日本の航空・宇宙開発の歴史を紹介する「空と宇宙展−飛べ!100年の夢」が10月26日、国立科学博物館でスタートする。日本初のジェットエンジンの実物、宇宙ヨット実証機「IKAROS」の巨大な帆、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルなどを一堂に集めた会場には、大空と宇宙に魅せられ、そこに挑んだ研究者・技術者たちの「100年の夢」が詰まっている。
日本初の動力飛行から今年12月で100周年を迎えるのを記念した企画展。はやぶさの地球帰還に合わせて開催できるよう、3年前から企画を練ってきた。「はやぶさなどの技術はいきなり始まったわけじゃない。100年前からの積み重ねとバトンタッチがあってここまで来ている。歴史を感じてほしい」と、同展を監修した同博物館の鈴木一義さんは話す。
展示ブースへの入り口を抜けると、まずは航空技術の歴史を紹介するゾーン。日本初の動力飛行は、ライト兄弟の初飛行から7年後の1910年(明治43年)12月19日、現在の東京の代々木練兵場(現在の代々木公園)で、徳川好敏大尉の操縦による「アンリ・ファルマン複葉機」と、日野熊蔵大尉操縦の「ハンス・グラーデ単葉機」が成功させた。展示では両機のプロペラの実物と、当時の写真を彩色したものを展示している。写真は初公開。戦前、科学博物館に陸軍の航空室があったことから保管されていたという。
第2次世界大戦末期に開発され、日本で初めて、世界でも5番目に実用化されたジェットエンジン「ネ-20」とその設計図も見ることができる。戦時中の航空機の図面は「焼却処分されているケースが多い」ため、ネ-20の設計図が残っていることは「価値がある」(鈴木さん)という。
日本の宇宙開発の歴史を学べる展示も盛りだくさん。“日本ロケット開発の父”と呼ばれる糸川英夫博士が1955年に水平発射実験で使ったペンシルロケットは同博物館の所蔵品。宇宙航空研究開発機構(JAXA)にはなく、ペンシルロケット開発のために誕生したJAXA宇宙科学研究所の阪本成一教授が「今すぐJAXAに持って帰りたいくらい」というほどの貴重品だ。
現在宇宙を飛んでいる金星探査機「あかつき」や準天頂衛星「みちびき」の模型、IKAROSの帆のバックアップモデルも。14メートルもある帆は展開した状態で壁際に吊り下げられており、大迫力。JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)で公開されたことがあるが、博物館での展示は初めてだ。
はやぶさコーナーも力を入れている。はやぶさ本体の実物大模型や、小惑星イトカワに投下したターゲットマーカーの模型、はやぶさに搭載していた探査ロボット「ミネルバ」のバックアップモデルのほか、JAXAのスタッフが記したはやぶさの運用日誌などを公開。赤字で「(はやぶさが)行方不明になる」などと書き込まれた生々しい記録から、はやぶさの長い旅とスタッフの苦労と情熱に思いをはせるのも楽しい。
2月6日までは、はやぶさのカプセルも展示する予定。はやぶさのプラモデルやクッキー、Tシャツも発売する。プラモデルは32分の1スケールで、イトカワを模した台座には、打ち上げ40周年を迎えた日本初の人工衛星「おおすみ」と、はやぶさが目指した小惑星の名前の由来にもなった糸川博士のフィギュアが飾られた限定キットだ。価格は3150円。
空と宇宙展は2月6日まで。開場時間は午前9時〜午後5時(金曜日は午後8時まで)。入場料は、一般の当日券が1300円、小中高生が500円。
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