スマホで呼べる空飛ぶクルマ構想、SkyDriveがJapan Mobility Showで想起させる

» 2025年10月30日 00時29分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 SkyDrive(愛知県豊田市)が、東京ビッグサイトで開催されているJapan Mobility Show 2025に出展した。来場者には空飛ぶクルマを“都市における移動手段”として体感してもらう。会場には「自動改札機」を模したゲートが設けられ、乗車の手軽さを象徴するように、まるで電車に乗るかのようにタッチして利用できる未来の移動体験を提案する。

SkyDrive 空飛ぶクルマ Japan Mobility Show 2025に出展したSkyDrive
SkyDrive 空飛ぶクルマ 内装

 一見すると車ではなくヘリコプターのような見た目の空飛ぶクルマ。正確にはeVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ばれる。電動化による静音性や環境性能、垂直離着陸による都市内での運用性、さらに将来的な自律運航を見据えた操縦の容易さなどが特徴だ。SkyDriveはこの技術を活用し、空の移動をタクシーや地域輸送、プライベート利用など多様な形で社会に広げる構想を描いている。

鉄道会社4社と協力 他社路線と地域を結ぶ

 SkyDriveは、鉄道との連携による新たな移動インフラの実現を目指し、国内の主要鉄道会社4社と資本業務提携を締結している。近鉄グループホールディングスとは伊勢志摩エリアを結ぶルートを、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)とは大阪市内4カ所をつなぐ「大阪ダイヤモンドルート」を計画。さらに、JR東日本とは盛岡と小岩井(AZUMA FARM KOIWAI)間の運航ルートを、JR九州とは別府・湯布院など大分県内をつなぐルートを構想している。各地域の特性を生かした運航計画を通じ、観光振興や地域発展への貢献を目指す。

SkyDrive 空飛ぶクルマ SkyDriveは、鉄道と連携した新移動インフラ実現に向け、国内鉄道4社と資本業務提携を締結。近鉄とは伊勢志摩、Osaka Metroとは大阪市内、JR東日本とは盛岡・小岩井、JR九州とは大分県内のルートを計画。観光振興や地域発展への貢献を目指す

スズキとの製造協力、量産体制を確立

 安全で高品質な機体の安定供給を実現するため、SkyDriveは2022年にスズキと事業・技術連携の協定を締結した。2023年には製造子会社「Sky Works」を設立し、2024年から静岡県磐田市にあるスズキグループの工場で量産を開始している。さらにスズキはSkyDriveに出資し、インドでの事業展開も支援。スズキ代表取締役副社長の石井直己氏が社外取締役として参画するなど、両社の連携は製造面だけでなく経営面でも強化が進む。

自動車業界との技術融合

 SkyDriveの空飛ぶクルマには、自動車業界の技術が多く取り入れられている。スズキに加え、自動車部品メーカーの日本発条(ニッパツ)の技術や製造ノウハウを活用し、軽量化や耐久性の向上など、航空機としての信頼性を高めている。こうした日本のものづくりの強みを結集することで、グローバル市場に通用する品質と安全性の確保を目指している。

スマホ連携はまだ先 今後の発表に注目

 スマートフォンの連携はまだ先のようだ。SkyDriveの広報は「スマートフォンアプリによる搭乗管理や予約システムなどの具体的な仕様は今後検討が進む段階」との見解を示す。

 SkyDriveの福澤知浩CEOは、公式サイトでも具体的な構想を次のように述べている。

 「スマホで予約した時間に、自動運転で空飛ぶクルマが迎えに来てくれ、空をひとっ飛びして、どこでも行きたいところに連れて行ってくれる。今のタクシーレベルの価格で。1日2回の新聞配達によるニュースが、インターネットによりいつでもどこでも手に入るようになったのと同じように、オンデマンド・インフラレスで、ヒト・モノがタイムリーに、簡単に楽しく環境に優しい移動できる。そんな世界を目指し、具体的なステップを刻みながら、事業と機体の開発を全速力で進めています」

SkyDrive 空飛ぶクルマ 会場には「自動改札機」を模したゲートが設けられた。まるで電車からタクシーに乗り継ぐかのような移動体験を想起できる
SkyDrive 空飛ぶクルマ 駅の看板をイメージした展示手法もユニークだ

 ただ、単純にスマートフォンアプリを利用した乗降では従来の公共交通機関と何ら変わらない。複数の交通事業者が運航する路線を跨ぐ際に、アプリを一本化してシームレスに利用できるような仕組みに期待したい。今後の発表次第では、鉄道と空飛ぶクルマの垣根を越えた“統合型モビリティ”が現実のものとなるかもしれない。

 駅を降りたらタクシーに乗り目的地へ移動する――というルートをよりシームレスにするためには、スマートフォンアプリの一本化も欠かせないはずだ。

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