ソフトバンクは12月9日、5Gミリ波のFWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)を用いた屋外Wi-Fi通信の実証に成功したと発表した。
今回の取り組みは、同社が10月に実施したミリ波スタンドアローンのFWA通信実証を発展させたもので、商用ネットワーク環境をそのまま利用しながら、公衆向けWi-Fiサービスを屋外会場で実際に提供する形で行われた。会場は東京都豊島区で開催された大規模イベントで、3日間の来場者数は延べ16万人を超えた。
ソフトバンクは、2025年10月に実施した商用ネットワーク環境でのミリ波スタンドアローンによるFWA(固定無線アクセス)通信の実証実験を発展させ、今回新たに屋外での公衆Wi-Fi通信の実証実験に成功した。この成果により、ミリ波活用のさらなる拡大が期待される実証では、28GHz帯のミリ波をFWAのバックホールに用い、屋外設置型のFWA用CPEを経由して会場内に6台のWi-Fiアクセスポイントを展開した。最も通信が集中した時間帯でも速度低下が許容範囲に収まり、端末が多い状況でも通信が途切れにくい環境を維持したと説明している。ミリ波に非対応のスマートフォンも含め、多数の端末の通信をモバイルネットワークからWi-Fiへ効率的にオフロードできたことを確認し、通信品質の安定性を裏付けた。
会場ではSoftBankとY!mobileの利用者に加え、他社ユーザーや訪日客にもWi-Fiを開放した。チャネル帯域幅は実運用を想定し20MHzに制限していたが、同社は広い帯域を使用すればさらなるスループットの向上が見込めるとしている。トラフィックが集中するイベント会場では、ミリ波の広帯域性が有効に作用し、モバイルネットワーク全体の負荷を下げる効果も期待できるとしている。
今回使用したCPEや関連機材は小型かつ軽量で、光ファイバーを敷設することなく短期間で設置できる点も特徴だ。ミリ波基地局の電波が届く範囲なら柔軟に設置場所を選べるため、会場設営の制約が大きいイベントでも利用しやすいという。こうした特性は、通信インフラを素早く整える必要がある自治体や公共施設での活用にも適すると見られている。
広帯域・大容量通信が可能なミリ波は、直進性が高くエリア展開が難しいため商用利用は限定的だった。一方で、災害時や光回線敷設が困難な地域・施設での活用が期待されている。ソフトバンクはWi-Fiとの連携により、非対応端末でも高品質な通信環境を提供し、ミリ波の有用性を社会へ広げることを目指す同社は、今回の成果を踏まえ自治体・公共施設での即時対応型通信インフラ、学校への高速通信提供、災害時の避難所での大容量通信、イベントやスタジアムでの混雑緩和など、複数のユースケースを検討している。産業分野では、工場や港湾での映像監視や遠隔制御、IoT通信などにもミリ波FWAの適用を視野に入れる。
実証への協力として、池袋ハロウィンコスプレフェス実行委員会が会場を提供し、富士ソフトがミリ波CPEを提供した。同社はミリ波とWi-Fiの連携を最適化するさらなる検証を進め、ミリ波の用途拡大を図る方針だ。
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