―― ブルーは楽天モバイル限定という扱いですが、これはグローバルにもある色なのでしょうか。
黒住氏 はい。グローバルにはあります。実はNothingのマーケットやビジネス展開で一番大きいのがインドで、そのためにブルーをやっていました。インドはクリケットの国で、クリケットのチームカラーにブルーがありました。CMF Phone 1や「CMF Buds Pro 2」でもブルーを展開しています。なぜブルーかというと、もともとインドのクリケットブルーだったんです。
最初のサンプルではもっと濃いブルーでしたが、だんだんと色がなじみやすいものになって、最終的にできたのがこのブルーでした。これは日本人も好きな色だということで、「ぜひともやりたい」と言ってごり押しで本社に言って取ってきました(笑)。「本当に売れる?」と聞かれましたが、「絶対に出る」と。実際、楽天モバイルに見せたときにもいい色だということで限定になりました。
―― インド向けというのは意外でした。
黒住氏 インドはNothingのようなプレミアムなブランドが受け入れられやすい市場で、プレミアムな製品にあこがれている人も多い一方で、収入格差も大きい。Nothingは適正価格で手が届きやすいということで、マーケットシェアも大きく伸びています。もう1つの理由はOnePlusです。われわれのファウンダーのカール・ペイもそうですが、R&Dをやっている人物もOnePlus出身です。OnePlusはインドで強く、Nothingにもそのノウハウがあります。
―― 今後、楽天モバイル以外にキャリアビジネスを拡大していく予定はありますか。
黒住氏 他のキャリアとのビジネス展開は否定もしませんし、肯定もしません。否定すると成長が止まってしまいますが、肯定すると本当にレディなのかとなってしまう。今は楽天モバイルと一緒に、ベストなものをお届けしていきます。
―― MVNOでは、IIJも早くから取り扱っていました。
黒住氏 早いタイミングで一緒にやらせていただきましたし、MNPでキャンペーン的に安くしてもらうということもありました。今後もいい関係は続けていきたいですね。僕らの中には、キャリアビジネスだからこう、SIMフリーだからこうという概念があまりありません。SIMフリーをベースにしながら、どうキャリアやMVNO、オープンマーケットで販売していくかというように考えています。
―― キャリアやMVNO以外の販路を強化するお考えはありますか。
黒住氏 D2C(Direct to Consumer)のオンラインチャネルは絶対的に強化していきたいと考えています。お客さまとダイレクトなつながりを持つことで、コミュニティーの一員になっていただきやすい。われわれもお客さまとつながることができます。
―― セレクトショップなど、通常のスマホメーカーでは考えられない場所でも販売していました。
黒住氏 今も一部、ライフスタイル系の店舗で展示しています。家電店では、蔦屋家電もあります。アンテナ感度の高い方がいらっしゃるお店なので、そういったところで展示し、触っていただくことで伝搬力も上がっていきます。
今回は、初めて交通広告にも挑戦しました。有楽町では、ビックカメラの壁に広告が出ていて、駅から見ることができます。秋葉原のヨドバシの入口にも出ています。ゴールデンウィークには、渋谷のスクランブル交差点でもやる予定です。
―― 最後に、今回もCommunity Editionはあるのでしょうか。
黒住氏 第2弾のプロジェクトは既に始まっています。出すか、出さないかで言うと、出します。前回は発表時に年内をめどにという言い方をしていましたが、今年(2025年)も同じような形で進めています。ただし、今回はアクセサリー群も考えてくださいというのが、新たなお題目として増えています。
#9取材を終えて
デザインに注力しつつも、ローカライズは手薄だったNothingだが、2024年のNothing Phone (2a)でその印象は変わりつつある。おサイフケータイという機能的なローカライズはもちろん、オープンマーケットで主戦場になっているミッドレンジモデルで、コストパフォーマンスに優れていたところも今の日本市場にフィットしていると感じた。Nothing Phone (3a)は、その長所がさらに強化されているように見える。
単なるミッドレンジモデルに終わらず、AIを上手に活用し、Essential Spaceのような機能を搭載してきたところもNothingらしさとして評価できる。黒住氏が語っていたように、AIを搭載したスマホは多数出ているが、得意分野であるユーザーインタフェースやユーザー体験をしっかり磨いているところはNothingならでは。没個性になりがちなミッドレンジモデルの中で、個性を打ち出せている。
急成長している楽天モバイルが取り扱うことで、認知度も上がっていく可能性がある。一方で、とがったコンセプトや濃密なコミュニティーとメジャーさをどう両立させていくかは今後の課題になるかもしれない。インディーズで活躍していたバンドがメジャーデビューするのに近いが、あまりに売れ筋ばかりだと、当初からのファンが離れていく恐れもある。インタビューではハイエンドモデル投入への期待も語られていたが、日本でも、数を追わない端末では、よりNothingらしいコンセプトを強く打ち出していく必要がありそうだ。
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