Bluetoothの「バージョン表記」が分かりづらい問題 標準化団体のキーマンに聞いたところ……

» 2025年10月17日 12時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は10月16日、報道関係者を対象とするセミナーイベントを開催した。イベントにはケン・コルドラップCMO(最高マーケティング責任者)が登壇し、規格としてのBluetoothの現状と今後の展望を説明した。

 筆者はBluetoothの規格について、どうしても確認したいことがあった。そこで、この機会にコルドラップCMOに聞いてみることにした。

意義 Bluetooth SIGの存在意義
加盟企業/団体 Bluetooth SIGの加盟企業/団体は1年間に1000社程度のペースで増えており、4万社を超えたという
日本 Bluetooth SIGの加盟企業/団体数を国別に見ると、日本は世界3位となっている。認証デバイスの数でも日本は世界3位で、「Bluetooth SIGにとって、日本はとても重要な国」となっている
ケン・コルドラップCMO Bluetoothの近況と今後の展開を説明するはケン・コルドラップCMO

気になっていたのはBluetoothの「バージョン」

 規格としてのBluetoothは1999年に生まれた。満年齢でいうと2025年で26歳で、既に四半世紀の歴史を持つ。同規格は機能面で拡充を続けており、2025年時点での最新バージョンは「Bluetooth 6.1」だ。

 一方で、PCやスマートフォンといったクライアントデバイスでメインストリームを占めているのは、2021年策定の「Bluetooth 5.3」あるいは2023年策定の「Bluetooth 5.4」に対応するものだ。最新の1つ手前で2024年策定の「Bluetooth 6.0」に対応するクライアントデバイスは、2025年に入ってじわじわと増えている状況にある。

Pixel 10 Pro Fold Googleの最新スマートフォン「Pixel 10」シリーズは、Bluetooth 6.0に対応している(写真は「Pixel 10 Pro Fold」)

 この状況は、クライアントデバイスと組み合わせて使うコンパニオンデバイスでも同様だ。ワイヤレスイヤフォンや「Bluetooth HID(Human Interface Device)」準拠のキーボード/マウスでも、主流はBluetooth 5.3/5.4に準拠するもので、Bluetooth 6.0に対応するものは2025年に入って出てきた、という感じである。

Pixel Watch 4 Googleの最新スマートウォッチ「Pixel Watch 4」もBluetooth 6.0対応だ(写真は45mmモデル)

 Bluetoothの規格は、大きく分けるとBluetooth 3.0までの「Bluetooth Classic」と、Bluetooth 4.0以降の「Bluetooth Low Energy(LE)」に大別される。両者は基本となる技術が異なるのだが、どちらもBluetooth SIGが「Bluetooth」として規格を管理している。

Bluetooth Bluetooth規格は、バージョン3.0までの「Bluetooth Classic」とバージョン4.0以降の「Bluetooth LE」に大別される(Bluetooth SIGより)

 多くのBluetoothデバイスメーカーは、仕様書などに準拠するBluetoothのバージョンを明記している。しかし、一部にバージョンをハッキリと書かないケースも見受けられる。「細かいバージョンとか、気にする必要があるのか?」と思うかもしれないが、小数点以下の違いで対応(利用)できる機能に差分が生じうるので、場合によっては重要だったりする。

 例えば、新しいオーディオ伝送規格「Bluetooth LE Audio」を利用するには、デバイスが少なくともBluetooth 5.2以降に対応している必要がある。Bluetooth 5.2未満のデバイスでは、対応したくてもできない。

 また、最近ではめったに見かけなくなったが、バージョン表記すらなく単に「Bluetooth LE対応」としか書かれていないデバイスもある。この場合、少なくともBluetooth 4.0以降だなということは分かるものの、具体的な対応バージョンが分からない。新バージョンで追加された機能を使わない限り、基本的に下位互換性はあるので使えないということはないのだが、何だかモヤモヤしてしまう。

LE Audio Bluetooth LE Audioは、Bluetooth 5.2以降で利用できるのだが……(Bluetooth SIGより)
LE Audio 一部のPCメーカーは、Bluetooth規格のバージョンの小数点以下を表記していない。これでは、Bluetooth LE Audioに将来対応できる可能性があるのかどうか分からない
LE Audio 余談だが、Windows 11の「2022 Update(バージョン22H2)」以降で稼働し、Bluetooth 5.2以降に対応するデバイスではBluetooth LE Audioに対応できる可能性がある。ただし、デバイスドライバ側でも対応が必要なので「Bluetooth 5.2以降=LE Audio対応」とも限らないことに注意が必要だ(対応できる場合は「設定」でこのような設定スイッチが出てくる)

 PCの場合、OSやデバイスドライバのバージョンによってBluetoothのバージョンも変動するケースもある。とはいえ、ユーザー目線でいくと「最低限対応できるバージョンでもいいから、小数点以下も書いてほしい」と思ってしまう。現に「OSのバージョンによってバージョンが変動することがあります」といった注釈を付けてきちんと表記しているメーカーもある。

Bluetooth SIGは「バージョン表記」の問題をどう考える?

 Bluetoothの対応バージョンをハッキリと書かないデバイスメーカーがある――このことについて、Bluetooth SIGはどう思っているのだろうか。セミナーの質疑応答でコルドラップCMOに尋ねてみた(一部体裁を整えている)。

筆者 市場に出ているBluetoothデバイスには、「Bluetooth LE対応」「Bluetooth 5対応」といったような形で対応バージョンを具体的に書いていない(曖昧にしている)ものが見受けられます。Bluetooth規格の統括団体として、認証を取得するメーカーなどにバージョン表記に関する指導はしていないのでしょうか。

コルドラップCMO おっしゃる通りで、これは課題だと認識しています。ベンダー企業に対しては「ガイダンス」という形で指導を含めたコミュニケーションを取らせていただいています。(Bluetoothの)機能の表現の仕方についてはシステム面だけでなくコアの仕様に基づく表記も考えられるため、機能の表現方法として正確性を担保できていないことも事実です。ただし、Bluetooth規格では古いバージョンに対する下位互換性を担保しています。

 ともあれ、規格の統括機関として現状は問題だと考えているので、(機能に関する表記の)正確性を高める取り組みは進めています。近いうちに、何らかのお知らせができるのではないかと思うので、楽しみにしていてください。

 Bluetoothのバージョン表記に関する問題は、Bluetooth SIGも問題視しており、それを改善する検討も進めているという。ユーザーがより分かりやすくなるような取り組みに期待したい。

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