つくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道は8月31日、クレジットカードやデビットカードなどによるタッチ決済を活用した後払い乗車サービスの実証実験を始めた。三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit」を採用し、秋葉原、浅草、北千住、流山おおたかの森、つくばの5駅で導入した。
利用者は、タッチ決済対応のカード(クレジット・デビット・プリペイド)や、同カード設定済みのスマートフォンを利用して5駅の改札を通過できる。具体的には、乗降時に5駅改札機に設置された専用リーダーにカードや端末をかざすだけで通過でき、事前に紙の切符を購入する必要はない。運賃は通常の大人運賃が適用され、利用できるブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯となる。
実証実験は、つくばエクスプレスとして初めての取り組みとなる。首都圏新都市鉄道の広報は、「開始にあたり混乱を避けるため、平日よりも乗車人員数が少ない日曜日を候補日としました。本年8月は開業20周年を迎えることから、一連の記念イベントが終わった後に開始することとし、8月31日を初日としました」と、実証実験開始時期を8月末とした理由について説明する。
対象駅を5駅に絞った理由については、「インバウンドの旅客が多い駅や、他社線との乗換駅、大型商業施設が存在する駅など、利便性の高い条件を含む5駅を実証実験の開始駅として選定しました」としている。
実証対象外の駅での取り扱いについては、「例えば秋葉原駅でタッチ決済を利用して入場し、南千住駅で降車される場合、同駅は対象外のため改札口脇の『ごあんないカウンター』にて駅係員が処理します」と案内している。
実証実験は、まず5駅でスタートし、その後は改札機の更新に合わせて導入駅を順次拡大する計画だ。2026年春ごろまでには全駅で利用できる環境を整える。また、券詰まり問題を引き起こす磁気乗車券の廃止に向けた取り組みの一環として、2026年秋ごろにはQRコードを使った乗車サービスの提供も始める予定だ。
つくばエクスプレスは2025年で開業20周年を迎える。首都圏新都市鉄道は新たな乗車サービスの導入により、次の節目に向けた利用環境の整備を加速させる構えだ。
いわゆるタッチ決済乗車の仕組みを支える「stera transit」は、三井住友カードがGMOペイメントゲートウェイ、GMOフィナンシャルゲート、Visaと共同で構築した決済プラットフォーム「stera」を基盤とする。タッチ決済は、国際標準のセキュリティ認証技術を活用しており、一定額以下の決済なら暗証番号の入力やサインが不要だ。
利便性の向上に加え、感染症対策や訪日客の受け入れ、地域のキャッシュレス推進といった効果も見込まれており、近年では首都圏の鉄道だけでなく、沖縄都市モノレール(ゆいレール)など地方路線への導入も進む。三井住友カードのWebサイトでは、「stera trasintを導入した事業者様によるリアルな声」を動画で掲載しており、その利便性や導入の意義を発信している。
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