シリーズ2機種目となるCMF Phone 2 Proだが、先代のCMF Phone 1はどちらかといえば、テストマーケティング的な意味合いもある日本投入だった。おサイフケータイはおろか、NFCも搭載しておらず、さらには主要キャリアのプラチナバンドにも非対応だったからだ。仕様的にはグローバル版をそのまま日本に持ってきた形で、周波数対応のローカライズすらされていなかった。
それでもIIJmioなどが取り扱い話題にはなったが、Nothing Japanの代表であるマネージングディレクターの黒住吉郎氏は「反省点があった」と語る。おサイフケータイやNFCは使う人、使わない人が分かれるため、不要な人にとっては問題ないかもしれないが、プラチナバンド非対応だと最悪の場合、通信がつながらない地域や場所が出てきてしまう。日本市場で本格的に戦っていくには、かなり厳しいスペックだったといえる。
その反省点を生かし、CMF Phone 2 Proには日本市場向けのフルカスタマイズを施している。プラチナバンド対応はもちろんのこと、NFCを搭載し、おサイフケータイにも対応。さらには、先代モデルで非対応だったeSIMもサポートしており、デュアルSIM/デュアルスタンバイで利用できるようになった。こうした機能への対応は、後述する楽天モバイルの採用にもつながっている。
黒住氏は、「周波数サポートや日本で必要な機能を拡充するのが私のミッションだった」と語っていたが、CMF Phone 2 Proは、その成果が表れた1台だ。これは、Nothingが日本市場の攻略に手応えを感じ、さらにアクセルを踏んでいることの証左ともいえる。ローカライズを徹底したことで、日本のユーザーにとってより買いやすい端末になった点は高く評価できそうだ。黒住氏も、「自信を持って投入できるモデルに仕上がった」と胸を張る。
一方で、日本向けのカスタマイズをしていることもあり、発売時期は海外に比べ、やや遅れている。同機種は、海外で4月に発表されており、欧州や米国では5月に発売済み。3カ月ほど、発売が後ろ倒しになっている。また、周波数もプラチナバンドはサポートしたものの、ドコモが使う5Gの「n79(4.5GHz帯)」には非対応。ドコモ回線やドコモ回線を借りるMVNOでは、5Gの実力を十分発揮できない恐れもある。
大手メーカーだとこのタイムラグを縮めているところはあるが、Nothingはまだ規模も小さく、日本での検証に時間がかかる側面があるという。フラグシップモデルの「Nothing Phone (3)」が現時点で発売予告にとどまっているのも、同様の事情があると推察できる。この時間を縮め、海外での“熱”が冷めないうちに日本に展開していける体制を作れるかは、今後の課題といえる。
また、対応バンドについては、「カスタマイズを(さらに)入れればできるが、われわれのためだけにやるとなるとコスト的なところが厳しい」(黒住氏)。プラチナバンドはMediaTek側のモデムが対応することでカバーできているが、n79のように日本の中でもさらに特殊な周波数になってくると、追加対応が必要になり、コストの上乗せが大きくなってしまう。
特にCMF Phoneのようなコストパフォーマンスを売りにする端末では、価格転嫁は致命傷になりかねない。Pixelのようにドコモが一定数コミットしたり、海外でn79が必須になったりしてこない限り、対応は難しいのかもしれない。
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