実際にThreads上で報告された被害事例から、詐欺の流れを具体的に見ていきましょう。
「祖父が育てたぶどうが大豊作になったので、中間業者を通さず直接販売することにした。1箱6房2500円」という投稿を見たユーザーがDMを送ると、相手から「ご注文ページを送る」と返信が来ます。そこで送られてくるのが、運送会社「佐川急便」を装った偽サイトのURLであり、住所や電話番号を入力するよう促されるのです。
偽サイトでの入力を終えると、「実名認証が完了していません。資金は凍結されています」などと言われ、今度はLINEへと誘導されます。LINE上では「実名認証を完了すれば凍結が解除される」という口実で、氏名、電話番号、生年月日、銀行名といった詳細な情報を尋ねられます。
このケースで確認できたのは個人情報を聞き出される段階までですが、報道によれば、この後さらに運送会社を名乗る者から、トラブル対応名目で電話やメールを通じた入金要求があり、金銭をだまし取られるとのことです。被害額は最高で約265万円に上るといいます。
金銭を狙う別の手口として、不自然な発送方法を指定する投稿も見られました。例えば「発送は佐川急便の代引きのみ」とする鍋の譲渡投稿です。
代金引換(代引き)は、荷物を受け取る際に配送業者へその場で代金を支払う仕組みですが、これを悪用すれば、中身を確認する前に代金だけを支払わせたり、説明とは全く異なるガラクタを送りつけたりすることが可能になります。
なお、佐川急便は2026年6月、公式サイトの「お知らせ」で、同社を装った不審なLINEアカウントから外部の不正サイトへ誘導される事案が確認されているとして、注意を呼び掛けています。本物のLINE公式アカウントには認証バッジが付いており、認証のないアカウントは同社とは一切関係がないと明記されています。
ここまで紹介した事例を整理すると、Threads上で発生している詐欺の多くは、「同情を誘う投稿で信頼を得る」「DMやLINEなど閉じた空間へ移動させる」「段階的に金銭や個人情報を引き出す」という、巧妙な三段階の構造を持っていることが分かります。
こうした手法は、5月頃から「ニセ農家」詐欺として認知され始めましたが、今では獲物を狙うためのさまざまな「入り口」が用意されています。筆者も調査のためにいくつか連絡を取ってみましたが、返信はありませんでした。あまりに膨大な数の投稿をばらまいているため、詐欺グループ側も対応が追い付いていないのかもしれません。
では、こうした詐欺の被害に遭わないためには、どのような点に気を付けるべきでしょうか。具体的なポイントを挙げます。
まず、投稿元のアカウントをよく確認することが不可欠です。フォロワーがほとんどいない、過去の投稿が存在しない、あるいは同じ投稿ばかりを繰り返している、作られたばかりに見えるアカウントには十分な警戒が必要です。
次に、企業や運送会社などを名乗るリンクが送られてきた際は、URLをよく確認する習慣をつけましょう。本物のドメインと似せていても、わずかなつづりの違いが含まれていることがよくあります。
前述の佐川急便の偽サイトもデザインは精巧でしたが、企業情報などが記載されている箇所を確認すると、不自然で偽物らしい表示になっていました。少しでも違和感を覚えたら、送られたリンクは踏まず、検索エンジン経由で公式サイトや公式アプリから直接アクセスし直すことをおすすめします。
そして何よりも重要なのは、氏名や電話番号、生年月日、銀行口座といった重要な個人情報を、「無料でもらえるから」「システム上の認証のためだから」といった理由をつけられても、決して安易に教えないことです。特に、やりとりの途中でLINEなどの外部アプリへ誘導された場合は、いったん冷静に立ち止まり、本当に信頼できる相手なのかを再確認してください。
少しでも怪しいと感じたときは、決して一人で判断せず、家族や友人に相談しましょう。万が一、実際に被害に遭ってしまった場合や、詐欺の疑いが極めて強い投稿を見つけた場合は、迷わず最寄りの警察署や消費生活センターへ相談してください。
Threadsに限らず、SNS上で見かける「無料であげます」「困っているので助けてほしい」という投稿は、多くの場合、純粋な善意によるものです。しかし、その善意の裏側に巧妙な詐欺が紛れ込んでいる可能性があるという事実を、私たち一人一人が知っておくことこそが、被害を防ぐための重要な第一歩となります。
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