米Microsoftは11月17日(現地時間)、ニューヨーク州で開催されたイベントにおいて、従来の「Office Communications」ソフトウェアスイートの新ブランドとなる「Lync 2010」を正式に発表した。Lyncはエンタープライズテレフォニー、インスタントメッセージング(IM)、ビデオ/オーディオカンファレンシングのためのソフトウェアプラットフォームを企業ユーザーに提供する。また、Windows Live Messengerや同社の新しいハンズフリー型ゲームコントローラー「Kinect」とのインタフェースも備える。Kinectへの対応の背景には、コンシューマー市場への訴求という狙いもあるようだ。
米調査会社Forresterの推測によると、2015年までにユニファイドコミュニケーション(UC)市場全体の規模は145億ドルになる見込みだ。企業市場への進出拡大を狙うMicrosoftなどの大手IT企業にとって、これは魅力的なターゲットだ。LyncはMicrosoft Office、SharePoint、Exchangeといったソフトウェアプラットフォームとも連係する。このため、例えば、複数のユーザーが共同でPowerPointドキュメントに入力しながら電話会議を行うといったことも可能だ。
MicrosoftのLync関連サイトでは、12月1日から同ソフトウェアの無償試用版が提供される。米AppleのiPhone、フィンランドのNokiaの携帯電話およびWindows Phone 7搭載端末用のモバイルクライアントは年内にリリースの見込みだ。ただしMicrosoftでは、カナダのResearch In Motion(RIM)のBlackBerryなどの端末用のクライアントについては明言を避けている。
「Lyncは当社のコミュニケーション戦略の要となるものだ」――Microsoftのインフォメーションワーカー製品管理グループのクリス・カポセラ上級副社長は、同イベントの基調講演でそう語った。
さらにカポセラ氏はLyncの基本機能を紹介するために、同ソフトウェアのダッシュボードを使ったビデオ会議のデモで、シアトルのオフィスにいるMicrosoftのビル・ゲイツ元CEOと会話するという派手な演出も行った。
ビデオ会議に登場したゲイツ氏は、5年ないし6年前からMicrosoftのUCプラットフォームを同氏自身が推進してきたと述べた。「PBXは単独でしか機能しない」と、企業で従来使われてきた電話交換機の限界を指摘した。ソフトウェア開発という観点では「こういった孤立性は、利用可能なプラットフォームではないことを意味する」
ソフトウェア駆動型のUCプラットフォームの登場は、「オフィスワーカーにとってPCの出現以来、最も重要な出来事だ」とゲイツ氏は付け加えた。「これからは、映画などで誰かのデスクの上に独立した電話機があるのを見ると、“あっ、昔のタイプだ”と思うようになるだろう」
そのほかにもLyncには、連絡先リストから複数の人々を選択して会議通話を行う機能、音声通話を始める前にネットワーク接続をテストする機能、同一のクライアントエクスペリエンス内でIM、動画、ドキュメントコラボレーションを切り替える機能などがある。Exchangeなどのサービスと連係する機能により、ユーザーが会議などで席から離れていればLyncはユーザーのステータスを自動的に更新する。
LyncはWindows Live MessengerおよびKinectとのインタフェースも備えるため、ジェスチャーによってビデオ会議を起動するといったことも可能だ。
「人々の仕事のやり方が劇的に変化し、家庭生活と仕事生活の融合が極度に進んだ」とカポセラ氏は記者会見後のeWEEKの取材で語った。「Lyncの敷居をぐっと低くして、Lyncを利用するユーザーが、このソフトウェアを使っていない友人や家族とも接続できるようにしようと考えた」
とはいえMicrosoftでは、企業がレガシーPBXシステムに大きな投資をしてきたことも認識している。カポセラ氏は、企業がLyncに移行する可能性について「これは一夜にして起きることではない」と述べた。「しかし、もしあなた方あるいはわたしが今日から小さな企業をスタートするのであれば、従来型の電話システムに投資することは絶対にないだろう」
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