この一連の騒動は、被害企業と迷惑行為の実行者という当事者間だけの問題にとどまらなかった。それは、Google マップ上における寺院の名称改ざんという前代未聞の出来事だ。
何者かが、山形県内の寺院の名称を、迷惑行為の内容をやゆするような悪質な名称に書き換えたのだ。その名称は「寿司ナデナ寺」に始まり、「よだれ醤油寺」になるなど、元の寺院の尊厳を著しく冒涜する、ふざけきったものへと次々に変更された。なぜこの寺院が標的とされたのか、その経緯は不明だが、単に犯人とされる人物の居住地域に近いというだけの理由であった可能性もある。
この名称改ざんに対し、SNS上では「Google マップ上で名前が変わっているのがエグい」「それほどのことをしたのだから自業自得だ」といった、改ざん行為を容認、あるいは正当化するかのようなコメントも散見された。しかし、寺院の名誉を傷つける行為であり、場合によっては偽計業務妨害罪などの犯罪に該当しうる重大な問題といえる。
Google マップのような、ユーザーが情報の編集に参加できるプラットフォームは、その利便性の高さの一方で、悪意ある利用者による情報の改ざんというリスクを常に内包している。Google自身もこの問題を深刻に受け止めており、その利用規約において禁止行為を明確に定めている。今回の名称改ざんは、規約で禁止されている「不適切なコンテンツ」や「改変、悪ふざけ」に明確に該当する。
Googleはポリシーの中で「虚偽の情報、不正確な情報、または欺瞞的な情報は、個人、企業、社会に大きな危害を及ぼす可能性があります。そのため、誤った情報の投稿は許可されません」と断言している。さらに、規約に違反する行為に対しては厳しい措置を講じることも明記している。
「Google マップのユーザーによるプラットフォーム内外での行動が Google の他のユーザー、コミュニティ、従業員、エコシステムに損害を与える場合、Google はアカウントの権限の一時停止からアカウントの停止まで、さまざまな措置を講じることがあります」としており、悪質なユーザーに対してはサービスの利用停止という最も重い処分を下す可能性も示唆している。
問題のあるコンテンツやアカウントの審査においては、投稿されたコンテンツそのものだけでなく、アカウント情報や過去の行動履歴、悪質な行為の常習性など、多角的な情報が考慮されるという。
Google マップにおいて禁止および制限されているコンテンツ。Googleは「なんらかの機能のデジタル プレゼンスを損なったり、傷つけたりすることを目的としたコンテンツは許可されません。これには、悪ふざけとして、あるいは社会的または政治的な主張を表明するために、場所の情報を書き換えて不適切なものや低品質なものに改ざんすることが含まれます」としている現代は、通信やカメラなど多くの機能を備えたスマートフォンだけで、誰もが気軽に情報を発信できる時代だ。日常の出来事をSNSに投稿したり、ニュース記事に自分の意見をコメントしたり、あるいは地図情報の誤りを修正したりと、インターネット上での表現活動はごく身近なものとなった。しかし、その手軽さゆえに、自らの行動がもたらす結果について深く考えることなく、安易な言動に走ってしまう危険性が常に付きまとう。今回の問題は、ネット時代によくありがちな典型例といえるだろう。
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