「〇〇さん、いらっしゃいますか」──意中の相手の自宅に電話をかけ、父親が受話器を取った瞬間のあの緊張感は、ある世代にとっては忘れがたい記憶でしょう。あれから時は流れ、連絡手段の主役は固定電話から携帯電話へと移り変わりました。同時にメールやチャットが普及し、テキストによるコミュニケーションが日常に浸透しています。
こうした変化の中で、「若者は電話を忌避しているのではないか」という“電話離れ”の議論が活発化しています。特に新入社員を迎えるこの時期は、会社の電話応対に強い抵抗を感じるなど、若年層の電話に対する苦手意識が社会的な関心事となっているようです。
ここで、自分以外への取り次ぎが発生しうる「固定電話」の利用実態を確認してみましょう。クロス・マーケティングの調査によれば、「自宅の固定電話で通話をする」と回答した割合は、20〜50代では10%台にとどまる一方、60代では31.4%と突出しています。
通話とテキストの利用頻度を比較する設問においても、60代は他世代に比べて通話の割合が高いものの、50代以下では世代間の顕著な差は見られません。つまり、電話離れは決して若年層に限った現象ではないことが伺えます。
以上の結果をふまえると、50代以下の世代は「自分宛てとは限らない電話」に応対する経験自体が不足していると考えられます。予期せぬタイミングで着信を受けるという状況そのものが、日常から失われつつあるのかもしれません。
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