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PayPayが日本の隅々にまで浸透したワケ 泥臭い営業と地方開拓の裏側(1/2 ページ)

» 2026年01月30日 12時30分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]

 つい先日のことだが、都心から遠く離れた神社を訪れた際、「こんな田舎なのにPayPayが使えるのか」と驚いた。

 歴史を感じさせる重厚な山門をくぐり、本堂へと向かう途中で、目に飛び込んできたのは見慣れた鮮やかな赤いロゴだった。そう、「PayPay」だ。その神社のさい銭は現金払いのみだったが、記念写真の撮影コーナーにPayPayのQRコードが掲げられ、それをスキャンして支払える仕様だった。

 同じような体験談はネット上でも見られる。地方のタクシーで唯一利用できたのがPayPayだったという話や、シャッター通りになりつつある小さな商店街の個人商店でさえこのサービスが導入されていたというエピソードなど、今やこの決済手段は「ほぼどこでも使える」という確固たる地位を築いている。

 なぜ、PayPayは日本の隅々にまで浸透したのだろうか。その裏側にある地方での泥臭い取り組みや戦略について、PayPay広報に詳しい話を聞いた。

PayPay 地方 田舎 浸透 PayPayで決済する際のイメージ

ローンチ前は、実体の分からないサービスの営業に苦労

 PayPayのサービスが誕生した2018年当時、国内の決済手段は現金が主流だった。現在でこそテレビCMや大規模な還元キャンペーンによってその名を知らない人はいないほどになったが、サービス開始前には想像を絶するような苦労があったという。PayPay広報は「まだ始まっていないサービスを導入してもらうのは、まさに概念を売り込むようなものだった」と振り返る。

 サービス開始前、PayPayは「2018年6月頃から各地に営業拠点を設置しており、当時そのような体制はPayPay独自だった」そうだ。まだ世の中に認知されていなかったQRコード決済という仕組みを説明し、導入を促す営業活動は困難を極めた。何しろ、店舗側からすれば「見たことも聞いたこともない、実体すらつかめないサービスを信じてくれ」と頼まれるような話なのだ。

 この状況を打破するために、PayPayは「ヤフー(現LINEヤフー)」と「ソフトバンク」の子会社というバックグラウンドを説明することから始めた。信頼性のよりどころとして親会社の名前を出し、1つずつ不安を払拭していった。さらに、営業担当者はデモ用のQRコードを常に持ち歩き、管理画面を実際に見せることで、決済フローを実演した。言葉だけでは伝わらない利便性を、目に見える形で示し続けたのだ。

 導入への障壁を下げるための戦略も極めて緻密だった。クレジットカードなどの既存のキャッシュレス手段と異なり、高価な専用機材の導入が不要であること、初期費用が一切かからないことを強調した。特に2018年10月のサービス開始から2021年9月までの約3年間、中規模や小規模の店舗に対して決済手数料を無料で提供したことは、慎重な地方の店主たちの背中を押す決定打となったようだ。

100億円還元キャンペーンで話題、自治体との連携も地方開拓に貢献

 地道な営業努力と並行して行われたのが、大胆なマーケティング施策だった。サービス提供直後に実施された「100億円あげちゃうキャンペーン」は、大きな注目を集めた。第1回のキャンペーンは、あまりの反響にわずか10日間で終了する事態になった。連日、家電量販店に長蛇の列を作る人々の姿が報じられ、PayPayに対する注目は日に日に増した。この強烈なインパクトによって、新規ユーザーの獲得と認知度の向上に成功した。

PayPay 地方 田舎 浸透 「100億円あげちゃうキャンペーン」のイメージ(出典:PayPayの“100億円キャンペーン”は成功だったのか?)

 しかし、PayPayの真骨頂は単なる大型キャンペーンにとどまらない。その後、自治体と連携した「あなたのまちを応援プロジェクト」や、国が主導した「マイナポイント事業」といった公共性の高い施策に積極的に参画した。これにより、当初のターゲットであったデジタルネイティブ層だけでなく、スマートフォン操作になじみの薄い高齢層を含む幅広い年代にまで利用者が広がった。

 「自治体でのキャンペーンが決定すると、それを機にPayPayの導入を検討いただける店舗も多く、加盟店拡大にも寄与している。自治体からPayPay導入を進めていただけることも大きい」(同社)

 2022年には、コード決済の決済金額が初めて電子マネーを上回るという転換期を迎えたが、その潮流の中心にはPayPayがあった。自治体との連携は、地域経済の活性化という大義名分を伴っていたため、保守的な地方都市においても受け入れられる土壌となった。

PayPay 地方 田舎 浸透 画像は、PayPayが2025年11月以降に地方自治体と共同で行うキャンペーン「あなたのまちを応援プロジェクト」を10自治体で実施した際のイメージ(出典:PayPay、11月以降に自治体キャンペーンで最大30%還元 東北や関東で)

年間で約50回のアップデート 画期的だった「オフライン支払モード」

 プロダクトの開発力も、地方のみならずPayPayの成長や利用促進の後押しになっている。「エンジニアの約8割が外国籍のメンバーで構成されており、日本とインドを拠点に24時間に近い体制で開発が進行している」。年間で約50回、つまりほぼ毎週のようにアップデートを繰り返し、ユーザーからの要望や不満を即座に機能へと反映させている。

 その成果の1つが、2023年7月に提供を始めた「オフライン支払いモード」だ。これまでのコード決済には、電波がない場所では使えないという致命的な弱点があった。しかし、この機能の登場により、地下街や大規模な通信障害時、さらには災害時でも、一定の条件下で決済を継続することが可能となった。実際に能登半島地震が発生した際にも、この機能が被災地での生活を支える決済インフラとして機能したという実績がある。テクノロジーによって物理的な制約を克服しようとする姿勢が、PayPayの信頼性を支えている。

PayPay 地方 田舎 浸透 ユーザーの声を即座に反映するPayPay。23年7月開始の「オフライン支払いモード」は、不満を解消し利便性を追求する同社の姿勢を象徴する機能だ(出典:PayPayが「オフライン決済」を提供する3つの狙い 実際に試して分かった仕組み)
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