英Nothing Technologyは、4月にミッドレンジモデルの最新作となる「Nothing Phone (3a)」を発売した。同社は2020年に設立されたばかりのスタートアップだが、日本上陸は早く、スマホの初号機「Nothing Phone (1)」から展開を開始。2024年に発売された「Nothing Phone (2a)」ではローカライズも進め、同社製品として初めておサイフケータイに対応した。
このNothing Phone (2a)の後継機にあたるのが(3a)だ。Nothing Phoneの特徴的なデザインは踏襲しながら、ベースとなるスペックを底上げし、新たに望遠カメラも搭載。向上した処理能力を生かし、AIでスクリーンショットや写真などを保存、分析し、ユーザーに行動を提案する「Essential Space」という新機能にも対応した。このEssential Spaceに情報をワンクリックで保存するため、側面には「Essential Key」を備える。
正統進化を遂げたNothing Phone (3a)だが、これに合わせて販売面も強化している。新たに楽天モバイルでの取り扱いが始まり、同社の100店舗には実機が展示される。日本でMNOがNothingのスマホを販売するのは、これが初めて。その規模を徐々に拡大している様子がうかがえる。では、同社はどのような戦略で日本市場を攻略していくのか。Nothing Japanでマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏に話を聞いた。
―― グローバルでは「Nothing Phone (3a)Pro」もありますが、日本ではNothing Phone (3a)のみの展開になりました。この狙いを教えていただけないでしょうか。
黒住氏 日本のお客さまに対して一番強みを出せるものは何なのかを考えています。Nothingは、スペックとプライスのバランスがあった上で、どうユニークなデザインや体験を打ち出せるかという提案しています。それを訴えることができるプライスポイントを考えると、Nothing Phone (2a)の後継である3aはドンピシャの1台でした。2aのときからFeliCaは搭載していますし、(市場投入の)優先順位を決める中では3aの優先度が一番高くなっていました。
SNSでもProはないのかという話が出ていましたが、これはわれわれもすごく検討しました。ただ、お客さまを見たときにフィットするプロダクト、言い換えるならお客さまがメリットや魅力を感じやすいものは3aでした。Proもペリスコープカメラが付いていて強力なプロダクトであることは否定しませんが、逆に少し(デザインの)アクも強い。土台という意味で、3aはNothingのデザインDNAも感じやすいのではないでしょうか。
―― Proはありませんが、Nothing Phone (3a)も性能面はかなり底上げされたように感じました。
黒住氏 いろいろな面が底上げされていますが、顕著なのはカメラだと思います。われわれは参入から4年目のスマホメーカーで、最大限努力はしてきましたが、ユーザーからの評価として、「カメラがいいからNothing Phoneを買おう」という人はあまりいなかった。そこは意識を変えています。お客さまのライフスタイルを見ると、やはりカメラは(購入の)理由になっている。だったら、カメラで買っていただいてもいいのではないかと考え方が変化しています。
そこで、Nothing Phone (3a)ではカメラに抜本的なてこ入れをしました。分かりやすいところで言えば、2眼から3眼になって望遠レンズが入り、ウルトラズームを入れれば30倍まで拡大できます。Qualcommにご協力いただきながら、われわれ自身も「TrueLens Engine 3.0」を入れて、しっかり性能を引き上げています。
メインカメラのセンサーはNothing Phone (2a)と同じですが、型番にDLもついています。これはDeep Learningの略で、数百万通りシーンを機械学習で入れ、シーンに合わせた最適化がかけやすくなっています。
―― 新興企業ということでリソースも限られていると思いますが、なぜこのようなことができたのでしょうか。
黒住氏 環境が整ってきているということはあります。また、Nothingはコラボレーションも大事にしています。テクノロジーをやっている企業の中には、「Not Invented Here」ということで自分たちが開発したものでないと使わないところももありますが、いろいろな方々とコラボレーションすることで、自分たちだけではなしえないことができます。
例えば、カメラでいえば「Ultra HDR」はQualcommが持っている技術とわれわれが持っている技術を掛け合わせることで、より良いものになる。リソースはそこまでありませんが、やりたいことは分かっているので、他社と一緒にどうやっていけばいいのかに力を注いでいます。昔は製造委託するだけでもハードルがありましたが、今はそこだけでなく、キーコンポーネントの部分でもコラボレーションが実現できています。
―― チップセットもQualcomm製になり、処理能力が上がりました。
黒住氏 MediaTek製のものが悪いわけではなく、Nothing Phone (2a)の世代では最適な選択でしたが、今回はQualcommに変わり、その得意な部分は生かせています。CPU、GPUの性能だけでなく、熱効率が上がりました。バッテリーの利用効率にも、(Qualcommは)一日の長がありますし、オンデバイスAIにもかなりの投資をしています。
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