異業種も含めたMVNO全体が成長するために必要なことは何か。
まず挙げられたのがeSIMへの対応だ。日本で発売されたiPhone 17シリーズがeSIMのみ対応となったことに伴い、MVNOもeSIM対応が必須となりつつある。かたやeSIMクイック転送は、MNOグループ内のMVNO以外は対応しておらず、課題となっている。
石川氏は、eSIMオンリー化は予測可能であったとし、関係各所の対応の遅れを指摘。佐々木氏は、MVNO委員会が2025年からAppleとコミュニケーションを取り、「eSIMオンリーのiPhoneが出てきたときのために必要なことについては正確に教えていただいた」と説明した。
ただ、クイック転送の実現にはキャリア側の協力が不可欠であり、「われわれだけの力ではできない。ゴールは分かっているけれど、解かなくてはいけないパズルがたくさんある。現在も調整中」(佐々木氏)とのこと。「技術に詳しいか否かにかかわらず、ユーザーが簡単に乗り換え・機種変更できるよう、なるべく早くこの問題を解決する必要がある」と語った。
ユーザー体験向上におけるAI活用も議論された。メルカリモバイルはeSIMから先に提供を始めたことにより、eSIMでつまずくポイントのデータをかなり多く持っているという。深見氏は、eSIM設定でユーザーが直面する課題をAIに学習させ、24時間対応のサポートとして提供することで、ユーザー体験の向上に努めている取り組みを紹介した。また、独自のギガ売買において、AIによる自動代行にも期待を寄せた。
JALモバイルの大山氏は、複雑化するマイル特典をAIエージェントがフラットに紹介することで、顧客とのコミュニケーション課題を解決し、ユーザー体験を向上させることへの期待を話していた。
5G SAのMVNOへの導入の現状と将来についても議論された。
石川氏は、MNOによる5G SAの整備やサービス提供の遅れを指摘。5G SAの展開は業界全体の宿題であり、本格活用は6Gまで待たねばならない可能性があるとも指摘した。
佐々木氏は、MVNO委員会が2019年から5G SA開放に向けたVMNO構想(※)を推進し、ITU-Tの技術文書に収録されるなどの活動成果を説明。5G SAの普及が想定より遅く、投資に対するリターンを得られる状況に至っていないこと、例年開催されるMWCでも問題になっていることを指摘した。ただ、そのことでMVNO側には「息継ぎの時間」という猶予が生まれている状況であると捉えている。
また佐々木氏は、MWC26 Barcelonaで5G/6Gの議論が格段に減り、AIが通信事業に与える影響へと焦点が移ったことに「ショックを受けた」と語った。5G SAは、佐々木氏本人も取り組んできたテーマであり「何とか形にしたいが、非常に揺れ動いているところ」という。今後はニュージェネレーションとして「ポストAIの時代が第2世代として始まる」との見方を示し、通信技術の追求以上にAI活用法が本質的な課題になる可能性があるとの考えを語った。
三澤氏は、MNOがMVNOの事業に協力的で、技術や機能をMVNOに開放している事例を紹介した。韓国では、競争促進と通信料金引き下げ政策により、日本以上にMVNO参入が強力に推進されてきたという。現地のMNO3社のうち、1社はオンラインショップにしっかりしたMVNOコーナーを設けるなど、認知拡大も含め積極的な協力を行っているそうだ。一方、日本ではMNOとMVNOの間に依然として距離間があると指摘する。
石川氏はMNOとの距離間について、好戦的なMVNOがいるからではと指摘。一方佐々木氏は、MNOとMVNOは「右手で握手をしながら左手で殴り合う」ような関係であり、緊張感を持続させることが重要であると指摘。個社がMNOに要求すると問題になることもあるが、業界団体としてMVNO委員会が活動することで、各MVNOがMNOとの協力関係と緊張感のバランスを取りやすくなると語った。
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