だろうか。メーカーサイトに記載はないが、これは「Qualcomm XPAN」のことを指す。

 XPANとは「Qualcomm Expanded Personal Area Network Technology」の略称であり、Qualcommが開発したWi-Fiの電波にBluetoothの音声プロトコルを載せて伝送させる技術だ。

 Wi-Fi通信にSnapdragon Sound Lossless(旧:aptX Lossless)の音声プロトコルを載せることで、最大24bit/96kHz音源のロスレス伝送をサポート。従来のBluetoothでは難しかった大容量かつ低遅延の通信を可能にした。

 XPANに対応するXiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiでは、最大4.2Mbpsの情報を伝送可能。これはLDACコーデック(0.99Mbps)の約4倍の情報量を伝送できることになる。

 Qualcomm XPANの対応機種や要件ははどの程度あるのだろうか。MWC BarcelonaにてQualcommの担当者に「XPANの対応機種」について確認したところ、今後対応機器は増えるとしつつも現時点ではスマートフォン側にSnapdragon 8 EliteもしくはSnapdragon 8 Gen 3。イヤフォン側にはSnapdragon S7 Pro Gen 1チップセットが必須だという。

 今回のXiaomi Buds 5 ProはXiaomiとQualcommの長期にわたるパートナー関係が背景にあり、同社向けにいち早く供給したSnapdragon 8 Elite同様、イヤフォン向けのチップもいち早く供給しているとした。

Xiaomi Buds 5 Pro レビュー Xiaomi Buds 5 Pro Wi-FiはQualcomm製の「Snapdragon S7 Pro Gen 1」というチップセットが採用されている
Xiaomi Buds 5 Pro レビュー
Xiaomi Buds 5 Pro レビュー XPANはMWC Barcelonaでもデモンストレーションが行われていた。ベストエフォート方式なのでビットレートの固定はできないが、実測3Mbpsの数字を確認できた

圧倒的な情報量のサウンド ワイヤレスイヤフォンの新次元を体験

 サウンドハードウェアに加え、無線回りも最新技術で固めたXiaomi Buds 5 Pro 。スマートフォンはXiaomi 15 Ultraに接続し、Wi-Fiモードで使用することが大半だった。

 Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiのサウンドクオリティーはワイヤレスイヤフォンにおいて「新境地」と評価できる高いものと感じた。2万円台でこの音が楽しめるなら、大多数の方は満足できるはず。これより上を求めるなら、ワイヤレスイヤフォンというカテゴリーで探すのはかなり難しくなる。

 2.1Mbpsで伝送できるaptX Adaptive LEでも想像以上に高いレベルのサウンドであり、ワイヤレスイヤフォンの中ではかなり上位のサウンドと感じる。高域は平面ドライバー+ピエゾドライバーの構成だが、サウンドに変なクセもなく、気持ちのいい抜けのよさを体感できる。

 ボーカルの滑らかさや再現度合い、低域の量感やレスポンス共にワイヤレスイヤフォンの中では高いレベルと感じた。特段どこかの音域に極端なトゲやピークを感じることもなく、非常に耳当たりの良いサウンド。

 特に低域の再生能力はXiaomiのイヤフォンの中ではトップレベル。ズンズンとリズミカルな低域はもちろん、土台のように腰の据わった低いところまでしっかり出ている。ワイヤレスでここまでうまく鳴らせるのであれば上出来だと考える。

 Wi-FiモードのQualcomm XPAN接続では、上記の音にもう一枚ベールをはがしたような解像感の高さ、キラキラとまぶしいくらいの情報量を味わえる。ホールのような広い音場表現と細かい音の再現度も加わり、もう二段階くらい上のサウンドに化けてしまう。

 この音はワイヤレスオーディオでは異次元クラス。本当の意味で「有線クラス」を名乗れるレベルだと考える。XPANは実効値で3Mbpsクラスの情報を伝送できているので、1.411MbpsのCD音源なら無圧縮でも余裕で伝送できる。

Xiaomi Buds 5 Pro レビュー Xiaomi 15 Ultraとの組み合わせは圧巻のサウンドだ

 ディメンショナルオーディオ(空間オーディオ)も進化。これは対応音源以外でも、サウンドエフェクトとして既存の音源にも上乗せできるのだが、従来モデルに比べて安定性が大きく向上している。

 こちらをオンにするとサウンドステージが広がり、よりライブ感のあるサウンドに変わる。Appleのように、ヘッドトラッキングを用いた空間オーディオにも対応している。顔の向きに合わせた空間表現も可能だ。

 ここまで聴いてきたXiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiのサウンドクオリティーはかなり高く、スマホ屋のイヤフォンとしてはかなり上位のサウンドと感じる。卓越したサウンドハードウェア、Qualcomm XPANによる圧倒的な帯域量を武器にしつつ、2万円台のコストパフォーマンスで挑んできた。最新技術の塊をお手頃価格で提供する実にXiaomiらしい製品だ。

 加えて接続性もかなり良好だ。XPANではLDACの3倍以上の容量を伝送しながら、人混みでも安定して通信できた。渋谷などの人混みでは音質を犠牲に接続性を優先する挙動こそするものの、音切れは起こらなかった。

 一方で2.1MbpsのaptX Adaptive接続とWi-FiモードのXPANでは、同じイヤフォンでもサウンドチューニングが変わる印象を受けた。このあたりの一貫性のなさは気になるところであり、メーカーが目指した「最高の音」が分かりにくいと感じた。また、Wi-Fiモードではソフトウェアアップデート等の一部機能が利用できなくなる。一部設定の変更はBluetoothモードで接続する必要がある。

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