傘下にトーンモバイルを持つフリービットが、2025年にソフトバンクと資本業務提携を締結してから約1年半。その成果が、徐々に具体的なサービスという形で出始めている。第1弾は「おうち割 光セット」。もともとソフトバンクのモバイル回線と固定回線をセットで契約すると受けられた割引だったが、その対象をフリービットグループのギガプライズに拡大。ギガプライズは、マンション全戸一括型の光回線を提供しているが、この回線でもセット割引の利用が可能になった。
第2弾として導入したのが、6月4日に発売された「かんたんスマホ5」に搭載された「家族サポート」の機能だ。この開発には、トーンモバイルで培ったノウハウを生かして生まれた「TONE-IN SDK」が採用されており、サポートする側はLINEミニアプリを通じて、家族のスマホ操作をサポートすることができる。セキュアな通信環境や認証、UI設計などをフリービット側が担っているという。
一方で、トーンモバイルはドコモ回線を借りるMVNOとして展開しており、ドコモの「エコノミーMVNO」の1社として、ドコモショップでも契約を受け付けている。ソフトバンクとの提携により、トーンモバイルの役割やドコモとの関係に変化が生じているのか。そんな疑問を、フリービットで代表取締役社長CEO兼CTOを務める石田宏樹氏にぶつけた。
―― 最初に、ソフトバンクとの資本業務提携に至った経緯を教えてください。
石田氏 6年前にフリービットの社長に戻り、グループの全体戦略として大きな方向性を考えました。当時はドコモさんのエコノミーMVNOや、従来のMVNO、固定網がグループ内でバラバラでした。例えばマンション向けインターネットは、全戸加入型になるとフリービットグループがトップシェアなのですが、そことモバイルがうまく組み合わさっていない。キャリアが低価格化し、端末が高性能化した際にどこで強みを作れるのかというと、パッケージ化です。
単純に卸して出すだけでは、どんどん付加価値がなくなってしまいます。そこで、固定網、MVNO、トーンが持っている安心安全の機能、それからモバイルを使ったWeb3やブロックチェーン、デジタルアイデンティティーの部分をパッケージにして、お付き合いのあったところに提携の打診をしました。そこで一番いい条件を出していただいたのが、ソフトバンクさんでした。
最終的には宮川(潤一)社長ともミーティングなどでお会いしてお話をしましたが、ソフトバンクさんは今、AIを中心に動いています。そのためには、固定も必要でモバイルもセットする必要があり、Web3のところで信頼性も担保したい。宮川社長が考えていることや技術は、われわれの目指す方向性と近かったですね。
―― どのような提携をしているのでしょうか。
石田氏 発表されている提携分野としてあるのが、まずWeb3です。非中央集権型のデジタルアイデンティティーをどう作っていくのかということは、ソフトバンクの研究所と一緒にやっています。ソフトバンクさんはOID(オブジェクト識別子=重複しない一意の識別子)が中心になっていくと思いますが、それをモバイルブロックチェーンとどう組み合わせるかだったり、モバイルブロックチェーンのパフォーマンスチェックだったりをしています。
また、独自技術の「Emotion Link」も、ソフトバンクさんで検証してもらっています。安全安心のスマホを共同開発しましょうということで、P2Pの仕組みやEmotion Linkによってそれぞれをつなげています。これらを使うことで、フリービットにも個人情報や認証情報が渡らない形で、デジタルアイデンティティーを入れることができました。その検証したものが、かんたんスマホ5に家族サポートとして入っています。
われわれにはトーンモバイルをやっていたノウハウやエコノミーMVNOとして2000店舗近くでやってきた経験がありますが、ソフトバンク側にもシニアのサポートには相当手間がかかるという共通認識がありました。もともと、画面共有の仕組みはありましたが、これを家族に持っていくことで“三方よし”の仕組みを作れる。シニアの方は頼みやすいですし、家族も電話でサポートするより楽、ソフトバンクとしてもサポートコストがかからない形になります。
最終的には、かんたんスマホ5のメイン機能のような形で発表いただけました。共同開発でお互いに意見をやりとりしながら、とてもいいものができたと思っています。
提携分野としては、固定網の共同展開と共同開発もあります。後はIoTの分野ですね。ギガプライズも、回線を有効に使ったサービスになっています。回線をベストエフォートのところと、この部分は保証しますというところに分けたり、ソフトウェアやエッジの機器を使ってフルに制御したりできるようにしています。ここに向けたセンサーなどの開発をしていこうということになっています。
―― 家族がサポートするというのは新しいと思いましたが、これは今後、どのように拡大していくのでしょうか。
石田氏 今回のものに関しても、他キャリアに展開することができます。P2Pの機能や画面シェアの機能、IP電話の機能もトーンモバイルで作ったものです。出し先としてはキャリアもありますが、この後、キャリア以外でもいくつかの提携が控えています。高齢化が進む中で、シニアに対応したものはもっと多く出てこなければなりません。ただ、アプリのサポートになると、1件あたり1000円、2000円という話になってしまう。そういうところに市場があります。
―― キャリア以外だと、例えばどういうところですか。
石田氏 アプリに組み込みたいというところがあります。例えば、マイナンバーで認証するようなものや、金融系のアプリだと、アプリを行ったり来たりしなければなりませんが、そういったところは(サポートが増えるので)狙い目だと思っています。トーンでやってきて、ソフトバンクに入ったのは大きな実績になると思っています。
―― なるほど。ターゲットを変えるといったことはありそうでしょうか。操作が分からないので家族に聞くというのは、シニア以外にもニーズはありそうで、有料オプションとして普通のスマホに入っていてもいいなと思いました。
石田氏 そこはぜひ書いてください(笑)。
ちなみに、今のバージョンでは、画面共有した際に個人情報はしっかりマスクするようになっています。IDなどが表示される際に、共有相手にそれが見えないようになっています。今は対面でQRコードを使って認証をしていますが、最初に提案したときにはマイナンバーカードで遠隔でできるような提案もしていました。
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