スマートフォンの消費電力が増す中で、単にバッテリー容量を増やそうにも、本体サイズや重量には限界がある。こうした制約の中でもバッテリーを大型化できるようになったのは、以下の技術進化が背景にある。
1つはバッテリーの高密度化技術の進展だ。近年よく耳にする「シリコンカーボンバッテリー」では、バッテリーの負極材にシリコン系素材を採用することで、同じ体積でもより多くの電力を蓄えることが可能となった。これにより、従来の厚さや重量を維持しながら容量を増やす製品が登場している。
もう1つはバッテリーのパッケージング技術の進化だ。バッテリーの設計技術の進化により、従来よりも柔軟な形状や薄型化を実現。効率よく本体内に配置することが可能となり、本体内部の空間効率を上げることができた。
iPhoneなどで見られるL型のバッテリーをはじめ、薄型化したバッテリーはカメラや放熱システムの性能を落とさないまま、大容量バッテリーの共存が可能になった。
最後は急速充電技術の進化だ。100W級の超急速充電技術が登場したことで、5000mAhクラスの大容量バッテリーでも30分以内でフル充電が可能になった。
この技術のおかげで、より大容量の7000mAhクラスのバッテリーでも1時間程度で充電できるようになった。バッテリー容量が増えても、今までのスマートフォンから大きく充電時間も変わらない。かつては「大容量=充電に時間がかかる」だったが、今やその常識は過去のものとなっている。
日本でも一部機種にはなるが、モトローラ、Xiaomi、OPPO、nubiaのスマートフォンは90W以上の急速充電に対応。キャリアではソフトバンクがアピールしている「神ジューデン」も急速充電機能の認知度を後押ししている。
今後のスマートフォンのバッテリー容量は、どこまで増え続けるのだろうか。普段使いできるサイズ感や重量、現時点で8000mAhの機種が登場していることを踏まえると、容量1万mAhクラスの機種が今後2年以内に出てくると予想する。
実際、realmeは2025年5月に1万mAhバッテリーを搭載したスマートフォンのコンセプトモデルを公表。負極のシリコン含有率を10%と高めたことで従来よりも高密度化に成功。6.8型クラスのサイズで厚さ8.5mm、重量215gとしているおり、通常サイズの機種でもバッテリー容量を増やせることを示している。
今後はオンライン上の生成AIとの常時連携だけでなく、バックグラウンドでオンデバイスAI処理が動作するような“次世代スマホ”では、消費電力のさらなる増加が予想される。
加えて、ディスプレイはより高輝度となり、通信は常時5Gなどに接続することが前提。Bluetoothなどを通じて、イヤフォンやスマートウォッチをはじめとしたあらゆるデバイスと常時接続することを踏まえると、やはりスマートフォンの消費電力は大きくなる。
バッテリー技術の進化が今後も継続する限り、スマートフォンのバッテリー容量は増え続けるだろう。ただし、本体重量や放熱性能、スペースとのトレードオフが付きまとうため、「薄くて軽く、長持ち」なスマホを成立させるには、さらなるイノベーションが求められることも確かだ。
「バッテリーは取り換えられない」という設計思想がスタンダードになった今、スマートフォンのバッテリー性能は製品選びにおいて重要な指標の1つとなった。1日中使えることは当たり前とされる現代。スマートフォンのバッテリー大容量化は単なるスペック競争ではなく、ユーザーのライフスタイルに寄り添う“実用性の進化”だといえる。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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