最後のパートでは、「価格から価値へーMVNOの差別化に必要なことー」と題していくつかのトピックを挙げた。
2026年から27年にかけて、日本通信とオプテージが音声も含めたフルMVNOに参入する。丸紅ネットワークやIIJなど一部事業者はフルMVNOとして活動しているが、さらに大手2社が加わることになる。
石川氏は「リスクを取って参入することは非常に素晴らしい」と高く評価。魅力的なサービスを提供することで業界全体の活性化につながることを期待した。
佐々木氏は、IIJが2016年頃から取り組んできた音声フルMVNO構想が、当時の電気通信番号制度によって実現できず断念した経緯を説明。2022年の制度改正から4年を経て、現在、実現に向けた動きがあることに「感無量」と語った。音声接続は全てIPベースに移行してシンプルな構成になったが、音声SIMの不正利用対策や非常時ローミング対応、重大事故基準の引き下げなど、新たな課題も発生している。MVNOがこれらの新旧ハードルを乗り越え、業界の活性化につながることに期待を示した。
また佐々木氏は、既存顧客の奪い合いだけでなく、IoT市場への挑戦といった新しいパイを作っていくことにMVNOが積極的に取り組むことが重要とも指摘した。IoTビジネスは、SIMや通信だけでなく、クラウド、ハードウェア、ビジネスモデル構築、場合によってはグローバル展開など、通信の外側に要素が多く広がり、MVNOが積極的にチャレンジしやすい分野との認識だ。
最後に各パネリストが成長するためのキーワードを述べてパネルディスカッションは終了した。
大山氏は「ユーザーは価格+体験価値を求めている」との考え。これは事業者にとって負担増となる一方、異業種にとっては市場参入の機会拡大につながるため、チャンスと捉えている。体験価値をいかに拡充できるかがポイントとなるため、商品を磨き続けていきたいと語った。
深見氏は、通信サービスに閉じず、グループサービスや新規パートナーを含めた連携により、顧客価値の追求を徹底したいと語った。AIを掛け合わせたり、通信業界の歴史から学んだりしながら、独自に解釈した価値をユーザーに提供し続けることが最も重要とした。
石川氏は、「ジャーナリストとして俯瞰(ふかん)して見たときに必要なことを総務省に一言言いたい」として、データSIM契約の際にも本人確認の義務化が検討されていることに対し、不正対策は必要だが、MVNOの「気軽に契約できる環境」が損なわれることを危惧した。
サブ回線需要を伸ばすため、一律規制をやめ、JALやメルカリ経済圏の利用者など本人確認済みのユーザーには手続きを免除するなど、柔軟な仕組みを作るよう提言した。深見氏も、「FinTechサービスの利用者には犯罪収益移転防止法に対応した本人確認が済んでいる方が多い。この方々にもう一度同じ手続きをさせるのは無駄」と語っていた。
三澤氏は、日本のMVNO市場の独自性を生かすため、「会員証的役割」に注目すべきだと提言した。MVNOアプリを会員証として活用し、優先予約やグッズ特典といった独自の顧客体験と通信サービスをひも付けることで顧客価値を高め、市場参入の機会となり得るとの見解を示した。
佐々木氏は、2013年設立のMVNO委員会が、今回で4回目となる政策提言活動を継続してきたことに言及した。同委員会は、メルカリやJALなど異業種からの参入企業を迎え入れ、独自の付加価値を追求する事業者に便利な業界団体として、今後も拡大と影響力の増大に努めるとした。なお、今回の政策提言では、eSIMのクイック転送やNTN(非地上系ネットワーク)サービスへの取り組み方など重要な視点が盛り込まれており、今後も加盟企業の利益になる活動を続ける意向を示した。
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