多くの企業が会議室不足に悩まされている。従業員が増える度にオフィスを移転して部屋の数も増やすが、またしばらくすると会議室の争奪戦が始まる──こんな流れに身に覚えがある人も少なくないはずだ。
渋谷駅と隣接する複合商業施設「渋谷ヒカリエ」のオフィスエリアに入居するディー・エヌ・エー(以下、DeNA)も会議室不足に悩んでいた1社だ。単にパーティションで区切ったミーティングスペースではなく、天井まで間仕切りされた防音性に優れる会議室の増設が困難な中、今は解決の糸口をつかんでいるという。どのように対処したのか、同社の中澤洋輔さん(ヒューマンリソース本部 人事総務部総務グループ)に話を聞いた。
8年前に想定していなかった会議室の使い方
DeNAは、スマートフォン向けゲームの開発・運営や、遺伝子検査サービスをはじめとするヘルスケア事業、小説投稿サイト「エブリスタ」やマンガアプリ「マンガボックス」といったエンターテインメント事業などを手掛けるIT企業だ。他にもプロ野球の球団やバスケットボールクラブの運営など、多岐にわたる分野で事業を展開。2019年3月時点での従業員数はグループ全体で約2400人に上る。
中澤さんは総務グループの中で、社員の声に耳を傾けながらオフィス環境を改善していくファシリティマネジメントの業務を行っている。DeNAが渋谷ヒカリエに入居してから8年、設備の経年劣化や老朽化を見越して、計画的な補修を検討したり、社員の声を拾って都度改善したりする業務が中心だ。
その中で社員から慢性的に挙がっていたのが「会議室不足」だった。
「今、この取材を受けている21階が来客専用フロアです。もちろん別のフロアにも会議室があり、合わせて80〜90部屋ほどになりますが、全然足りていません。来客との打ち合わせにも、社内会議にも、足りていないのです」(中澤さん)
約90部屋と聞くと多いように感じるが、従業員のニーズは満たせていないという。中澤さんはその理由を次のように挙げる。
「1on1ミーティング」の増加
DeNAでは、2018年ごろから人事・人材育成の観点で「1on1ミーティング制度」を設けた。従業員一人一人と上長が週に1回の頻度で行っている。人事評価のため四半期ごとにも実施するため、繁忙期になると来客用の会議室を解放して使うほどだ。
「(1on1ミーティングの実施を)入居当時には想定していませんでした。社員数を考えれば、会議室が不足してしまうのは火を見るより明らかです」(中澤さん)
1on1ミーティングは、従業員それぞれに「何をやりたいか」「将来はどうなっていきたいか」といったキャリアの話をしたり、部署異動を伴うような相談をしたりする。執務室の中や簡易的なパーティションで区切られたオープンスペースでは話しにくいことも多い。よって空室の大人数向け会議室が使われることもあり、8人部屋を2人で利用しているといった無駄の多い状況も増えていたという。
最近はWeb会議のために1人で大部屋が使われることもある。外部の人との定例会議となると、会議室を定例予定として長期間確保されてしまうこともあり、「実際は使われていないのにシステム上は埋まっている」ということもしばしば。これら複数の要因が重なって、会社全体で会議室不足という課題が生まれていた。
会議室の増設はコストや時間がハードルに
このような会議室不足の状況をパーティションの設置で対処している企業は多い。しかし、中澤さんは「中途半端な高さのパーティションでは声が漏れてしまうので、従業員のニーズを満たせません。密室を作れるパーティションが必要なのです」と話す。
しかし、「会議室が足りない」という悩みを抱える企業の多くが直面している課題として、天井まで壁で区切った会議室の設置は現状難しい現実もある。
「通常の賃貸物件では、天井まで壁を作れるパーティションの設置許可を得るのに、空調やスプリンクラーの設置など消防法に抵触していないかを確認する必要があります」と中澤さん。賃貸物件ではビルオーナーの許可を得て工事を行うことのハードルは高い。時間とコストがかかってしまい、柔軟な会議室の設置は現実的ではない。
時間をかけずに、2人で会話するのにちょうどよい密室を作りたい――そこで目にとまったのが、ブイキューブが提供しているスマートワークブース「テレキューブ」だった。
執務室内でも音漏れなし
中澤さんの入社当時から、不足しがちだったという会社の会議室。普段から総務系の展示会などで情報収集していたこともあり、電話ボックスのような形をしたブースがあることは知っていたという。しかし、当時見つけたのは海外製で、値段が高価であることや日本の消防法をクリアしていない点で導入は難しいと考えていた。
国内での条件に合うテレキューブを見つけてからは、すぐ検討に入ったという。求めた要件は、1on1に適した広さと機密性の高い防音性能だった。
「(実際に体験してみて)予想以上に防音がしっかりしていると感じました。外から見るとコンパクトなため、内部は圧迫感があるのではとも思ったのですが、中に入るとそれなりのスペースが確保されている。想像よりも好印象でした」(中澤さん)
もし防音性能が低かった場合は、大きな会議室にテレキューブを複数台設置するつもりだったというが、実物を見て問題なく執務室内のデッドスペースに設置できることを実感できたという。
「1on1ミーティングは30分という制限の中で行われます。声が周りに聞こえてしまうかも、という懸念の中では思うように話せません。実際に2人用のテレキューブ『グループ1型』を3基設置したところ、予想通り稼働率が高くなっています。社員のニーズにがっちりハマるものと出会えたと感じています」(中澤さん)
動かせない天井までのパーティション、動かせるテレキューブ
テレキューブを導入してから実施した社内のアンケート調査を見て、中澤さんは「評価はおおむね良好」と分析している。「個室でちょうどいいスペース」「執務室から近い」「密閉性が高く音漏れしないので使いたい」といった声が寄せられているという。
「テレキューブは通常の会議室と同じシステムで予約できるようにしています。『1on1のために数を追加してほしい』『Web会議で使いたいから1人用も導入してほしい』といった期待の声も続々と届いており、導入して良かったと感じています」(中澤さん)
さらにテレキューブはキャスターが付いていることから、ニーズにあわせて「フロア内を動かせる」という点もメリットに感じていると中澤さん。
「移動の可否は選定基準の中に入れていませんでしたが、テレキューブはフロア内であれば動かせます。天井まで壁を作るパーティションではできないことです。今後、フリーアドレス化などが進んでくると、執務室に余剰スペースが生まれ、外に置いていたテレキューブを移動できるかもしれません。そう考えると、動かせるテレキューブで良かったなと思うのです」(中澤さん)
新型コロナウイルスの影響で、ビジネスパーソンの働き方に大きな変化が生まれている。事態が収束に向かった後も、オフィスの在り方を含めた“仕事場”について、再検討する企業は多いだろう。オフィス内の需要の変化に対応しやすいテレキューブは、スムーズな事業運営の強力な味方になりそうだ。
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