ATMの普及や人口減少で銀行の窓口が減っている。特に地方銀行は地方経済の衰退による収益性の低迷も重なって店舗の維持が難しく、業務効率化や人員の削減を強いられている状況だ。多くの金融機関が支店の数を減らす中、「地域の利便性のために残したい」という強い思いから、店舗の存続をかけて新たな取り組みにトライしている金融機関もある。
そのうちの一つが、山口県下関市に本社を置く山口フィナンシャルグループ(以下、YMFG)だ。傘下に地方銀行の山口銀行、北九州銀行、第二地方銀行のもみじ銀行があり、山口県、広島県、福岡県を中心としてグループ全体の銀行支店数は全国に280店舗に上る。
YMFGはその方針を実現するため、それぞれの支店で利益率を高めるための業務効率化を図ってきた。ところが、その結果として別の課題が生まれてしまったという。それは店舗の「余剰スペース」だ。
「機器が小型化し、人員も減り、業務エリアが減ったことで、空いているスペースが生まれました。とはいえ、そのスペースの分も土地代はかかっています。何かに有効活用しなければ、業務効率化で利益率を高めても無駄になってしまうのです」──YMFGの栗原智史さん(経営管理部 秘書室 副調査役)は、そう説明する。
銀行窓口にスペインバル!? 支店の余剰スペースを有効活用
そこでYMFG傘下の山口銀行が仕掛けたのが、もともと観光地として有名な山口県長門市にある油谷支店の店内に、ワインやパエリアを提供するスペインバルを併設したことだ。地元企業とタッグを組み、地域の魅力をアピールしながら地産地消を通じた地域活性化を目指している。
今後も店舗の空きスペースを活用してカフェや保育施設、観光施設などを併設するなど、余剰スペースの有効活用を検討していくという。
その仕掛け人でもある栗原さんが、次に目を付けたのはブイキューブが提供しているスマートワークブース「テレキューブ」だった。
まずはテレキューブを体験してほしい
テレキューブは電話ボックスのような形をした完全防音型のワークスペースだ。1人用(ソロ)と2人用(グループ1型)、4人用(グループ2型)が用意されており、周囲を気にすることなく、ちょっとした少人数ミーティングやWeb会議などを行える。購入するだけでなく、サブスクリプションでも導入可能だ。
山口銀行では山口県下関市にある本店の1階ロビーにテレキューブを設置し、まずは予約制の応接室として活用していく予定だ。
「これまで1階には予約されていないお客さま向けの簡易応接室しかありませんでした。予約されたお客さまは2階に上がっていただく必要があったのですが、テレキューブは防音制に優れ、中にいても圧迫感が少ないことから、今後は予約されたお客さまを1階のテレキューブにご案内できればと考えています」(栗原さん)
1階ロビーにテレキューブを設置したのは、他の意図もあるという。それは「支店を変革していきたい」というトップの思いを周知することだった。
目に触れる場所にテレキューブのような目立つ存在を置くことで、新しい施策に銀行が積極的に取り組んでいることを社内外にアピールし、テレキューブをどのように活用できるかという発想をみんなで膨らませてほしいと考えているという。
「目に付く場所にテレキューブを設置することで人の興味を引き、体験していただけます。外から見るのと実際に中に入るのとでは、印象がかなり変わります。換気されているからか、見た目以上に快適です。新しいものに触れていただくことで、何かしら発想のお役に立てるのではないかと思うのです」(栗原さん)
ふらっと立ち寄れる銀行をテレワークスポットに
昨今、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響もあり、一日おきの出勤とテレワークを併用しているという栗原さんらは、テレビ会議を使った働き方が一気に広まってきていると感じているという。
「テレビ会議をするスペースさえあれば、スマートフォンだけでどこでも仕事が行えます。とはいえ、カフェなど公共の場所で機密情報を扱ったり、電話口で話したりすることはできません。テレキューブのようなソリューションが街の至る所にあれば、テレワークももっとしやすくなるのではないでしょうか」(栗原さん)
そんな状況から「現行法では難しいが、将来、規制が緩和されたら今後ますます増える店舗の余剰スペースにテレキューブを設置して貸し出す、という事業も行っていきたいです」と栗原さん。オンラインバンキングの普及やキャッシュレス化の波もあり、銀行に足を運ぶ人は少なくなったが、相談場所として窓口は重要な役割を今でも担っている。来店した人がさらなるメリットを得られるような、テレキューブの活用方法を模索していきたいとYMFGでは考えている。
ATMが銀行に置かれ始めた当時は、利用客が抵抗感を示してなかなか使いたがらなかった。しかし、今ではどうだろうか。YMFGのような積極的な取り組みによって、テレキューブのようなスマートワークブースも当たり前のように使われる日がやってくるはずだ。
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