MMD研究所は2025年5月23日、都内で「第9回MVNO勉強会」を開催した。
オプテージの松田氏(mineo)、イオンリテールの井原氏(イオンモバイル)、メルカリの永井氏(メルカリモバイル)が登壇。大手キャリア(MNO)の料金プラン改定やMVNO業界への新規参入、今後の法改正など変化が激しい市場環境下で、MVNO各社がどのように差別化を図り、どこに活路を見いだすのか? パネルディスカッション形式で率直な議論が交わされた。
最初の話題は、直近のドコモやKDDIによる新料金プランだ。これらは実質的な値上げと受け止められており、背景には電気代や人件費の高騰があるとされる。
オプテージの松田氏は、「物価高や人件費高騰に対し、料金で吸収するのかコスト削減で吸収するのか、各社対応が分かれる」と前置きしつつ、「ユーザーが家計を見直す機会が増え、固定費である通信費に目が向く。MNOの値上げで価格差が広がれば、MVNOに改めて注目が集まる機会になる」との期待感を示した。 さらに、「MNOがセットプランなどで高付加価値化するなら、MVNOとしては明確な差が出てウエルカムな部分もある」とコメントした。
イオンリテールの井原氏は、特にKDDIの既存ユーザーを含めた全体的な値上げに「正直、めちゃめちゃ驚いた」と率直な感想を述べた。一方で、「MNOが値上げに踏み切れたのは、MVNOが競争相手としてあまり見られていないことの現れかもしれず、反省すべき点」と厳しい自己評価も口にした。
それでも、「接続料が現状維持である限り、MVNOは低価格を提供し続ける必要がある」と強調。 店舗運営コストに関しては、「キャリアショップはコスト増になっているかもしれないが、われわれ(イオンモバイル)は店舗を通じてお客さまとの距離の近さを強みにしたい」と述べた。
メルカリの永井氏は「MNO、サブブランド、MVNOがより差別化され、ポジショニングが取りやすくなった。チャンスと捉えている」とポジティブな見方を示した。メルカリユーザーの価格や付加価値への意識の高さを背景に、「料金に関するコメントは非常に多い。この傾向は続くだろう」と分析した。
近年、カブアンド、メルカリ、JALなど知名度の高い企業の参入が続くMVNO市場。この動きについては、各社とも歓迎する意向を示した。
井原氏は「大歓迎。プレイヤーが増えることでMVNO市場がまだ伸びているというメッセージになる。特に異業種からの参入は、既存サービスとの組み合わせでユーザーにお得感を提供できるのがMVNOの面白さ」と評価した。
松田氏も、「知名度の高い事業者の参入は、MVNOそのものを知ってもらうきっかけになる。それぞれの強みを生かしたサービスが増えれば、ユーザーが自分にぴったりのものを選べるようになり、MVNO自体が盛り上がる」と期待を寄せた。
新規参入組であるメルカリの永井氏は、「歓迎ムードのコメントを頂いてほっとしている」と述べ、「ユニークで強固な顧客基盤を持つ企業の参入は、お客さまの選択肢を広げ、業界全体の活性化につながる」との考えを示した。 自身でもメルカリのヘビーユーザーだったという永井氏は、メルカリモバイルについて「『ギガも売れるモバイル作ろう』というアイデアを聞いたとき、これはいけると思った」と参入時の手応えを語った。
今後の注目点として、2026年4月からのマイナンバーカードによる本人確認の必須化、2026年3月末のドコモの3Gサービス終了、そして衛星通信といったトピックが挙げられた。
松田氏は、マイナンバーカード利用について「利便性向上と不正利用防止の観点からはよい。しっかり対応したい」とコメント。 3G停波は「ユーザーが見直す機会であり、MVNOにとっては乗り換えのイベント」と捉えた。
井原氏は、2026年4月のマイナンバーカードのICチップ読み取り必須化で「慣れていない方がオンライン契約で置いていかれる可能性がある」と懸念を示しつつ、「スマートフォンを入り口にした本人確認サービスが広がるいい機会」とも述べた。 ただし、「対応のための投資が必要で、このタイミングで離脱する事業者も出てくるかもしれない」と指摘。5G SAや衛星通信に関しては、「MVNOとしても使えるように国にも伝えていく必要がある」とした。
メルカリモバイルでは、既に本人確認をマイナンバーカード一本に絞ってサービスを提供している。 永井氏は「マイナンバーカード認証のどこでお客さまがつまずくかが分かってきており、来年4月に向けて対応策を考えていきたい」と語った。
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