大矢氏は、5G SAを運用する上で重要になる技術についても紹介した。複数の周波数帯を束ねる「キャリアアグリゲーション(CA)」も積極運用し、2025年度にはFDDとTDDの最大5バンド(215MHz幅)を組み合わせたCAを実施している。その際、制御装置(BBU)を集約させる「C-RAN」構成によって、異なる場所にある基地局が協調し、80%を超える5G基地局でCAが可能になるという。
また、比較的高い周波数帯のTDDは電波が飛びづらい特性を持ち、端末から上りの信号が届かずパケ詰まりをすることも多いそうだ。そこで、電波が飛びやすいFDDの周波数を組み合わせることで、パケ詰まりの解消に努めてきた。実際にFDDとTDDを組み合わせることで、上り速度が30%ほど向上したという。
この他、ソフトバンクではルーターやスマートフォンから送信する電力を向上させる「HPUE(High Power User Equipment)」も導入しており、上りの通信品質が約40%向上したとする。
LTE時代からおなじみの「Massive MIMO」も運用しており、近年は3.9GHz帯、3.5GHz帯、3.4GHz帯の3バンドに対応した「Triple Band Massive MIMO」も展開している。1つの無線機で複数バンドに対応することで設備のサイズが小さくなり、約40%の省スペースに成功したという。
AIも活用し、キャリアアグリゲーションやカバレッジの最適化、セル間のバランシング、劣化検知、省電力制御などを行っていく。AIを活用してユーザー体感が低下している場所を検知し、より詳細なレベルで対処していく。
より高い周波数のミリ波については、対応しているスマートフォンが少なく、メリットを生かしづらい。そこでソフトバンクでは、ミリ波をバックホールとして活用し、Wi-Fiを経由することで、ミリ波非対応のスマートフォンでも快適に通信してもらえるように努める。イベントでの対策を想定しており、実際に池袋ハロウィンコスプレフェスで実証実験を行った。
ソフトバンクでは、低周波数から高周波数まで、「あらゆる周波数を最大限活用してユーザーの体感を上げていく」(大矢氏)を目指す。ここに、スライシングを始めとするSAならではの機能も積極的に導入していく考えだ。
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