ただし、この便利な機能にも弱点はある。使用するにはスマートフォンのインターネット接続が必須であり、オフライン環境では動作しないため、使用環境によっては不便に感じる人もいるだろう。Googleには今後、この機能をローカル処理でも使えるように進化させてほしいと願うばかりだ。
そして何より、最も高いハードルとなるのが「使う場所」の問題だ。「Geminiへの話しかけ」は機能としては便利だが、一歩外に出て使うとなると、心理的に少し抵抗がある。1人で道を歩きながらハンズフリーで使う分には確かに快適だが、電車の中のようなパブリックな空間では、どうしても気まずさが残ってしまう。たとえ発する言葉が恥ずかしい単語でなかったとしても、静かな車内で突然「人が時計に向かって話しかけている」姿を周囲に見せるのは、やはり相当な抵抗があるだろう。単語レベルの軽い音声検索でさえ、静寂な電車の中では急に恥ずかしく感じてしまうのが人間の心理だ。
イヤフォンをしていてもその恥ずかしさは変わらなかった。「Google Pixel Buds 2a」とPixel Watch 4をペアリングした状態で、Geminiと数回ほどやりとりを試みてみた。Geminiからの応答音声はイヤフォンから聞こえるため周囲には聞こえないという安心感はある。しかし、周囲の人間からすれば、私が無言の時計に向かってブツブツと話しかけている事実に変わりはなく、「この人はなぜ時計と話しているのだろう」という不信感や違和感を抱かせるはずだ。実際に電車の中で勇気を出して試してみたところ、数人からジロジロと見られている視線を感じた。
逆にいえば、自宅や人の少ない運動場、公園などの静かな環境であれば、ほとんど周囲の視線を気にせずに使える。電車内ほど「時計に話しかける」行為への心理的抵抗もなく、音声入力の利便性が素直に生きる。つまり、現状のGeminiの音声入力には「向いている環境」と「どうしても使いづらい環境」がはっきりと存在しているのだ。
電車の中のような公共空間で、音声でデバイスに指示する使い方が広く社会に受け入れられるとは、現時点では思えない。街中の人々が手元の端末に向かって四六時中つぶやいているような光景が根付くまでには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
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