―― 最近だと、au PAYへの還元など、au経済圏も意識しているように見えます。ここを深めていくというようなことはありますか。
濱田氏 アプリやWebを見ていただくと分かりますが、povoにはKDDIのロゴを入れていません。これは意図的にやっていて、ビジネスインディペンデンシーを意識しています。もちろん、KDDIの3番目のブランドとしては重要ですが、KDDIを前面に出すとユニーク性が薄れてしまう。ですので、ブランドとしてはKDDIを入れていませんし、auショップで広告を出すというようなこともしていません。
これがプロダクトではどうかというと、例えばauマネ活プランやPontaポイントなど、メインブランドのど真ん中で囲い込んでいくようなものの中にpovoは入っていません。一方で、auフィナンシャルホールディングスとのコラボはしています。これは、グループとして使えという強制力があってやっているのではなく、近いしい関係の中でパートナーの1つとしてやっていて、ある意味ニュートラリティが強い。これをいろいろな形で広げていきたいと考えています。
今、やっているのはそれなりに高額な1年トッピングを、ペイディとのパートナリングで12回払いにするというもので、これはすごくはやっています。このように、au経済圏の中でやらなければいけないというわけではなく、グループの中で一緒にやるものはやるというスタンスです。その上で、いろいろなパートナーともオープンに接続していく。これはすごく重要です。
技術的なところも、世の中はオープンに向かっています。サーバがクラウドに変わり、デバイスがソフトウェアベースに変わり、APIでつながるようになりました。そういったものは、どんどんオープン化されています。私には、技術がオープンなのに、ビジネスがオープンじゃないのはダメなんじゃないかという考えがあります。オープン化が進み、いろいろな産業のパートナーと容易につながれるようになったのはメリットです。
―― こうしたパートナーとの協業はどのようなものが出てくるのでしょうか。
濱田氏 この4年は通信をベースにしたトッピングでした。IDの数だけでなく、売り上げの観点でも成長はしていますが、さらにもっと広げていきたい。その際には、バリューアッディッドなものをつけるのが重要です。アプリ上の機能としてpovo AIが無料になる構造は作っていますが、近い将来、通信とバンドルするコンテンツも予定しています。具体的にどこの会社とは申し上げられませんが、早晩入れていきます。
―― アプリからコンテンツを購入できるということでしょうか。開業時には売りの1つになっていました。
濱田氏 そうです。再度チャレンジします。バリエーションをどんどん増やすと、より複雑化してしまいますが、そこを機能性で見せていきます。
―― ホワイトレーベルとして、パートナーにpovoを使ってもらうという取り組みもありましたが、そちらの進展はいかがですか。
濱田氏 そこは、今、加速中です。ビジネスパートナーとの協業の議論を、マルチに進めています。B2B2Cという意味では、非常に重要なビジネスストラクチャーです。モバイルオペレーターは基本的nearB2Cで、ショップや代理店、量販店を通じてコンシューマーに接します。まれに物理SIMを搭載できるPCのようなものはありましたが、それだけでなく、さまざまな通信を入れたい、または通信事業者ライクにお客さまに接したいという事業者は結構多い。それを加速したいと考えています。
われわれのシステムはソフトウェアベースで、クラウドで走っています。作ったシステムは遺伝子のようなもので、それをインプリ(実装)することができます。他社のシステムの中に入れて、あたかも彼らが自社ブランドのように使うことができますし、povoブランドのままでも結構だと思っています。一般向けのものとして典型的なパターンが「ConnectIN」です。ひと昔前だとM2Mがありましたが、あれをさらに広げたものです。
―― 一方で、povoをセカンドSIMや予備回線として使っている人もいます。こういった人たちにメイン回線に切り替えてもらうような手段は何かお考えでしょうか。
濱田氏 過去の戦略は、2枚目のSIMとしてセカンドスロットに入れてください、他社のバックアップでもいい、24時間データ使い放題は遊びに行くときだけ使ってくださいというもので、それをきっかけにメインにしていただけないかという期待がありました。
ところが、アジアのいろいろなオペレーターを調べたのですが、それはなかなか難しい。海外では2スロット、3スロットが当たり前ですが、セカンドSIMからメインSIMに変えていただくには、メインとなるサービスが圧倒的にエッジの効いたものがなければなりません。劇的にカバレッジが広いといったことや、劇的にポイントがつくといったことで、圧倒的なものがないと面倒なので変えていただけない。
日本は基本メイン回線で戦ってきましたし、カバレッジも広く、ほぼ4G、5Gが入ります。価格も何となく似ている。そうすると、バンドルするもので差をつけたくなりますが、われわれはそこには乗らないようにしています。ただ、それでメインに入っていくのは簡単ではありません。
実際、期待していたほどのメイン化はありませんでした。経済圏ライクなものを作っているところに切り込んで崩すのは難しいですし、お客さまからベネフィットを奪ってしまうことにもなります。そうではなく、サブでもいい。トッピングをいろいろ作っているので、サブにはサブなりの価値を見いだしてもらうようにしています。
―― かなり振り切っていますね。ローソンでギガチャージカードを販売しているのも、サブなりの戦略ということでしょうか。
濱田氏 ギガチャージカードは、夏ぐらいからかなり売れてきています。認知が大きいですね。テレビCMも大阪、北海道などでやっていますが、目につく機会が多くなり、それによってローソンでご購入いただくケースが増えた実績があります。1つの弱みは認知でした。あえてKDDIと出していませんし、テレビCMもしていない。その訴求がまだまだ足りないと思っています。
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