povo2.0の「トッピング多すぎる問題」はAIで解決、サブ回線でも価値に磨きを――濱田達弥新社長に聞く(1/4 ページ)

» 2025年10月03日 09時50分 公開
[石野純也ITmedia]

 KDDIの社長に松田浩路氏が就任したのと同時に、その子会社でpovo2.0を運営するKDDI Digital Life(KDL)も新社長として濱田達弥氏を迎えた。同氏は、KDDIで海外事業を手掛けており、直近ではモンゴルでトップシェアを誇る通信事業者のMobiComでも会長兼CEOを務めている。

 2025年4月からpovoは濱田氏がかじ取りをしており、「povo AI」やペイディでの分割払いへの対応など、矢継ぎ早にサービスをアップデートしてきた。一方で、その間、親会社のKDDIも料金プランを大きく変え、マルチブランドの役割を再定義している。メインブランドのauに付加価値をつけていくのと同時に、小中容量を担っていたUQ mobileもより中容量の比重を高めており、「ミニミニプラン」のような小容量プランは廃止した。

 こうした料金プランやブランドの再編は、povoに対してどのような影響があるのか。また、濱田氏は新社長としてpovoをどのようなサービスにしていくつもりなのか。同氏へのインタビューを通じて、その戦略を読み解いていきたい。

povo povo2.0を提供するKDDI Digital Lifeの社長に就任した濱田達弥氏

モンゴルでは約8割がプリペイド契約 povoのトッピングに通じる部分も

―― 4月にKDLの社長に就任されました。改めて直前まで何をしていたのかということや、なぜKDLに来たのかということを教えていただけないでしょうか。

濱田氏 2016年から2022年まで、6年間モンゴルに行っていました。現地にあるグループ会社のMobiComは40数%のシェアを持つトップオペレーターですが、そこでCEOを務めていました。モンゴルというと、どういうイメージをお持ちですか? 草原、牛、馬、羊、遊牧民の皆さんというイメージが強いかもしれませんが、首都のウランバートルは都市化が進んでおり、新しいものをどんどん取り入れていくカルチャーが非常に強い。デジタル化が最も進んでいると言われているエストニアにならい、高度なデジタル化に躍起になっています。

 法規制やレギュレーションも日本よりやや自由度が高く、いろいろなことにチャレンジできる環境でした。モバイル通信だけでなく、フィンテックのアプリを立ち上げたり、モビファイナンスという会社でマイクロローンをやったり、さらにはモビファイナンスの社債を発行し、その裏でブロックチェーンを走らせてアプリ上で販売するということまでやりました。こういった取り組みは、日本で起っているブームよりも前に始めています。

 モンゴルは、隣の国が中国で、最大の貿易国も中国です。中国は、アプリビジネスや社会インフラとしてのアプリケーションで世界の先頭を走っています。そういった中国の隣にいるということは、その波もすぐにやってきます。そういった背景もあり、モバイル通信やそれにバンドルするデジタルサービスの普及という意味で、いろいろな経験を積むことができました。

―― 日本市場との大きな違いはどこにあるのでしょうか。

濱田氏 特筆すべきは、モンゴルはプリペイドがメインの市場ということです。MobiComで抱えていたお客さまの約8割がプリペイドで、2〜3割弱がポストペイでした。そもそも、銀行からの自動引き落としがなく、使った月の翌月に請求書で支払います。

 そこで、ポストペイ型のサブスクにすることでチャーン(離脱)を抑え、サービスをバンドルすることでエンゲージメントを高めるということをやろうとしました。au経済圏のようなMobiCom経済圏を作ろうとしたということです。それにはポストペイが重要だったので、ハイブリッド型を入れ、それが功を奏して今はかなりの率まで上げってきています。

 日本に帰ってからの3年間はグローバルコンシューマ事業開発本部で、主にM&Aや海外事業の立ち上げをやってきました。実はモンゴルにいたとき、ちょうどCircles(povo2.0のシステムを手がけているシンガポールの企業)から提案を受けていたのですが、ビリング(支払い)システムはちょうど更新を進めているところで、変えることができませんでした。ただ、そのときから似たようなことはチャレンジしたいと思っていました。

 2022年、2023年にCirclesのプラットフォームを海外に売っていけないかをチャレンジした時期もありましたが、これはうまく活性化できませんでした。こういった活動を経て、今年(2025年)からグローバルコンシューマ事業がパーソナル事業本部の中に入ったので、そのときの戦略を踏襲しながら、Circlesを使い、KDDIのビジネスモデルを海外に展開するということを考えています。そういった意味では、私自身も少し前からKDLやpovo、Circlesとの付き合いがあり、4月の組織改編で今に至っています。

―― プリペイド型でユーザーに積極的に仕掛けていかなければいけない点は、povoとの共通性があるように聞こえました。

濱田氏 トッピングサービスはまさにその通りです。アプリベース、かつオンラインでお客さまにタッチし、プリペイド型を販売する構造はMobiComと似ています。そういった意味でも親和性がありました。また、私に期待されているのは海外での展開です。povoを中心としたビジネスモデルを海外のオペレーターに直接ソリューションとして販売し、ゆくゆくはハンズオンの形でわれわれの人間も現地に入り、市場に参入していきたいと考えています。

povo モンゴルの通信サービスはpovoとの親和性も高いと語る濱田氏

auやUQ mobileとユーザーを取り合う構造にはしたくない

―― プリペイド型は事業が安定しない側面がありますが、povoもMobiComのようにしていきたいというお考えはありますか。

濱田氏 日本は基本的にポストペイ型マーケットで、KDDIにおいてもau、UQ mobileは完全なポストペイです。逆にpovoにはプリペイド型に近いトッピングがあります。ポストペイ型のプロダクトを作ろうと思えば作れるのですが、それをやってしまうと、ブランドが3つある意味がありません。もっとフレキシブルにサービスをご利用されたい方もいるので、意図的に差別化して、(auやUQ mobileとは)違ったユニーク性を作っていきます。

 ただ、トレンドとして開業当初は1日、1週間といった短い有効期限と少ないデータ容量が多かったのですが、最近では長期間に加えてデータ容量が大きい、300GBや1TBといったお客さまが増えているのも事実です。お客さまの心理として、恐らく365日、12カ月で3万6000円だと、大体月額で3000円ぐらいという見方をして、ポストペイと比較している方が多いのだと思います。実態としては、ピッタリ12カ月間使うことはなく、もっと早く終わる方もいれば、さらにデータ容量を追加することもあるのですが。

―― auやUQ mobileがより大容量寄りにシフトしている中で、povoを小容量の受け皿にしていくというお考えはありますか。

濱田氏 au、UQ mobile側についてのコメントは控えますが、povoのユニーク性は1GBや0.5GBのようなスモールトッピングや、逆に1TBや1.2TBという極端なものも用意しているところにあります。いろいろなセグメントに、いろいろな形で入っていける商材を容易に作れる。そのスタンスを変えるつもりはありません。

 引き続き、幅広いレンジで選択の余地やオプションを持っていただけるようにしていきます。結果的に、auやUQ mobileのユーザーが見直しをする際にpovoで引き続きご利用いただくこともありますが、それがKDDI全体にとってもハッピーな形です。

―― 意図的に、ミニミニプランを使っていたUQ mobileのユーザーを獲得していくということはないのでしょうか。

濱田氏 意図的にということはありません。3ブランドともKDDIで提供しているサービスなので、取り合う構造になるようなことをやるつもりはありません。au経済圏を中心にしたメインブランドのauや、アフォ―ダブルなUQ mobile、さらに細切れにサービスを提供できるpovoということで選択の幅を広げることが重要です。3ブランドで、よりパーソナライズできるという感覚です。

―― 先ほど見直しの際にpovoで引き続きご利用いただくという発言がありましたが、結果としてpovoに移るユーザーもいるということでしょうか。

濱田氏 それは否定しません。料金変更に関するアナウンスがきっかけというより、従前からそれはありました。2021年の段階で大体20〜30%の方が“縦落ち”――つまり、auやUQ mobileからシフトするということがナチュラルにありました。逆に言えば、70%以上の方は新規で他社から加入しています。そういった動向は、開業当初からずっと続いています。

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